2-14.黄金の翼
前回あらすじ:
あまり良くない話が2つもありました
4人で魔法ギルドに来ている。
ただし、魔法習得目的だけ来たのではない。
来た場所もギルド横にある魔法道具の販売店のほうだ。
魔法ギルドは魔法道具の販売も行っている。
高価なので庶民では買えないが、便利な道具が揃っている。
「あの護衛も、なんで俺たちへの指名依頼なんだ。
誰でもよかったじゃないか」
トゥールさんがぼやく。
11日間の輸送の護衛を終え、ラーディに帰って来たばかりだ。
これで護衛依頼は3件目だ、クラン経由で指名されるので受けないわけにも行かない。
リーシェさんのランク上げの邪魔を露骨に行っている。
「ヨガのロハイラの耳が広まったのね。
輸送護衛には、便利だから仕方がないよ、しばらく様子を見ましょう」
違うよリーシェさん、この依頼は貴方のせいですから。
魔法ギルドへは、パーティーの装備を揃えようと来た。
ここ最近の護衛依頼で、みんなウンザリしていたのだ。
買い物でもして気分を変えようという、リーシェさんの意見にみんな賛成してここに来ている。
「この明かりの魔法道具、みんなで揃えない」
リーシェさんが手にしたのは、片手で持てる大きさの魔法道具だ。
筒状になっていて、先端部が光る。
それほど明るくはないが、夜であれば十分に使える。
「リーシェさん、明かりは個人で持ち歩かないほうがいい。
敵のいい的になってしまう。
暗いところでの戦闘は、松明を地面に投げてその明かりで対応するのが基本だよ。
明るいのが1つあればいいんじゃないか」
国境警備隊での戦闘経験があるトゥールさん、その意見は貴重だ。
「お客様、松明ほどの明るくなるものは特別注文になっています。
よろしいでしょうか?」
店員がトゥールさんの一言に反応する。
俺たちがお金を持っているのはラーディでは知られているのだ。
「そこまで必要かといわれると、今はいいかな」
パーティーにはサラマンダーを呼べる精霊使いがいるのを思い出したようだ。
魔法道具は魔石のマナを使っている。
前にビチュレイリワに頼まれて、魔石をいくつかと安い魔法道具を渡している。
調べているが、仕組を完全にはわかっていないそうだ。
ただし、魔石からマナの取り出しかたの解析は進んでいて、魔法道具がマナを取り出す方法は2つあることはわかっている。
1つは蓄積する時にはじき出されるものがあり、そのマナを利用する。
この場合は使えるマナはほんの少しだ。
もう1つの方法は、魔石をわざと崩壊させ放出されるマナを使うものだ。
一瞬にしかも大量にマナを使える。
この方法で俺のマナを補充できないかビチュレイリワに聞いてみたが、自殺の方法としてもお勧めできないと言われた。
マナを少しずつ使う魔法道具は、よく明かりをつけるものに使われている。
前の家でも使っていた、明るさはランプに劣るが魔石は半永久的に使えるので交換しないですむ。
油を補充するのに比べそこが便利だった。
「明かりは、リーシェさんの選んだやつを2つ買っておこう。
暗くなった時、火を付けるまでの間使えれば便利だ」
「私とヨガがいるからすぐ火は準備できるわよ」
リーシェさんは火の精霊・サラマンダーを使役しているし、俺はファイヤーで火を起こせる。
2人が万全であればだけど。
「だから、俺とキュー用のさ。
いつも2人が一緒ともかぎらないだろう」
トゥールさんは、必要になる場合の状況はあえて言わないで、準備しようとしている。
大きなテーブルが目に止まる、真ん中には丸い円の模様がある。
俺の視線に気づいて、店員が
「それは転送台でございます。
中央の魔法陣の中のものを転送するのです」
「転送ナイフみたいなもの」
円の大きさは転送ナイフに比べるとかなり小さい。
「はい、そうです。
転送ナイフは元々魔法ギルドで作成し、冒険者ギルドを通して販売しているものです。
こちらもその技術を使っております」
「俺たちには、使いみちがなさそうだね」
「決められた場所に送るためのものですから、ご不要かと思います。
それにこの装置は販売しておりません」
「売っていないとは?」
「はい、この装置だけではなく転送の装置は基本販売しておりません。
転送ナイフが特別なのです」
「聞いてもいいですか、何故販売しないのです?」
「物を転送するには複雑な魔法を使います、魔法ギルドの者がいないと正しく使えないからです。
魔法ギルドの者と一緒に装置を貸し出しているのです。
転送ナイフでさえ、転送先の素材解体場に魔法陣を描くため魔法ギルドから人が派遣されています。
転送されて来るとその魔法陣は使えなくなるので、新たに魔法陣を書く要員です」
その話は、ビチュレイリワから聞いていた。
各大きさの魔法陣は予備に3つくらい書いているので、問題が起きたことはないそうだが。
転送先の魔法陣が無いと魔法が発動しても転送されない。
場合によっては大きな損害になってしまう。
「この装置は冒険者ギルドや商業ギルドには必ずあるものです、それに貴族様に顧客も多くいらしゃいます」
「転送ナイフに比べて、このテーブル大きくないか」
トゥールさんは、装置の大きさに疑問があるようだ。
「転送ナイフは使いすての道具ですが、この装置は魔法使いが操作しますので何度も使えます」
転送ナイフは魔石崩壊のマナを使っている。
(ビチュレイリワ、この装置のマナはどうなっているの?)
[魔法使いのマナを使っています。
だから送れる大きさも小さいのです。
それも転送できるのは1人では1日1回が限界でしょう]
魔法ギルドからの派遣はそんな理由もあるのか。
そう言えば
「音を送れる魔法道具もあるんじゃない」
そんな装置があれば、それこそ1人1つ欲しい。
「お耳が早いですね。
最近開発されたばかりです」
「ここにあるの、見たいな」
「見た目だけのものですが、こちらに」
動くものは無いらしい。
案内されて行くと、大きな机が2つある。
「この部分で音を取り込んで転送、こちらから出てきます」
これも、大きな装置だ。
「大きいね、
もっと小さくできない」
「無理を言わないでください。
さきほどの転送装置も最近になって、やっと馬車に乗せれる大きさになったのです。
前までは現場で組み立てていました。
遠くに物を送るには、それなりの大きさになってしまいます」
「近くなら、もっと小さくできるんだ。
500歩ほどの近さでいいから、馬に乗せれる大きさにならない」
「できるかもしれませんが、馬があるなら500歩はすぐです、誰も欲しがらないかと」
「なるほど、ヨガいい考えだな」
トゥールさんが俺の考えに気づいた。
「誰もが欲しがるものではないが、確実に欲しい人はいるぞ。
俺たち冒険者だ」
「本当でございますか?」
「ツェローラ子爵様に話してみる、上手く行けば開発費を出してもらえるかもしれないぞ」
「子爵様がですか。
可能性があるか上の者に確認してみます」
魔法ギルドの者は、金の匂いに敏感で商人のようだ。
「お客様、困ります」
入り口のほうで、何か騒がしくなっている。
「代金を払わないといってないだろうが。
今手持ちがないから、屋敷に取りに来い」
金を持たずに買い物にきたのか。
この魔法ギルドで代金を踏み倒そうとしているのか、無謀だ。
俺達の相手をしてくれている店員も苦笑している。
「止めて来ます」
キューさんは神に仕えるものとして、見過ごせないのだろう。
「やめておけ、面倒ごとになる」
「でもお兄様」
「大丈夫だよな」
トゥールさんは、一応店員に確認している
「はい、大丈夫です。
皆様のお手を煩わせるほどのことではありません。
魔法ギルドの顧客には、位の高い貴族や王族もいるだろう。
さっき聞いた話からすれば、普通の関係ではあり得ない。
貴族の連絡先を知っている、人に知られたくない秘密の相手もいるはずだ。
魔法ギルドは国に守られていると考えていい。
「しかし、偉そうにしてるなあいつら」
「10日ほど前に出来たクランの方々です」
「クラン?
カンパニーではなくて」
カンパニーなら冒険者だけの集まりだ、中にはこんなのもあるだろうが、クランは貴族が仕切っている。
こんな乱暴は家名にキズが付く、有りえない。
「中央の伯爵様が、カンパニーを買い取って自分のクランにしたのです。
なんでも8つ星の冒険者を雇って、クラン・リーダーにしたと聞いています」
「話が雑だな。
聞いた話しなら、クランは遠征を目指すんだろう。
そんなクランは無理なんじゃないか」
「残念だけどヨガ、クランが全部遠征を目指しているわけじゃないんだよ」
「そうなのトゥールさん」
リーシェさんも知らなかったらしい、無論俺も知らない。
「遠征は危険だから、4つ星だけを目指しているクランもあるの。
たしか2つあったかな。
4つ星になるのを急いでいるとか、自分が死ぬ訳にはいかないなどの理由で入っている人はいる」
これは貴族としては当たり前の知識のようだ、キューさんが補足してくれた。
そうか冒険者になるのが義務でも、遠征に行くのは義務じゃない。
向かない人もいるだろう。
「でもそこのクランの人たちは、自分たちがしていることに負い目があるから、目立たないようにしているわ。
あんなことは絶対にしない」
向こうではまだ揉めている。
しかもこちらに気がついた、近づいてくる。
「こちらへどうぞ」
店員が裏口を教えてくれたので、そこから出る。
何か大きな声を出していたが、気が付かない振りをした。
「俺たちがいない間に面倒なのができていたようだね」
「クランに言って、話を聞いてみない。
嫌な予感がする」
リーシェさんの予感は、みんなにも有ったようだ。
そのままクラン『アルテミラルの盾』の拠点に行くことにした。
拠点に入って見るとケガ人がいた。
治療を受けている。
「何があった」
顔を知っている冒険者を捕まえて聞いてみる。
「おかえりトゥール。
お前達がいない間に、クランの立ち上げが有ったんだが、これが無茶苦茶でな。
特に俺たち『アルテミラルの盾』に難癖を付けてくる。
子爵様の手前、揉め事は避けようとしているんだけど、今日は喧嘩になってしまった」
「なんだ、そのクラン。
国に忠義を示すため魔境に行くって感じではないな。
4つ星目的のところでもなさそうだし、何が目的なんだ」
「わかんねえよ。
いきなり弱小カンパニーを買って、クランを名乗りやがった。
いろんな手続きすっ飛ばしてるから、冒険者ギルドでも驚いているそうだ」
「8つ星の冒険者を雇って、クランリーダーにしたって聞いたわ」
「エルフェースにいた奴らだ」
エルフェース?
(ビチュレイリワ、このクランにミツルは絡んでいないの?)
[私の調べている限りでは、関係ないですね]
(でもこのクラン怪しいよ)
[調べて見ます]
「ヨガ、帰ってたのか」
上からフェンメットさん達が下りてきた。
フェンメットさん達がこのクランのリーダーだ。
「なんかいない間に騒がしくなってますね」
「『黄金の翼』の件か」
『黄金の翼』と言うんだ。
「クランの名前は今知りました。
クラン・リーダーはフェンメットさんと同じ8つ星ですよね」
「あんな奴らと一緒にするな」
「俺も『カルンの六翼』の奴らと一緒にされたくはないな」
パーティー名も今聞いた。
「星の数は受けれる依頼のランクを示していると、聞いているだろう。
彼奴等はその星を効率よく上げて来たのさ、やり方は噂で聞いている。
フルーフ王国に強力な支援者がいたらしく、6つ星以降は順調に指名依頼で上がっている。
全然弱いぞ、ヨガ1人で彼奴等全員ぶっ倒せる」
俺ができるなら、フェンメットさんもできるのだろう。
フェンメットさんにはいまだ勝てていない。
「何を考えているのかわからない。
伯爵がクラン立ち上げている、ツェローラ子爵の立場を考えて今は手を出さないようにしている。
向こうはなんか俺たちに用があるみたいだがな。
こっちには公爵様もついている、問題がないと思うんだが。
面倒なことにならないよう、お前らも気をつけてくれよ」
リアルが少し忙しい。
更新遅れがち




