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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
3章
34/104

3-2.西へ海でも見に行きますか

前回あらすじ:ヨガ君ド○テ○ではありませんでした。


「復讐したくないなら、逃げますか。

 ヨガ行きたいところある?」


 リーシェさんもビチュレイリワと同じことを言う。


「いろんな体験をするなら、世界を旅するのも楽しいかも」


[では、暗黒大陸へ行きませんか?]


 ビチュレイリワが割り込んできてとんでもないことを言う。


「それは無理だろう、行く方法がない。

 行けたとしても、2人だけで行くところじゃない」


[2人では無理なことは理解しています、近くまで調べに行って欲しいのです。


 実は4年前、暗黒大陸と呼ばれている島から船がこの大陸へ来たことを確認しています。

 近くになら、あの島へ行く方法を知っている人がいるかもしれません。

 当時は高い所からの観察しかできなかったので、詳細はわからないんです]


「ピノと話してた?

 何が無理なの」


「暗黒大陸の近くまで行けってさ」


「それは無理ね」


「海岸からは見えないだろうけど、西の海岸まで行ってみるか。

 そう言えばあの辺は亜人の国だったな」


 ミツルの目をここに向けさせないため、早く出発したほうがいいだろう。

 行き先はどこでもいい。


 朝食の時に、ここを出ることをトゥールさん達に言うと。


「なぜ、亜人の国へ」


「2人とも、海を見た事がなかったので見てみたいと思って。

 それに、いろんな国へ行ってみたいですし」


「そんなに、急がなくてもいいだろう。

 せめて俺が男爵になるまでいろよ」


「待つと何かあるの」


「俺の晴れ姿が見れる」


 タード卿とキューさんが頭を抱えた。

 トゥールさんの言動、最近なんかひどくなってないか。


「トゥールさんの晴れ姿は叙勲式で見たよ。

 あれ以上のことはないでしょう?」


 無いらしい、トゥールさん黙ってしまった。

 俺たちが騒いでいる間に、家宰がタード卿に近づいて耳打ちをしている。

 何かあったらしい。


「申し訳ない、客がきた。

 こんな時間に失礼なことだが、カリギュナー王国の伝令だ。

 待たせる訳にもいかないので、会ってくる。

 トゥール、お前も俺の後ろで話を聞いてろ」


 と言って席を立った。


 カリギュナー王国と言えば竜騎士の国だったよな。

 西へ行く途中にある寄ってみるか、話のネタに竜騎士を見たい。


 ダート卿達はすぐに戻ってきたが、2人とも機嫌が悪くなっている。


「伝令はヨガにだった。

 今屋敷にいないと言って、手紙だけ受け取って帰ってもらった。

 それで、よかっただろう」

 と言いながら、トゥールさん俺に封筒を渡してくれる。


「自分の国民でもないヨガに召喚だとさ。

 全く何を考えているのか」


「来なければ、捕らえにくると言いおった。

 犯罪者でもあるまいし、そんな無茶が通るものか。

 それともドラゴンに乗っていると、頭がおかしくなるのか」


「カリギュナー王国ってそんな国なんですか」


 俺が考えていたより、厄介な国らしい。


「竜騎士で有名な国だが、逆にそれ以外は何もない。

 ドラゴンを独占し、その力で他の国を見下ろした、いけ好かない国だ」


「あまりいい噂は有りませんね。

 先の魔王大戦でも、雌雄が決まったあとに参戦して国力を残したと言われていますし。

 ドラゴンに関しても、その時に裏で工作して独占したと噂されています」


 他国の伯爵夫人が知ってる話しなら、かなり有名なのだろう。

 俺は竜騎士しか知らなかった。


「無視することはできないんですね」


「そうだな、バカなだけに何をするかわからんからな。

 迷惑な話しだ。


 だが、竜騎士達は魔王軍に対抗するには必要な力だ、失う訳にもいかん。

 竜騎士と他国が戦争にでもなれば、それだけでも魔王軍への助力になってしまう」


 だからこそ増長したのだろうが、聞いただけでもあんまり関わりたくないな。


「仕方がない、さっさと済ませて海に行きます」


 明日準備をして、2日後に出発することにした。


 ーーーーー


 寝室に戻るとリーシェさんも一緒に俺の部屋に入ってきた。

 リーシェさん思いつめた顔をしている。


 俺の前に座ると


「アトロフごめん、昨日は辛いこと思い出させてしまった」


 ピノさんの事か、普段は思い出さないようにしているので思い出すとまだ痛い。

 顔に出ていたのか、リーシェさんに気を使わせてしまった。


「いいよ、大丈夫だから」


 そう言ってもリーシェさんは俺の顔を見つめている。

 しばらくして立ち上がると、俺の頭を抱きしめた。


「私じゃ代わりにならないかも知れないけど」


 そんなことはないよリーシェさん、俺は救われている。


「ヨガ、邪魔するよ」


 ドアを叩きもしないでいきなりキューさんが入ってくる。

 アトロフに抱きついた、リーシェさんより激しく。


「あ、本当に邪魔しちゃった!

 ごめん」


 戻ろうとするのを


「今更、遅い!」


 リーシェさんが怒鳴る。

 怒ってる?


「ごめん、謝る。

 まさか、リーシェさんが勝負に出てるとは思わなかった」


「何の用?」


 リーシェさん俺の頭を抱えたままだ、離して下さい。


「そうだった。

 アニキのやつ、あのババアに熱上げやがってデレデレだよ。

 いつまでいてもいいだと、旦那なくしたばっかりの後家になに言ってるのかね。

 もう見てられない、いずれ自分の嫁にするつもりだぞ、あれは」


 すごい違和感がある。

 リーシェさんから離れて、この口調の出元を見る。


「あんなババアが好みだったのかよ、昔言ってたのと全然違うじゃないか!

 こっちは、頑張ってたのによ」


 やっぱりキューさんだ。


「ジル様にババアは辞めて」


 リーシェさん注意するけど、あんまり驚いてない。


「じゃ年増女!」


「ジル様は、トゥールさんより若いわよ」


「リーシェさん、あのキューさんはどうしたの?」


 もう聞くしかない。


「どうしたって?

 そうか、ヨガはキューさんに合う時いつもトゥールさんが一緒だったから知らないのか。

 あれがキューさん、トゥールさんの前では猫かぶってる。

 お兄さんにはバレてるけどね、ヨガだけ知らなかったのかな、ダート男爵様も知ってたと思うわよ。

 今はさすがにちょっと激しいけど」


「えーー!」


[関係者ではヨガだけが知りませんでした]

<女性をもっと見るようにしましょう、ヨガ>


「清楚な女性がいいと言ったから頑張ってたのに、ジルさん全然ちがうじゃないか。

 もういい、あんなの見続けなきゃならないなんて無理、私もリーシェさん達と一緒に行く。

 あの精霊の入った水、飲むから頂戴」


 相変わらず俺には女性がわかりません。

 呆けている俺の頭をリーシェさんが、ポンポンと撫でる。


 ーーーーー


 翌日は朝から騒ぎになる。


「世界中を旅するだと、そんな危険なことダメに決まっているじゃないか」


「遠征へ一緒に行ったお兄様がそれを言いますか、魔境の奥の方がよっぽど危険でしたが」


「男と一緒に旅をするなど許せるはずがなかろう」


「お父様それは冒険者になる前に言って下さい。

 私は、いままで多くの男の人と夜をともにしています」


 キューさん言い方、それは遠征での野宿の時の話しでしょう。


「それに私は既にヨガのものです」


「なに!」


 殺気を感じて反射的に避ける、俺が座っていた椅子をダート男爵が切断していた。

 トゥールさんは剣に手をかけている。


 キリスさんはオロオロして、リーシェさんはただ見ている。

 ジル姉さんにいたっては、お腹を抱えて笑っている。


<ヨガ、これはなんなんでしょう?>


(知るか!)


「お父様、お腹の子を父なし子にするおつもりですか」


 キューさん、お腹をなでながら何を言ってます。

 全員の動きが止まった。


「キューさんやり過ぎ」


 よかった、リーシェさんは真に受けていない。


「トゥールさん思い出して下さい、ヨガがそんなことをして隠せると思いますか。

 タード男爵様も落ちつて下さい、キューさんの冗談ですから」


「冗談?」


 男爵はキューさんを見る。

 キューさんはお腹をなでながら

「まだ、いないわ」


「まだ!」


「「キューさん」」

 俺とリーシェさん同時に声が上がる、これ以上の暴走は止めなければ。


 でもキューさん、リーシェさんを指差し

「勝負」


「キューさん切り替えるのが早すぎ!」


 もう何を言っているのか意味わかんない。


 姉さんは笑いすぎて、立っていられなくなっているし。


 笑いでの涙を拭きながら

「エルフェースを出てから、こんなに笑ったのは初めてです。

 皆さんありがとうございます」


「いや、まあ、なんだ」

 姉さんが冷静に礼を言ったためか、男爵様も自分のした事に気づいたようで、恥ずかしそうにしていた。


 後は家族で話し合ってくれ。

 キューさん昨夜のうちにピノを飲んでいるので、ビチュレイリワの頼みはそれですんでいる。

 今朝の騒ぎは、キューさんがわざと起こしたのだ。


 その後、旅の準備を始めたが、すでに疲れてる。

 王都に行って来たばかりなので、準備と言っても中身を確認して再度まとめるだけだ。


 後は保存食を用意するだけですむ。

 保存の効くパンは、今屋敷で焼いていただいている。


 干し肉も欲しいが、お屋敷には余分な分はなかった。

 作っている所があると言うので、買いに行く。

 近くなので歩いて行こうとすると、姉さんがついてきた。


 1人で持てなくなるほど買うつもりはない、姉さんはただついて来ただけだ。


 帰りに、いきなり

「ありがとう」


「何がです」


「生きててくれて」


 足が止まる。


「最初に変だと気づいたのはリーシェちゃん。

 ヨガとの関係がおかしいと思ったの。


 昨日の夜、話してくれたアトロフへの思いは本物だと思った。

 それなのに、ヨガに対してのやましさを全く感じられない。


 昔の男の話しをあれだけしたら、普通は後を引くと思うんだけど。

 リーシェちゃん女修行がまだまだよね」


「リーシェさん、ジルさんより年上ですよ」


「女性の年齢は口にしない」


 昔の姉さんに戻っている。


「夕食は私のために豪華にしていただいたのだけれど、男爵家の方々はああゆうのは苦手なようでした。

 でもヨガはしっかり作法に従って食べていたんです、気づいていましたか。

 魚の骨をあんなに綺麗に残したら、育ちが良いのはすぐにわかる。

 それに、ワインを左で持つテーブルマナーは、この国のものでは無いのよ」


(ピノ気づいてた)


<確かに皆さん、利き腕でグラスを持っていましたね。

 でも何がマナーでどれが癖なのか、知らなければ見分けるのは無理だと思います>


 以前の飾り文字にしても、食事の作法にしても、俺は無意識でしてるからな。


「それに、その結び方。

 1つの端を引っ張れば、すぐ解けるように結ぶのは、弟の癖だった」


 干し肉をまとめるために結んだ紐を指差している。


「この結び方は教えられて覚えたものです、他にもする人はいると思いますが」


「でも3つ重なって、後は女の感よ、今確信した。


 夫が死んで、ただ逃げてここまできた、私はもうどうなってもよかった。

 でも、あなたが生きていてくれた、どんな姿になっていたとしても。

 少し希望を持ってもいいかなと思えるようになったの。

 だから、ありがとう」


「今朝殺されそうになったけど」


 また、笑ってくれた。

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