2-22.遠征 3
前回あらすじ:遠征、魔境の真ん中までこれました
「ヨガの言った通り、これはどう見ても風呂だな」
調査隊リーダーはフェンメットさんだ。
俺が前に来た浴場を見ての感想だ。
「ここに人が住んでたのはまちがいないか。
まずはこの層を調べようと思う、魔物はいないんだよな」
「この層を含めて、浅い場所にはいないですね。
街の中央のもっと深い所で何かしてます」
「 何をやっているのかがわかればいいんだが。
時間がない、急いで調べるぞ。
人の街なら罠もないだろうが、一応気をつけるよ」
全員が軍馬に乗って走る。
周りを調べながらなので早くはない。
近づくとやはり大きなドアのみが開く。
何箇所か入って見たが、ほとんどは使い方がわからない。
そんな中でも使い方が想像できたものがある。
「飯屋、あるいは酒場かな」
テーブルとイスが並んでいる。
「この大きいドア、風呂とか飯屋とかみんなが使う場所なのでは。
そして小さいドアは、個人の部屋ではないでしょうか。
俺たちの宿も風呂、食堂は誰でも入れて、それぞれの部屋には鍵をかけれますよね」
「なるほどな、その考えは合ってそうだ。
大きいドアは、共有の場所か」
「共有の場所は固まって配置されている傾向があります。
ラーディでは見ない作りですね」
「いや、大きな街なら飯屋や店は、数箇所にかたまってあるぞ。
その方が便利だからな」
数店見比べれば、自分の欲しいものが見つかるだろう。
無くても数店見れば諦めもつく。
古い街だが、人の行動は変わっていない。
調査隊の面々は、勝手に想像して口にしている。
調査と言っても見るだけしかできない。
「あと下に行く階段はないですね。
上に行くのも、街門に出るものだけ。
ここまで、広い街ならあっていいと思いますけど」
本当はあった。
階段ではなく、上下に移動する小部屋をビチュレイリワが教えてくれた。
残念ながら動かす仕組みがわからなかったので、みんなには言わないでいた。
中央付近は、ほぼ共有で使用する施設のようだ。
街の真ん中には、丸く広い空間が広がっていた。
天井も丸く皿を反転したような形をしている。
その真中に穴があり、空が見える。
ここは何だろう。
その作りからギルドの訓練場を思い浮かべた。
「散らばって調べろ、この下に魔物がいる。
降りていく場所があるはずだ」
フェンメットさん、まだ魔物討伐を考えていたのか。
みんなが広がったその瞬間。
「なに!」
思わず声が出た。
ワイバーンが地下に湧いた、しかも4体当時に。
「どうした」
「突然ワイバーンが4匹、この下で生まれたんです」
「巣でもあったのか」
「違います。
生きた卵はわかります、そこには何もなかった。
突然、湧き出てきたんです」
「なんだ、それは」
「わかりません。
待ってください、動きがあります。
上がって来ています。
近くにいた、とんでもないのと一緒にきます」
「ワイバーン4匹でも、とんでもねえ。
急いで逃げるぞ」
「無理です、間に合いません、すぐ来ます。
近くに隠れて」
そいつらが上までくると壁が開く、これもドアだったのか。
開いた奥には4匹のワイバーンが並んでいる、どれだけ大きなドアかわかるだろう。
ワイバーンは人に比べて10倍ほど大きい。
そして人の3倍ほどの魔物が1匹。
獣の足が2本、角のある草食獣の顔、人の上半身に腕が4本、そして翼がある。
右手、左手には1本ずつ杖を持っている。
見たこともない魔物、マナ総量は桁違いだ。
「サァ、ワイバーンドモ、外へ行ケ。
コノ世界ヲ暴力ト殺戮デ満タセ」
その魔物の叫びにワイバーンが応える。
ガーーァー。
バァーーーー。
グーー。
「ソウカ、ソウカ、生マレタバカリデ腹ガ減ッテイルカ。
近クノ奴ヲ襲へ。
コノ街ノ近クニハイナイガ、オ前達ナラヒトット飛ビダ」
何を言っているか聞き取りにくい、言葉を出す喉ではないのだろう。
だが、その声にワイバーンたちは翼を広げ飛び出そうとしている。
天井の穴から外に出る気だ。
こんなのに襲われるから、山に魔物が近寄って来なかったのか。
本体が危ない、広い場所でワイバーン4匹に襲われたら、被害が大きい。
飛び上がったワイバーンが、天井の穴から出ようとした時、壁にぶち当たる。
一緒に来ていた神官が壁で穴を塞いだのだ。
フェンメットさんと目が合う。
これで隠れている意味がなくなった、殺るしかない。
「キュー、ワイバーンを落とせ。
神官達も抑えつけろ、他は攻撃、突っ込むぞ」
フェンメットさんの指示で、全員が攻撃態勢に入る。
もう1匹の魔物に動きがない。
まずは、キューさんが落とした4匹のワイバーンを倒すため走りだした。
「アイス・アロー」
最初に落ちてきた1匹の右の翼を凍らせる。
すぐに溶けるが、その間に誰かがとどめを刺すだろう。
俺は近くに落ちてきた奴に駆け寄る。
軍馬から、飛び降りる反動をそのまま使い、首を切る。
ワイバーンは硬いが、この剣で切れないものはない。
俺が凍らせたのをトゥールさんが突撃で仕留め、もう1匹をフェンメットさん達が取り囲んでいる。
まだ生きているが、先に翼を切り裂いている、もうここから飛び立つことはできない。
もう1匹に手間取っている、翼を傷つけてはいるがあれでは足りない。
炎を吐かれ近くに寄れないでいる。
「アイス・アロー」
俺の矢は、ワイバーンに当たる前に吹き飛ばされた。
あの魔物が邪魔をしたのだ。
「楽シイゾ、楽シイゾ。
人ョ、モット楽シマセテクレ。
200年同ジことヲ繰リ返シ、飽キ飽キシテイタ」
「お前は何だ、ここで何をしていたんだ」
フェンメットさんは期待しないで聞いた。
体制を整えるための時間稼ぎだ。
「我ハ、魔王軍ケフロチュウイ。
見テノトオリ、人ニ災イヲバラマイテイタ」
答えている、こいつは馬鹿か。
違うな、俺たちを全滅させる自信があるのだ。
あのワイバーンが災いなら、何をしていたかは想像できる。
どうやったか知らないが、あの4匹のワイバーンはいきなり生まれでてきた。
この下で魔物を作っている。
他の魔物もここで生み出していると思っていい、いくら倒しても魔物が減らないはずだ。
バアァァーーーー!
生き残っていたワイバーンが叫びを上げて飛び上がる。
同時にケフロチュウイがキューさんの前に飛んだ。
早い!
「邪魔ハサセナイ」
右手の1つで、キューさんを掴もうとする。
「ファイヤー・アロー」
魔物は空いている左手を広げ、俺のファイヤー・アローを受ける。
小さな爆発が起きたが、それだけだ。
ワイバーンが外に出てしまった。
(ピノ!)
<リーシェさんに連絡済。
ビチュレイリワも狙っています、心配はいらない。
あいつに集中して>
ケフロチュウイは、キューさんを掴もうとする。
させるか!
数人で一斉に攻撃を仕掛ける。
ケフロチュウイは、左の杖を上げると、強烈な光と共に爆風が起きる。
膨大なマナを使っての無茶苦茶な攻撃だ。
その風に耐えれなかった者は、吹き飛ばされた。
耐えれた者も、目が見えない。
だが認識能力のある俺には関係ない。
「ファイヤー・アロー」
やはり手の平でかわされる。
空いた手で、キューさんを掴むと立ち上がり、また左の杖を上げる。
今度は真っ暗になり、マナを持っていかれる。
気持ちを強く持っていないと、気絶しそうになる。
「今後は特別製だ。
サンダー・シャベリン」
俺は右手を高く上げ、その上に雷の槍を作る。
「面白イゾ」
「余裕だな。
後で泣くなよ」
右手を振り下ろし、槍をケフロチュウイに投げつける。
顔に当たる瞬間、槍は握り止められてしまった。
ケフロチュウイが笑う。
笑ったその顔が跳ね上がる。
見えない矢が顔を直撃した、俺はどこにでも矢を生み出せる。
槍は手を封じるために、投げたのだ。
「キャー」
キューさんの救出に成功した。
「キューさん離れろ」
「オノレ、人間」
今度は左の杖を上げた。
なにか来るか身構えると、今度は杖から多数の光の線が放たれた。
目標は俺だけじゃない、まわりじゅうだ。
幸い死んだ人はいない、俺も交わし切れず3本の光を受けてしまった。
<少しの間、動けません>
ピノが治療を始め、すぐに血が止まる。
呼吸数回分は動けない。
「楽ニハ死ナセンゾ。
ワハハハハハ」
その笑い声は続かなかった。
近づいていた、トゥールさんが突撃をかける。
俺の攻撃で奴の目が潰れていて、死角になっていたのが幸いした。
ランスがケフロチュウイの胸に、深く突き刺さっている。
トゥールさんは逃げ切れずに捕まっている。
「許サン」
ケフロチュウイはトゥールさんを引き寄せ、まがまがしいマナを吐き出している。
<剣を魔物に向けて下さい>
腕は動く、剣を奴に向けると細長く伸び、ケフロチュウイの額を貫いた。
その攻撃で戦はいきなり終わった。
俺の剣が魔石を貫いている、声も上げずにケフロチュウイは倒れた。
剣は無理をさせたので、液体に戻る。
<もう、動いて大丈夫です>
投げ出されたトゥールさんに駆け寄る、意識がない。
「お兄様」
キューさんも来た。
他に動ける人はいない。
トゥールさんに外傷はない、ただマナがおかしい。
「呪われている!
死んでしまう、しっかりして下さい、しっかり、お兄様」
キューさんがヒステリックに叫びだす。
トゥールさんのマナが魔物のものと混じっている、これが呪いか。
「キューさん落ち着いて下さい」
キューさんが叫んでいても、何も変わらない。
「トゥールさんを助けるにはどうすればいいの」
「呪いを浄化しないと。
高等な神聖魔法、私にはできない」
「なら倒れてる他の神官を治癒して、できるか聞いて。
彼等はキューさんより、治癒系の神聖魔法は得意なはず」
言い終わる前に、キューさんが走ってゆく。
慌てて忘れているが俺もマナを変えれる、ただしかなり強引にだ。
今のトゥールさんのマナを俺の方法で変えると、良くて記憶を飛ばして別人に、悪ければ廃人になってしまう。
(ピノ、トゥールさんの痛み抑えられない)
<神経系を遮断して強制的に眠らせれば可能ですが>
(頼む!)
腰に下げた水筒を取り出す、中にはピノの仲間が入っている。
[彼にナノマシンのインストールはできませんよ]
(なぜ。
トゥールさんから許可貰えばいいんだろう)
まだ意識がある、返事くらいはできるはずだ。
[リーシェさんの時に使った法は、同性の所有を考えられていません。
その時、現地に合わせ暫定で作成されたものですから]
キューさんが戻って来た。
「誰も浄化ができない」
トゥールさんにすがりついて泣き始めた。
「お兄様、お兄様」
「な泣くなキュー」
「お兄様」
「トゥールさん、気がついた」
「何も見えない、夜なのか」
「死なないでお兄様」
「泣くなって言ってるだろう。
家はお前に任せる、あのバカ弟は戻らないだろうからな。
頼むぞ」
「いや、お兄様行かないで」
「何処にも行かない、ずっとお前のそばにいる。
俺はお前の物だ、ずっと一緒さ」
またトゥールさんの意識が切れた。
(ビチュレイリワ!)
[条件がそろいました。
キューさんを、ヨガのものにして下さい]
2人目ゲット!
一応キーワードに「ハーレム?」を入れているので、女性は増える予定です
?は付いてましすが




