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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
2章
28/104

2-19.3つ星最後の依頼・後編

前回あらすじ:ヨガの悪事が大きな話になってしまいました


 約束の夕方に、クランの2階にある幹部の部屋に集まった。

 俺とリーシェさん、トゥールさんとキューさんのパーティーメンバー。

 ツェローラ子爵様と剣聖キナイズさん、クランリーダーの赤の双剣フェンメットさんもいる。


 そしてなぜか、キリスさんがいる。

 トゥールさん達が連れてきてしまった。


「ロイドの名前を出したら、泣き崩れてね。

 俺たちが全部していると思ったらしい」


「罪の意識に耐えてたんだ。

 ギルドで確認した、彼女はここ最近依頼を受けていない」


 神聖魔法が使えなくなっていたのだろう。


「キリス君、君はこのクランで何をしていたのかね」


 子爵様がさとすように聞いた。


「はい。

 ヨガさん達のパーティーを探っていました」


 子爵様の顔が一瞬曇る。


「皆さんの、生まれと、行動のパターンを調べろと言われていました」


「ヨガのせいか」


 何故そうなる!


「俺とキューの生まれなんて調べる必要はない、みんな知ってる。

 リーシェさんはハバル生まれ。

 ところでヨガはどこから来た?」


「そうです、いくら調べてもヨガさんのことは何もわかりませんでした

 私に指示を出していた男も、ヨガさんの過去はわからないようでした。

 彼らはこの国以外でも調べています。

 それでもヨガさんがラーディに来る以前のことはなに1つわかりませんでした」


 当たり前だ、ラーディ以前のヨガなんて存在しないのだから。


「トゥールも知らないのか」


「ええ子爵様、こいつは秘密主義なんで。

 いい機会だ教えろよ」


 パーティー内で秘密があるのはまずいが、言いたくても言えない。


「気になるか」


「いいえ。

 ヨガさんは、私たちの知るヨガさんで問題ありません。

 ですがヨガさんが狙われているかは確認したいです」


 キューさんがうながすが、答えにつまる。

 今起きている事件の犯人は俺。

 俺の過去に原因はないが、関係はある。

 この面倒な状況は、本当のことは言えない、でも嘘で切り抜けるのは丁度いい案がない。


「ヨガは、貴族の出よね」


 いきなりリーシェさんが、俺の過去を推測する。

 俺に過去が無いのは知っているのに、どうして?


「リーシェさんどうしてそれを、教えてもらってたんですか」


「ヨガからは何も聞いていないわ」


「なら、何を根拠に言ってるんですか」


「まず文字。

 貴族の使う文字には特徴がある。

 ヨガの書く文字にはその特徴がある」


 そうなのか?


「書類に書く場合は気をつけているけど、殴り書きみたいな時はつい飾り文字を入れている。

 大蛇に思いつきでサインした時とかね」


 あの時に!


「それに、貴族絡みの話には、私が知らない単語や文化が出てくる。

 でもヨガは知っていて、3人で話しを続けていることがあるの。

 トゥールさんもキューさんも貴族だから気づかないけど、私が知らないことを知っているヨガに気づく。

 そんなことが何回かあれば確定でしょう」


 みんなの視線が俺に集まる。

 思ってもみなかった人からの追求だ。


「ケンテハルさんみたいに、家名を言いたくなかったんでしょう?」


「そうなのか?」


 子爵様が聞いてくる。


 リーシェさんに俺が貴族の生まれなのバレていたとは。

 ほぼ正解だ、話に嘘はない、俺を助けてくれたのか。

 本当のところを言って、言えないところはごまかしてくれた。


「家名は勘弁してください。

 この件に関係しないことは保証します」

 俺はもうこう言うしかない。


「私にもか」

 子爵様はリーシェさんの近くに、得体のしれない男を置いておきたくない。

 でもここは

「はい」


 子爵様は目をつぶり考え込んだ。


 しばらくして

「わかった、ヨガを信じよう」


 どう考えたのか知っておきたい。

 剣聖に襲われる、選択もありえる。


「ヨガでないとしたら、誰を狙ってんだ」


「捕まえて本人に聞けばいいじゃか。

 キリス、そいつと連絡取れないのか」


 フェンメットさんは簡単にいいますけど。


「残念ですがありません。

 向こうから一方的に指示が来るだけです」


 手先として動く者がいなくなったので、本人がやるしかない。

 慎重になっている。


「ところで、キリス君どうしてロイドの指示で動いていたのかね」


「それは・・・」


 キリスさんが言葉に詰まったので、俺が

「お決まりですよ。家族が人質に取られていた」


「どういうことだ?」


「フルーフには彼女のお母さんと弟がいます。

 お母さんが病気になり、その治療を彼らがしていたんです。

 従わなければ、殺すという脅し付きで」


「最初弟から連絡が来た時に、お金を送って医者に見せたのですが、何の病気かわかりませんでした。

 その後、何故か治療院に入ることができ、症状が良くなってきたと聞き、不思議に思いましたが安心していたのです。

 あの男が現れるまでは」

 キリスさんがやっと何かあったかを話してくれた。


「お母様のご病気も、彼らの仕業と考えたほうが良いですね。

 ヨガどうしてその話を知っているの」


「ギルドに依頼して、調べてもらったの。

 彼女に家族がいないか、今どうなっているかを」


 一緒にギルドに行った、リーシェさんが答えた。


「キリスさん、お母さんと弟さんは大丈夫よ」

 これを言いたかったのだろう。


「大丈夫って、どういうことです」


 本人は言いにくい、今度は俺がリーシェさんに代わって

「リーシェさんが、2人の保護をギルドに依頼したから。


 お母さんの病気は呪いのたぐいで、神官があっさり治した。

 2人は、今冒険者に守られてラーディに向かってる。

 偽装も完璧、そもそも奴らはそれほど2人を気にしていなかった。

 この街に来るまではバレないだろう」


「リーシェ君が依頼したと、それは無理だろう。

 話から推測すれば、領主も関わっている、街を出る許可は出ない。

 密出国のような違法行為に、冒険者ギルドは関わらないはずだが」


 子爵様の言うことはわかる、普通はそうだ。

 でもリーシェさんも以前街を出たい事情にあって、方法を色々考えていたことがある。


「悪いけど2人には一度奴隷になってもらいました。

 奴隷の出国には許可はいらない、主人の物扱いだから。

 その主人が、国の出入りが自由な冒険者の場合、違法なことは何もありません。

 ギルドは受けてくれました。

 無論、奴隷制度がないこの国に入れば2人は奴隷ではなくなります」


 フェンメットさんが笑いだした。

「リーシェよくそんなこと思いついたな」


「ありがとう、ございます」

 キリスさんがリーシェさんに深々と頭を下げる。


「でも彼奴等の目的はなんだたんだ。

 ロイドに繋ぎをとる方法がないとなると、次に何かが起こるのを待つしか無いのか。

 それは嫌だな」


 トゥールさんの意見に賛成だ、だから手は打った。


「そのロイドという男、独断で動いてたかな?」


「キューはそう思うのか。

 俺は無いと思うな、会ってはいないが、印象では小物すぎる。

 少なくても伯爵が絡んでいるのだろう、上からの指示は受けていたはずだ」


「私もそう思っていました。

 ならその連絡は、どうしていたんしょうか」


「離れた場所への連絡なら、俺がいた辺境が参考になるか。

 国境には念話ができる奴がいたな。

 王都にいる奴と連絡するため、日暮れの時に定時連絡をしていた」


 いつ誰にでも話しかけれる、念話能力者は少ない。

 普通は、2人が同時に相手を呼び出して初めて可能だ。


「あとは王都には、鳥を使ってたな。

 決まった場所へは、帰省本能の強い鳥が使える」


「国境なら、その2つしか方法が無いかもしれませんが、この街ではもう1つ方法があります。

 むしろそちらが主流ですお兄様。


 料金は高いですが、手紙を転送するサービスが使えます。

 国外からの転送は、冒険者ギルドでしか行えません。

 ヨガさんがギルドに、確かめたかった事はこのサービスが使われていないかですか」


 キューさんすごいな、俺は答えを知ってたから動けたけど。

 推測で俺が何をしたのかわかったのか。


「俺はロイドが転送サービスを使ってないか、ギルド長に聞いてみました。

 残念ながらこのサービスの情報は、一切外へは秘密です。

 国が問い合わせても、対象が犯罪者でもだそうです」


「だろうな」


 冒険者なら誰でも知っている。


「でも聞いた効果は有りました。

 今日ロイドの手配書が張り出されてましたから」


「ヨガ君、それはどういう意味だね」


「ギルドは、ロイドが街を出たが遠くへは行っていないと、判断したのです。


 推測ですが、ここ最近エルフェースから送られる手紙で、怪しいものを洗い出したのではないでしょうか。

 その怪しい手紙が、ロイドが街からいなくなった後でも受け取りが有ったとすれば、ギルドの動きは納得が行きます」


 手紙には半分と全体か書かれたマークがある、残り半分のマークを持って来て全体が同じになれば手紙は受け取れる。

 受け取り人が誰かは照会しない、不必要に揉め事に関わらないようにしている。

 小遣いを出せば、使いくらいしてくれる少年はいる、本人が街に入る必要はない。


「今日から街の近くで、ロイド探しが始まっています。

 全ての星に美味しい報酬が設定されていました、全冒険者が気にする仕組みです。

 いずれ見つかるでしょう」


 この件を専属で追う者はいないが、この街を拠点にしている冒険者全員で探しているようなものだ。


「怪しい手紙が来れば、その後も追うつもりだろうな。

 流石にこれは外には依頼できない、ギルド内の手で行うだろうな」


 フェンメットさんが言う通りだ。


 俺はロイドの居場所を知っているが、リーシェさんに近づいて欲しくないので、今回当たりを引く気はない。

 他の冒険者に期待しようと思っている。


「クランで演習でもしてみないか。

 目的は良くわからないが、このクランにあるのだろう。

 なら街の近くで、演習をすれば動いてくるかもしれない」


 今まで黙っていた剣聖が、いきなりとんでもないことを言いだした。

 リーシェさんを囮にしようと言ってきたのだ、子爵様も驚いている、


「目的がわからないのに、それは危険だ」


「噂だけでもいい、向こうを動かしたい。

 何かをするにも準備がいる、きっとキリスに連絡がくる」


 なるほど、それはいい考えだ。


 ーーーーー


 剣聖が言ったとおり、ロイドから連絡が来た。

 他に手下がいないので、キリスさんと自分で行う計画になっていた。


 トゥールさんがやってやると意気込んだが、あっさり子爵様から捕まったと連絡がきた。

 キリスさんのまわりで網を張っていたのだ。


 子爵様は

「リーシェ君の四精霊獣を狙ったものだった。

 精霊が受け継がれたものだと知って、自分たちのものにしようと企んだ」

 とかなり厳しい嘘を言う。


 伯爵はその程度では動かない、トゥールさんとキューさんも腑に落ちないようだが、子爵様に意見することはない。

 リーシェさん本人が納得しているなら良いだろう。


 帰り道でトゥールさんが

「これで終わりか、スッキリしないな」

 と愚痴を言っている、彼の性格なら自分で全部終わらせたいと思うはずだ。


「この件は、これで終わりにしよう。

 下手に首を突っ込んでもいいことはなさそうだよ」


「ヨガさんどうして」


「この国にも暗部はいるだろう」


 国のために、汚れ仕事をする組織だ。


「多分あると思う。

 詳しくは何もわからないが」


 トゥールさんに知られるようでは、暗部と言えない。


「キリスさんを連れて、子爵様の部屋に集まった時、実はドアの向こうにもう1人いた。

 この件は、フルーフ王国全体が関わっていた可能性があった。

 その1人は国から派遣されていたんじゃないかな」


「ツェローラ卿から連絡を受けて派遣された可能性があるか。

 ならヨガの言うとおりだ、ここで終わりにしよう」


 みんなには言わないが、あの距離ならそこに誰がいたかわかっている。

 知った顔だった、ケンテハルさん。

 彼が暗部の人間なら、かなり前から見張られていたことになる。

 ビチュレイリワも気づいていなかった。


 そのビチュレイリワに覗いてもらい、後日談も知っている。


 ロイドには、リーシェさんの正体は話されていなかった。

 今彼は、牢の中で死んだように生かされている。


 この計画がフルーフ王の知る話でないことは、ミツルのまわりを探ってすぐにわかった。

 なので、アルテミラル国内にいる精霊使いをさらうとは、どういうことかと非公式に抗議した。

 計画は、伯爵の子息が行い、四精霊獣の強奪が目的だった、という証拠も集められた。


 フルーフは、今アルテミラルとの関係を悪化させて良いことは何もない。

 アルテミラル王国からの抗議に驚いた王は、父上と兄を叱責、父上に隠居をミツルには謹慎を命じた。


 伯爵家は姉の夫ペサッヒ士爵が、伯爵になり継ぐことになった。


 今アトロフに戻れば、家を継げたが、そんな気には全くない。

 俺は冒険者、ヨガがいい。



策略話、一区切り(リーシェさんの安全確保)

この手の話は筆(キーボード?)が遅い、次はアクション(予定)


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