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17話 空の次は海

「ブランフォードで間違いないな?」

「そうだが」


 俺は貴族連中に呼び出されていた。

 理由はもちろん先日の風の螺旋突破の件についてだ。


「先日の功績者はお前だと聞いている。見事だった」

「それはどうも」

「しかしだな」


 何か言いたいことがあるらしい。

 そうでなければこうやって呼び出さないとは思っていたが。


「本題を話してくれ」

「貴様の父親の借金については知っているな?」

「もちろん」

「風の螺旋攻略の報酬はそちらに回されることになった」

「ならば父上の解放をしてくれるということだろうか?」


 俺はそう問いかけたが。


「そうだな。解放はしよう」


 答えたのは俺の兄であるアイムだった。

 俺の兄は親父に見切りをつけて家を出て行った。

 そして今はこの通り偉い位置にいるそうだ。


「だが、飛空船を何隻か動かしたな?お前」

「それがどうかしたのか?」

「ギルドには、国が投資しているのも知っているな?お前は言わば国の金を使った、というふうにも取れるのだ」

「借金をしたっていいたいのか?」

「そうだ」


 無慈悲に告げられたその一言。


「計算は当時の時価で行う。飛空船の数は少なくない。そこに燃料として使った風の魔石もかなりの数に登る。そして当時の魔石の価格だがかなり高騰していた。その借金………お前の父親が借りた額と同等と考えろ」

「横暴過ぎるだろ。俺のおかげ、とは言わないが風の螺旋を踏破したお陰で」

「黙れ。わきまえろ」


 兄のアイムがそう告げると俺の首の前で2本の槍が交差した。


「決定には従ってもらう。そうだよな?ギルバート卿?」

「うむ。心苦しいがSランクの魔法剣士が床の味を知り逆にFランクの風水士が踏破した、と知れ渡るのはまずいのだ」

「我が身は可愛いってわけか」

「そうだ。悪いが君の活躍などなかった。君の功績は全てアリス君に譲ってもらう。その代わり父上………カイザの解放をしよう」

「これは頼んでいる訳では無い。命令だカイム」


 ギルバートとアイムがそう告げてくる。


「貴様もこのリーディルカ王国で生きていたいのなら従った方が懸命だぞ?」

「………分かったよ」

「ふん。分かればいいのだ分かれば」

「まぁ、そう言わなくてもいいでは無いかアイム卿」

「ギルバート卿は甘いのだ。こやつは大罪を犯したカイザの息子。到底許されたものでは無い」


 色々話しているがもう付き合う義務もないだろう。

 俺はさっさと外に出ることにした。



「横暴っすね!横暴っすよ!抗議っす!」

「落ち着けニーナ」


 今までの顛末を話したらニーナが暴れ始めた。


「私のカイムが借金だなんて許せないんすけど」

「それは同感だがここは抑えた方が懸命だよニーナ」


 アリスも宥めてくれている。


「それより、私の手柄になったようですまなかったな」

「別に、気にするなよ」


 そう言っておく。


「そう言って貰えると助かるよ」

「でも、凄かったよねカイムのあの作戦」

「そうですよ!あんな作戦私は思いつきもしませんでした!」


 流れを帰るようにアナとマリーがこの前の作戦のことについて話し始めた。

 

「おっ、カイムさんか。頑張ってくれよ」

「カイムさんこの村を救ってくれて感謝してるよ」


 村人が俺たちに挨拶をして通り過ぎていく。


「変わったな。俺たちへの反応も」

「そうっすよね。初めはあれだけ煙たがられていたのに」


 俺はアリスの顔を見た。


「今の俺にはこれだけで十分だよ。身近な人が俺の活躍を知ってくれている。それだけでいい」

「欲のない奴だなカイムは」


 クスッと笑うアリス。


「そう言えばナナはどこ行った?」

「ここですよカイム様ー」


 俺が声に出した瞬間少し遠くから奴隷だった少女のナナが現れた。

 彼女はあの遺書を残して俺の作戦に1番耳を傾けてくれていた少女だ。


「おかえりなさいカイム様」

「ただいま」


 そう答えて俺は頭を撫でてやった。そうすると微笑むナナ。


「えへへ」

「ナナは本当にカイムが好きなんだね」


 遅れてやってきたウィンドゥ。

 彼はどうやら俺ともう少しいるつもりらしい。

 と、丁度いいな。全員集まったようだ。


「みんなに、話があるんだ」

「話?」


 アリスが反応を示す。


「あぁ。借金が増えた件については話したな」

「ほんとひどい話だな。カイムがどうにかしなければこの村………いや世界が滅んでいてもおかしくなかったほどなのに」

「あの、僕が悪いみたいな目で見ないで欲しいんだけどな」


 ウィンドゥがバツの悪そうな顔をしている。


「いえ、ウィンドゥ様のせいだと思います」


 アナにも鋭くそう言われていた。


「とほほ………というのは冗談ですまなかったな。カイム」

「気にするな、と言った」

「す、すまない」

「謝るなってカイムは言ったよね?」


 マリーにもそう返されている。


「わ、分かったよ」


 今度こそウィンドゥがそう言って場は少し笑いに包まれた。

 それを見てアリスと話を続けることにする。


「それで前回の作戦で使用した海水だが転移結晶を海に沈めたのは覚えてるな?」

「指示を受けて私が鎮めたからな」

「どうやらあの1件で海の神が怒ったらしくてな。知ってるな?広い大洋の上に存在する最難関ダンジョンの1つ【水剣の渦】」

「知ってる。風の螺旋と違って辿り着く事すら命懸けになるダンジョンだな」

「そうだ。実はと言うとそこのダンジョンを攻略するようにとも言われてな」

「大変だな」

「そうだ。大変なんだよ」


 そこでみんなの顔を見た。


「ということで俺はこの村を暫く離れるつもりだ。そこで、とりあえずアナ、ニーナ、マリーには同行して欲しいと思ってる。それで、だがウィンドゥとナナだけどこの村で俺の指示通りに動いて欲しい」

「はい。もちろん聞きますよ指示と言いますと?」


「飛空船の製造だ。飛空船はまだ世界で見ても需要のある乗り物なのは分かるな?それをこの村で作って欲しい。風に詳しいウィンドゥもいるし燃料にもなる風の魔石が取れるダンジョンから近いからな。それに他の奴隷達もそれだと真っ当な仕事が貰えるだろ?」

「分かりました。お任せ下さい!」

「と、まぁ話はこれで終わりだし解散にしとこうか。アナ達は俺についてきてくれ」


 予想以上に短い休みになってしまったな。

 空に登って言ったと思えば次は海の中、か。

 本当にハードだ。

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