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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
2章
29/104

2-20.遠征 1

前回あらすじ:

4つ星ランクになりました

 3班、目を狙って視界を奪ってください。

 2班は、右に回って攻撃」


 3班はキューさんみたいな殴る神官や、精霊使いなど魔法を使える者が。

 2班には長距離攻撃が得意な者が選ばれている。

 3班にはキューさん、2班にはリーシェさんがいる。


 魔境に入って11日目、もう奥地と言っていい。


 目の前には大きなトカゲ、その大きな2つの足で素早く走る。

 攻撃は噛みつきだけだが、大きい頭のほとんどが口だ、鋭い牙が並んでいる。

 木々をなぎ倒し走る、そして近づいて噛みつく単調な攻撃だが威力はでかい。

 乗っている軍馬の方が小回りがきく、捕まる者はいない。


 右からリーシェさん達が矢を射るが、トカゲは硬い、矢は刺さっているがダメージを受けたようには見えない。

 キューさん達が目くらましのため目を狙っているので、まわりは良く見えていないはずだ。

 右側から攻撃を受けているので、反撃しようと顔を向ける。


 その瞬間

「1班、突撃」

 トゥールさんの号令で4騎の軍馬がトカゲに突っ込んで行く、手にはランスが構えてある。


 先頭はトゥールさんだ、彼もこの遠征に参加している。

 俺たちが4つ星になれたのはギルドの特別な配慮があったからだ、すぐに辞めるとは言いにくかった。

 その数日後に遠征が宣言された。

 トゥールさんいわく『逃げ遅れた』。


 遠征に準備が足りていないのは明らかだった。

 今回の遠征は宣言後すぐには行わない、半年間十分な準備をする、そのため早く宣言を行ったのだ。

 半年の間に色々なケースを想定しての演習を重ね、クラン内での連携の制度を上げていた。

 装備も今までにないほど充実している。


 今回採用されたランスを持っての突撃は、もともと騎士の戦法だ。

 1人での純粋な攻撃力は圧倒的に高い。

 冒険者は行わない攻撃法だが、クランには冒険者になる前は騎士だった者がいる。

 突撃した4人もそうだ。

 準備期間中に提案され採用された、クランならではの戦法だ。


 列になり、順番に攻撃していく。

 トゥールさんが左足を突き刺すと、トカゲは大声を上げる。

 続けて2番目も同じく左足を貫く。

 この2回の攻撃で、トカゲがよろめき頭が下がる。

 その頭へ3番目と4番目がランスを突き刺しとどめをさす。


 皆が『オー』という雄叫びがあがるが。


「右後方、56歩、オーガー2体。

 弓、打て」


 オーガー2匹は、俺たちが2足歩行のトカゲと戦っている時に奇襲しようと近づいていた。

 認識能力が捉えていたので、奴らの奇襲は失敗している、逆に先制攻撃を行う。


 目では木が邪魔でまだ見えていない。

 弓は直接狙えない、上空をめがけ俺が言った当たりに落ちるように射られている、これでは当たらない。

 ただし、リーシェさんへは俺からオーガーの正しい位置を伝えている。

 風の精霊を使い方向を変え、オーガーに当てている。

 トカゲと違って、オーガーには効いている。


「ムフさん前へ」


 ムフさんは隊の盾役で神官にして剣士、重騎士と呼ばれているスタイルだ。

 オーガーに備え前に出る。


 オーガーは攻撃されたので隠れることをやめ、全力で走り出した。

 前に重騎士がいるが奴らは気にしない、手にした棍棒を振り上げて突進してくる。


 重騎士に棍棒が届く直前で見えない壁にブチ当たり、オーガーは弾き返された。

 ムフさんは囮で、前に神聖魔法で壁を作ってもらっていた。

 オーガーは人の3倍ほどの大きさがあり魔力も力もあるが、弾かれ尻もちをついた状態では俺たちのいい的になる。

 精霊使いの攻撃を受けて弱った所を、重騎士と斧使いが首をはねる。


「近くに敵はいない、攻撃態勢を解除してくれ」


 今度は俺の声を確認してから歓声が上がる。


「ケガをした人はこちらに来て下さい、治療します。

 弓の人は使える矢を回収、1班は魔物を転送してください」


 ケガをした人はいないとわかっているが、一応声をかける。


 今回の遠征には151人が参加している。

 32人を本体、残りを3つの攻撃部隊に分けて、その1つの隊を俺が預かっている。


 今回の遠征では、パーティーでの構成はされていない、純粋に戦力として振り分けている。

 1班は騎士と戦士の近接攻撃、2班は魔法での攻撃、3班は長距離攻撃と大きく分けている。

 残りが俺の4班、治癒と遊撃を行っている。

 俺たちのパーティーはバランスが良かったので、同じ隊になれている。


「本体に連絡。

 戦闘終了、被害なし。

 周辺に敵は存在しない」


 4班に攻撃要員ではない者が1人いる。


「了解」


 俺の言葉を連絡係が復唱する。


「戦闘終了、被害なし。

 周辺に敵は存在しない」


 この声を、連絡器で本体に伝えているのだ。

 魔法ギルドは、声を転送する魔法道具を小さくする事に成功した。

 この魔法道具はトゥールさんからツェローラ子爵様へ進言されたが、なんとカナーエフ公爵様が開発の援助をしてくださったのだ。

 今までは念話をできる冒険者を連れて来ていたが、数が少ないうえにいつでも連絡できるわけではない。

 3つの攻撃部隊と本体に配備され、常にお互いの状況を伝えている。


 もう1つ今回の遠征で新しい試みが導入された。

 俺の『ロハイラの耳』が有効なのを子爵様が理解していて、他に2名の『ロハイラの耳』を持つ冒険者をスカウトしたのだ。

 1人はラーディにいた6つ星の冒険者、もう1人は3つ星で他の国から連れてきた。


 公爵様は、この遠征を国からの依頼、すなわち昇級条件の依頼にしてしまったのだ。

 なら成功時には6つ星は7つ星になれる。

 3つ星の冒険者は、ポイントが5つ星に必要分溜まったら昇級条件の依頼を受けなくても無条件に5つ星になれる。

 公爵様が冒険者ギルドと交渉したのだ。

 金で釣れない冒険者も、この報酬なら来てくれる。


「本部より連絡。

 ヨガ隊は本部に来て、フェンメット隊と交代、休息を取れとのことです」


 連絡係の男が声を出す。

 この男は、魔法ギルドから派遣されている。

 戦闘はできないが流石に選ばれた者たちで、魔物との戦闘になっても冷静に自分の仕事をしている。


「了解と返答。

 みんな本部に行くぞ」


 本部とは2千歩ほど離れているが、どこにいるかは把握している。

 攻撃部隊は常に本部から離れ露払いを行い、本体が魔物に襲われないようにしている。

 本部にも、休息も兼ねて常に1隊がいるので最悪襲われても問題はない。


 本体に合流し、子爵様に報告へ行く。


「ヨガ隊、戻りました。

 4度の戦闘、犠牲者なし」


 無論けが人は出ている。

 治癒で戦闘に復帰できる場合、犠牲者には数えない。


「まわりに危険なのはいないんだな」


 子爵様が俺の認識能力で、敵がいないか確認してきた。


「後方に1体ストーンゴーレムがいますが、こちらには向かってきておりません」


「わかった。

 しかしここまで犠牲が出ていない。

 過去の遠征ではこんな事は聞いた事がない。


 敵のいる場所がわかると言うのは、思っていた以上に有効だな。

 今後はこの方法を遠征に推奨する」


 子爵様は上機嫌だ。


「このままなら、『深淵の都市』にも行けるぞ」


 記録では魔境の中央には廃墟が有るらしい。

 過去の遠征で2回そのへりまで行っている。


 ビチュレイリワも街の跡があると言っている。

 なんでも星のかけらが落ちた後にあるらしい。

 まわりが円になった山で囲まれているので、一度登らないと行けない。

 遠征の記録とも一致している。


「もしかすると、『深淵の都市』を調査できるかもしれんな」


 そうなれば、遠征初めての快挙だ、子爵様の名前が歴史に残る。

 機嫌が良いのもわかる。


「ツェローラ子爵、先の事はその時に考えればよいかと。

 まずは、目の前のできることに集中すべきかと」


 浮かれていい場所じゃない、僭越だが言わせてもらう。


「そうだな、そんなことを気にしても仕方がない。

 ヨガ君ありがとう。

 君たちも休んでくれ」


 本体は荷馬を連れている、馬と言っても軍馬と同じように4足の馬ではない。

 8足の爬虫類だ、平べったく力が強い。

 遅い、どんなに急いでも人が追いつける速度しか出ない。

 街中で重い荷物を運ぶのに使われている。

 ラーディではあまり見ない、冒険者の生活にはあまり必要ないからだろう。


 普通は荷台を引いているが、今は背中の上に荷台が付けられている。

 運べる量は少なくなるが、魔境内で車輪は使えない。

 遠征の速度は、この荷馬に合わせている。


 昼間の休憩の時は移動を止めない、荷台の上で仮眠をとる。

 休める場所が少ないので2人1組で休むが、俺とトゥールさんでは狭い。

 リーシェさんとの組で休むことになった。

 なぜキューさんがダメで、リーシェさんならいいのかは分からない。


 リーシェさんは先に休んでいた。


「リーシェさん、ごめん少し開けて」


 少し横にずれてくれたがそれでも狭い、荷物の間の少しの空間だ。

 隙間に体を押し込む、リーシェさんと密着するのは仕方がない。


「風呂に入りてぇ」


 気が緩んで、思ったことが口から出てしまった。

 魔境に入ってからは体を拭いていない、汚れていくだけだ。


「なに、私匂うの?」


 え、そんなこと言ってないけど。

 そう言えば、どうなんだろう。


「嗅ぐな!」


 鼻を近づけてクンクンしたら、背中をつねられてしまった。

 リーシェさんの手は俺の背中に回っている、腕枕もしているので抱き合っているようなものだ。

 狭いので仕方がない。


 リーシェさんは、小さくて柔らかくてすべすべだ。

 ただ、こんな状況からなのか、そんな気は起きない。

 気持ち良く眠れる、リーシェさんもそうならいいな。


 夜は集まり夜営になる、2隊は交代で休むが昼間休んだ隊は一晩警備することになる。

 見えなくなる夜こそ、俺の認識能力が必要なのだ。

 そのせいで俺の隊は、夜の警備が多い。


 隊のみんなに、『すまない』と謝ると


「夜は起きていた方が安心できる」

「遠征で眠れるのがおかしい。

 寝れるだけでここでは天国だ」

 と気にするなと言ってくれる。


 なら、精一杯見張るとしますか。


「南西上空より、パビシダ8体。

 大きな蛾だ、毒のある鱗粉を飛ばす、近づけるな。

 まずは弓。

 もれたのは風と火を使う、精霊使いは準備してくれ」


「明かりは?」


「いらない。

 パビシダは自分で弱く光っている」


 強烈な明かりを打ち上げる魔法道具を持ってきている。

 暗い中での戦いにならないのでいいが、いらない魔物まで引き寄せてしまう。


 3000歩ほどの距離に、リンウルがいる。

 外見が大きな狼なのに、毛がなく鱗に覆われている。

 数は24なので大きな犠牲はでないだろう、だが無駄な戦いはしたくない。


 それに敵は、それだけじゃない。


「東、ニシュバルト4体、こちらに気づいている。

 手の長い大きな猿、柔らかく鞭みたいに曲がる。

 攻撃は、その手で殴るか石を投げてくる。

 攻撃のパターンが少ない、気を付けていればくらわない」


「こっちは任せろ」


 トゥールさんたちの班が前に出てきた。


「頼む。

 手の空いてる人は、1班を支援してくれ」


 結局その夜は、3回襲撃された。

 毎晩のことなので気にならなくなった。

 でも、この騒ぎの中で眠れる冒険者もすごい。


 その後も犠牲者を出さずに8日間進んで、小さな山の麓にきた。

 この山の向こうは『深淵の都市』だ。


 記録によれば、この山に入ると魔物には襲われなくなる。

 前にここまで来た遠征は、十分な休息をとり引き返している。

『深淵の都市』は登って見ただけだ。


 ここに来て子爵様は悩んでいる。

 犠牲者を出さずに来ている、このまま帰れば偉業だ。


 しかし『深淵の都市』の探索は建国初めてのことだ、本当に歴史に名が残る。

 功名心はある、ただし犠牲が出ないとは思えない。


「ここで1日休憩をとる。

 今後どうするか決めたい、隊のリーダーは集まってくれ」



散々引っ張った遠征に入ってます。

しかもそんなに長くなりません。


誤字・脱字のご指摘や、感想をいただけると嬉しいです


2020/07/24 聖戦士 → 重騎士 (聖戦士ここにいては駄目です)


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