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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
3章
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3-8.宰相ヘンネベル公爵

前回あらすじ:竜騎士、思ったより弱かったです

 試合場を出ると誰もいない、このまま帰っていいのか。

 何か言われるかと思ってたんだけど、まあ何も無いほうがありがたい。

 と思っていたら、男爵が走ってきた。


「ヨガ殿、お待ち下さい」


 俺の前まで来ると、肩で息をしている。


「も、申し訳ありません。

 このままヨガ殿にお礼もせず帰したとなれば『竜騎士』など関係なく我が国の恥。

 今夜は当屋敷へお泊りねがえないだろうか」


「そのようなこと気にしていただかなくとも、大丈夫です。

 男爵様には申し訳ないのですが、貴族のお屋敷というのは遠慮したいのです」


「貴族といいましても私は男爵、下っ端としていいように使われている者。

 それに、たしかキュー殿も男爵家のお生まれでは、ならばそれほど硬くお考えにならなくともよいかと」


「アルテミラルでは、男爵は全員元冒険者なので、貴族というよりそちらに近いのです。

 フレンメルス男爵様は、料理を手で食べるなど、なさらないと思います。

 父はたまにしますよ、お腹が空いて我慢できない時など」


 男爵がびっくりしている、俺も見たことない。


「リーシェさんがお客様としていましたから。

 父も兄も女性には良い格好をしようとします」


「私はしたことがありませんが、必要であれば手を洗う物を用意させます」


「いや、私はしません。

 リーシェさんも、多分キューさんもしないよね。

 それとも俺がいない時はしてるの」


「しないわ」


 キューさんの蹴りが足に入る、地味に痛い。


「ヨガ、キューさん、フレンメルス男爵様がお困りですよ。

 俺たちに断る理由もないので、ご招待を受けて見ませんか?」


「ぜひ」


 以前『ダメなのは兵士だけ』とも聞いてたし、男爵には悪い印象を持っていない。

 それにこれも、『色んな経験』になるか。


「では、お世話になります。

 よろしくお願いします」


「ありがとうございます」


 男爵に案内され屋敷へ行くと


「同じ男爵で、なにこの差。

 うちの10倍は大きいし、100倍は立派!」


 とのキューさんの感想、悪いが俺もそう思う。


 家宰から男女別の部屋を用意するので少し待ってほしいと言われたが。

 リーシェさんが

「私達は冒険者ですので、野宿の場合は一緒に寝ています。

 お気になさらないで下さい、1部屋貸していただければ十分です。

 毛布もあるので、それで寝れますので」


「こんなふうな女性扱いは久しぶりだけど、今さらと言う感じかな」

 キューさんもそれで良いと、女性陣がいいなら俺に言うことはない。


「お二人はヨガ殿の恋人なのでしょうか」

 家宰はとんでもないことを言ってくる。

 俺は首を振って否定した。


「冒険者は、みんなこんな感じなんです。

 恋人や伴侶が冒険者なら同じパーティに入るのが普通ですが、街に恋人がいる人もいますので。

 恋人でもない男女が同じ場所に寝るなど、信じられないことだとは思いませんが」


 キューさんが家宰に言い訳している、この辺りの事はリーシェさんは理解していない。

 リーシェさんは冒険者向けの宿にいたから、この辺の常識が俺と違っていた。

 なし崩し的に今のパーティでの関係になっているが、まだ俺には違和感がある。


「問題が起きないのですか?」


「自分の命に関わりますので、変なことはしません。

 まったくないわけでもないですが、そんな奴の最後はたいてい良くない話で終わります。

 それとヨガ、そんなに強く否定しない」


 リーシェさんが言ったせいか、すぐに部屋に案内してもらえた。

 寝具はある、大きなベッドが2つ。

 リーシェさんとキューさんが一緒に入ってもまだ余裕がある大きさだ。


 夕食の前に風呂を進められ、着替えの服は貴族風。

 多分これでも地味なのを選んでもらえたと思う。


 2人はドレス。

 キューさんは満更でもない顔をしてたが、リーシェさんは俺が吹いてしまったので機嫌が悪い。

 子供服が用意されていたのだ、大人の対応で我慢して着ている。

 拗ねている子供のようだ、リーシェさん可愛い。


 そんな事をしている間に屋敷が騒がしくなっている、どうしたのかと聞くと。

「お騒がせし申し訳ございません。

 急にお客様がもう1名増えると言われまして、今慌てて準備させていただいております」


「もう1名増える。

 どなたがおいでになるんですか?」


「申し訳ありません、私どもには知らされておりません。

 ただ、男爵様が先頭になって指示しておりますので、相応の身分のお方ではないかと思います」


 そう教えてくれ自分の仕事に戻っていった、本当に忙しいようだ。

 また直前まで教えてもらいないのかと思っていたら、男爵が来た。


「お招きしておきながら、お相手もせず申し訳ない」


 男爵は少し疲れている。


 急にお客様がおいでになられるとの事、男爵様はその準備でお忙しいと聞いております。

 我々は気にしないで下さい。

 ところで、誰がおいでになるか教えていただくことは可能ですか」


「もちろんです、ヘンネベル公爵様は、皆さんにお会いしたいと我が屋敷においでになるのですから。

 夕食にお出になるとの事です」


「公爵様が、何で俺達に会いに」


「色々思うことはありますが、公爵様のお考えを勝手に推測はできませんので、ここでは申し上げられません。

 公爵様より話されると思います」


 何だろう?

 リーシェさんとキューさんを見たが、2人とも何で公爵様がという顔をしている。


「そう不安がらずともよいかと。

 私の勝手な思いですが、悪いことでは無いと思います」


 俺達が疑問に思っていると安心するよう声をかけてくださった。

 でも勝手な推測を口にできないのでは。


「それとヘンネベル公爵はこの国の宰相でもあります。

 多少堅苦しくなるのはお許しいただきたい」


 男爵は重要な事をあっさり言って出ていく。

 宰相!もうなるようになれだ。


 時間になり豪華な食堂に案内されたが、全員席には座らず入り口の前に2列になり公爵を待つ。

 すぐに公爵が入ってきた。

 公爵が食堂に入ると、俺達は膝を付き頭を下げる。


「フレンメルス卿、直答を許す面を上げよ。


 みなさんも普通にしていただきたい。

 私はみなさんが招待された場に参加させてもらっただけです、主役はみなさんですので」


 顔を上げて見ると闘技場で審判をしていた人だ、公爵様だったのか。

 そして、予想外に腰が低い。


「ヨガ殿を勝手に呼びつけて意味のない試合をさせ、それなのに労わずにただ帰したと聞いた。

 そこまで恥知らずとは。


 行き先を探したら、男爵の屋敷へ行ったとのこと」


「は!

 私もヨガ殿がそのまま外へ出てゆくのを不思議に思い、尋ねたところ『何が?』と言われてしまいまして。

 それではカリギュナー王国が非礼をしたことになってしまいます。

 王国に忠誠を尽くしている者として、微力なれど何かできることと思いまして」


 だから気にしなくて良いですって。


「フレンメルス卿、ご苦労」


「公爵様。

 ありがたき幸せでございます」


 男爵は感動して礼までしている。

「何故」とキューさんにそっと聞いてみると「ご苦労は貴族社会で身分の高い人からの最大限の褒め言葉になる」との事。


「もてなすのはフレンメルス卿に任せ、私からはこれをヨガ殿にお渡しする」


 側にいた人が俺の所まで来てテーブルに大きな袋を置いた。

 多分金貨が入っていると思う、運んだ人は両手で持っていたのだからかなりの重さだ。


「本日の『御前試合』ご苦労であった」


「ありがとうございます」


 ご苦労が褒め言葉らしいのでお礼を言った。


「それと、実は私が急にここに来たのは、王命があったためだ」


 王命と聞いて男爵が固まった、無論俺達も。


「ヨガ殿、これは我が王よりの報奨である。

 王は良いものを見せてもらったとお慶びで、褒美を命じた」


 先程と同じ程度の袋がまた俺の前に並べられた。


「今日の試合をお慶びで?」


「いや、正しくは最後に投げたあの剣だ。

 あの場にいた誰も、ヨガ殿が投げた剣に気づいていなかった」


 グダグダ言われる前に終わそうと思って投げたからな。


「誰も気付けなかったということは、誰も避ける事が出来なかったということだ」


「俺が人に向けたかもと」

 王に投げる事も可能だった、それを考えての訪問か?


「いやヨガ殿は、そんな事はしない。

 ただ誰かの胸に刺さってもおかしくないと、想像するのは見ていた者の自由であろう。

 褒美はその自由に対してと思ってくれ」


 王は、誰の胸に俺の剣が突き刺さるのを、想像したのだろう。

 なんとなくわかってきたが、勝手な推測は止めておこう。


「ヨガ殿は『竜騎士長』よりお強いようだ。

『竜騎士』を恐れる必要もない、立ち会いなど無視して国を出て行こうと思わなかったのか」


「『御前試合』と聞いてしまいましたので、出ないと非礼になると思いまして。

 それに他国に行っても『竜騎士』が来そうですし、面倒な事は1回で済ませたかったのです」


「いや彼らは、国外へ出ることはないな。

 78年前、隣国の旧ジュア王国へ攻め入った時に懲りている」


「懲りているとは、どういうことなのですか」


 公爵は一度俺を見直した、一瞬聞いてはまずい事を聞いてしまったのかと思ったが、公爵は続ける。


「ジュア王国の貴族の嘆願を元に隣国の王を弾劾。

 国王の制止を振り切り、自分たち27名の『竜騎士』だけで隣国へ向かった」


「嘆願ですか」


「嘆願という形をした嫌味だったのだが、それを『竜騎士』たちは理解できなかった。

 税が重いという領民の苦しみを救って欲しいとの内容だが、嘆願した貴族の本意は、何故税が重いのか考えてみろというものだった。

 原因は『竜騎士』の魔物討伐の方法にあったのだからな。


 上空からドラゴンでの魔物討伐では、全ての魔物は駆逐できない。

 倒されなかった魔物はどうするのか、隣国へ逃げる。

 ジュア王国は増える魔物に対応するため兵士を増やしていたが、その金はどこから出ているのかと」


「まさかそれがジュア侵攻の理由だったのですか。

 噂ではジュア王国貴族の反乱に『竜騎士』が加勢したと言われていますが」


 キューさんはジュアの隣国の貴族出身、この辺は俺より詳しい。


「嘆願してきた貴族に罪をなすりつけた。


 戦いでは『竜騎士』は補給のない敵国で孤立し、自分たちだけで大丈夫だと豪語していたが、9名が死んだ。

 残った『竜騎士』も無傷ではない。

 結果、ジュアの王家を滅ぼしたところで逃げ帰ってきた」


「王家を失ったジュアは、復興時に残った貴族と商人との間で対立が起きたと聞いております。

 貴族にはその権力を与えていた王家を失っていたし、『竜騎士』の支援が反乱貴族のせいと噂があったので、国民からの支持も得られなかった。

 経済力と知恵があった商人たちが権力抗争に勝ち、今のジュア・ニフス国ができたと聞いています」


「そうだ。

『竜騎士』は王家を滅ぼした後、ジュアには興味がないと責任もとらず引き上げた。

 商人達は貴族を切って彼らの本意を封印し『竜騎士』に恩を売った、以後の不要な干渉を防ぐために。


 それが今のジュア・ニフスに王も貴族もいない理由だ」


 そして、あの効率のみを考えた魔物駆除の方法にも繋がるのか。

 魔物がこの国から流れ込む事を前提に、とことん金がかからない方法をとっている。


「もともと我が国は、以前行ったドラゴンの集めかたが強引だったため他国からの評判が悪い。

 そしてジュア・ニフスの件だ。

 これでは、魔王と対峙する時、我らを信じて共に戦ってくれる国はない。

 最も古き国なのになんと情けないことか、これでは戦う前に国が滅んでしまう」


 公爵は俺達を見ずに話した。

 それにこんな話を聞かされても、俺には大きすぎる問題、大変だなと思うだけだ。


「ところでヨガ殿、私が宰相と聞いているかね」


「はい、フレンメルス男爵様より教えていただいております」


「若いとは思わなかったかな」


 確かに若い40前ではないだろうか、国の大きさに釣り合わないかも。


「この国では、宰相が理解できない理由で、処罰されることが続いている。

 私の父も兄も任期の6年を待たず処刑されている」


 そんなに宰相を処刑するなど、国王は何を考えているんだ。


「処刑と言っても『竜騎士』に切られたのだが、一応理由については聞かされたが覚えていない。

 彼らは先々代の国王を、意に従わなかったため、適当な理由をつけ退位させている」


 驚いている俺達に


「この200年ほどで国内にあった対抗勢力は一掃されている」


 話の内容も驚くが、何故そんな話を一介の冒険者に話す。

 このままでは面倒な事に巻き込まれそうだが、席を立つわけにはいかない、やばい。



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