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宇宙戦艦に魔法は使えません。  作者: 野紫
2章
11/104

2-3.楽園に行こう

前回あらすじ:

トゥールさんは、ちょっと残念君でした。


 仲直りしたとこで、飲み直そうぜ。

 今度は、トゥールのおごりな」


「私は、帰るわね」

 話が終わったんで、リーシェさんは帰るみたい。


「じゃあ私も」

 キューさんも帰ると言い出す。


「えー女性陣、帰っちゃうのかよ。

 せっかく美人と可愛い子と思ってたのに」


 あ、それ禁句。


「だからですよ。

 こんな外見で酒場にいると、酔っぱらいに絡まれるんです」

 リーシェさんはうんざりしている。


「えー、そうなの」


「そうです」


「そんな事ないと思うんだけどな」


 そう言えば最近は絡まれてないな。


「だってギルド証を持っているでしょう。

 なら成人なのはすぐわかるし、下手すれば自分より強い。

 からかうやつは、ここにはいないと思うんだけどな」


 そう言われて、リーシェさんも少し考える。


「そういわれれば、この街にきてからなくなったかも」


「だろう。

 だから、その髪も伸ばしていいと思うよ。

 その耳を出すために、短くしてるんでしょう。

 私はエルフの血を引いていますって、わかるように」


 そうなんだ、短い髪が似合っているから、短くしてるんだと思っていた。

 実際似合っているし。


「ケンテハルはなんで、そんなに女性の気持ちがわかるかな」


 キューさんに言われて、ケンテハルさんは笑顔を返す。

 まんざらでもないようだ。


「気持ちが悪い」

 キューさん今の、悪口だったの!


「教えてくれて、ありがとう。

 でも、今日は帰る」


 結局、2人は帰ってしまった。

 送ろうとしたら、そんなに遅くないからいいと、断られる。



 そう言えば

「ケンテハルさんも貴族だよね」


「正確には、貴族の息子だけどね。

 この辺じゃいい加減だけど、王都だと本当に貴族しか許されていない場所には入れない」


「家名はなんていうの」


「教えない」


 なんだ、その子供みたいな意地悪は。


「ケンテハルには歳の近い兄弟がいて、いま冒険者をやっている。

 そのうちの1人が男爵家を継ぐだろう」


「俺は、このまま冒険者になろうと思っているから、家名は関係ない」


 そういうことか。


「トゥールさんには、兄か弟さんはいないの」


「歳の離れた弟がいる。

 ただし、王都で役人になる気だ、今学生をしているよ」


「冒険者にはならないの」


「らしい。

 血が苦手で最初から冒険者にはなる気がない」


 いい兄弟だな。

 つい、殺し合っていた自分の兄弟と比べてしまう。


「でもこのアルテミラル王国の男爵が、冒険者のしかも4つ星以上じゃないとなれないなんて、厳しすぎません?」


「ヨガ、どこの生まれなんだよ」


「言ってなかったっけ、フルーフですよ」


「なんだ隣か。

 なんで、知らないんだよ」


「トゥール、そんなもんだろう。

 俺たちだって、フルーフの貴族のことなんてほとんど知らない」


「それも、そうか」


「しかし、トゥール。

 ヨガ君が男で良かったな」


 いきなり何の話だ。


「ヨガが、女だったら他からのやっかみがすごかっただろうな」


「だろうな。

 あれヨガ君、何のことかわかってないようだね」


「ええ。

 なんで、妬まれるんですか」


「冒険者に女性が少ないだろう。

 男1人に複数の女性がいるパーティは、陰でハーレムパーティーと言われるのさ。

 女性2人なら、人が入れ替わっている場合はたまにいる。

 ただし男1人に女性3人なら、絶対に言われる。

 実態がどうでもな」


「そんなもんなんですかね」


「そんなもんだ。

 で、確認なんだがヨガ、男だよな」


[女性になることも可能です]


(なんねえよ)


「真顔でいきなりバカな事を聞くな。

 当たり前だ」


 すでに酔っ払ってたか。

 弱くないか。

 俺はピノがなんかしてるらしく酔わなくなっている。


 ケンテハルさんが。

「店を、変えよう」

 と言い出したので、酒場を出た。


「次は『西の楽園』に行かないか。

 無論トゥールのおごりで」


「俺が出すのか。

 自分の分は自分で出せ」


 ケンテハルさんがトゥールさんの肩に手をおきながら

「おや、タード卿、今日はおごるよね」


「だから家名を言うな。

 わかったよ、今回だけだぞ。

 いいなヨガ」


「どうも。

 ところで、『西の楽園』ってどんな店なんだ」


「そらー、楽園さ。

 大人の楽園、楽しいぞ。

 俺はあそこに行き始めたら、よそには行けなくなったな」

 ケンテハルさんは常連なのかな。


「トゥールさんも行ったことがあるの」


「何度かな。

 確かに、他とは違う」


「それは楽しみだな」

 と夜道を進んで行くと、リーシェさんとキューの2人がいた。


「あれ2人ともどうしたの」


「2人で、甘いものを食べようと思って」

 げ、酒の後に甘い物ですか。

 女性の考えることは、俺にはわかりません。


「お兄様たちはどちらに」


「店を変えて飲むのさ」


「トゥールの言うとおり。

 じゃあね」


 2人はそのまま行こうとする。


「リーシェさんとキューさんも一緒に行かない?」

 と俺が声を掛けると。


「お、おい」

 ケンテハルさんが驚いて振り向く。


「トゥールさんの、おごりだからいいじゃないか」


 トゥールさんは顔が青くなっている。

 2人の分もおごらせてやろう。

 酒場で、言われっぱなしだった仕返しだ。


「『西の楽園』という店だって。

 楽しいとこらしいので、2人も行きましょう」


 女性2人の動きが止まる。

 あれ?


「おーにーいーさーまー」

 声を上げて、近づいていく。

 近くまで行くと

「不潔」

 殴り始めた。


 リーシェさんが、腕を組んで俺を見ている。

 怒っているらしい。

 可愛い。


「ヨガもいくの」


「そうだよ、トゥールさんがおごってくれるって。

 楽しいとこなんだよね、ケンテハ・・いない」


「ヨガ、どこ行こうとしてたか知ってるの」


「だから、楽しいとこ」


 なんか怒られている?

 リーシェさんは首を振りながら


「外見は私が子供だけど、中身はヨガが一番子供ね」


 そうだよ。

 リーシェさんは、俺が16歳なの知ってるじゃないか。

 なに、その今わかったような言い方。


 おごる話はなくなり、結局そこから帰る事になった。


 ーーーーー


 2人は一緒に宿に戻り、無言のまま寝床につく。

 寝床と言っても、1部屋の真ん中を荷物で仕切ってあって、毛布にくるまるだけだ。


 そうだ。


 上半身を起こし、荷物の上に顔を出す。

 リーシェさんはもう丸くなっている。


 小声で

「リーシェさん」


 俺に気づくと

「ひぃ」

 向こう側に、飛んでいった。


 毛布を胸まで引き上げた格好で、壁に寄りかかっている。

 驚かせてしまった。


<全く、なにをやっているんですか。

 女性を、怯えさせるなんて。

 ここで騒がれると面倒になるので、彼女はしばらく声がでないようにします>


 ピノに怒られた。

 でも言っている内容は、悪党そのものだよ。


(リーシェさん聞こえてます)


(誰?

 なに、声が出ない)


(ヨガです。

 大丈夫です、怯えないで下さい)


 怯えないよう、お願いする。


(何をしているの)


(ピノに頼んで、リーシェさんと念話をしています)


(なんでそんな事をしているの)


(監視の小鳥が復活しています)


(え!)


(しかも2羽。

 もうこうなると、何かあると思ったほうがいいですよね)


(何も知らないわ)


(リーシェさんの知らない、原因がありそうです)


(そんな事を言われても)


(今はどうしようもありません。

 でも会話を全部聞かれてしまいますので、対策したいと思います)


(だから、これで会話しようと言うのね)


 その後、会話と独り言の使い分けを教えた。

 リーシェさんとは、ピノ達はまじえずに俺だけが会話することにしている。


 ーーーーー


 今回は俺が、パーティー・リーダーになる。

 討伐以外の依頼を受けてみたいと思っていたので、みんなに相談した。


「素材集めや採集の依頼は、入手が難しかったり、持ってくるのが困難なため依頼されていると思う。

 何も知らない、俺たちでは手が出せない」


 こんな依頼は、カンパニーやクランに入っていたほうが、有利なのだろうな。


「護衛も専用にしているパーティーがいる。

 それなりの知識、技術が必要だからだと思う。

 その辺の依頼はいずれ考えるとして、今できるのは調査くらいしかないと思う」


「調査なら何かが起きているのだから、その何かは私達でも探せるかもしれない」

 リーシェさんは賛成してくれた。


「俺もいいと思う」


「お兄様良ければ、それでいいわ」


 検討して『家畜失踪の調査』を受ける事にした。

 1組すでに受けている。


 討伐じゃないが、この依頼は複数パーティーが受けられる。

 だから、失敗した時のペナルティーが発生しない。

 失敗するかもしれない俺たちにはちょうどいい。


 開始日時が指定されていて、翌日の夜になっている。

 明日までに行かなければ、この依頼は受けられない。

 依頼者のフローデフ男爵の領地へは1日かかる、すぐに出発した。


 フローデフ男爵の屋敷は、思っていたよりも小さかった。


「ヨガは貴族の屋敷は、初めてか思ってたより小さいだろう。

 この辺の貴族は全部こんなもんだ。

 うちもこんなだ」

 とトゥールさん。


「元々魔物を抑えるためにある、爵位だからな。

 この辺の領主は、アルテミラル王国からは名誉を賜り、魔境から素材の金を得ている。

 それで魔物を、抑えているのさ。


 壁を作って維持するよりは、安く済む。

 それで、この方法は続けやすい」


「仕事は夜になる。

 日が沈む前に詳しいご説明をいたしますので、お待ちいただけませんか」

 と男爵家の使用人に言われ、部屋に通された。


 何もない部屋だが、野宿を覚悟していたので文句はない。

 床に転がって休んだ。


 夕方に呼ばれて行ってみると、外にテーブルと椅子が並べてある。

 簡単な食事が用意されていた、魚のスープとパンだ。

 嬉しい事に今回、寝る場所と食事は提供してもらえるそうだ。


 他に3つのパーティーがいた。


 しばらくすると、雇い主らしい人が来た

「私がフローデフだ」


 外見は40過ぎ、元は冒険者だったのだろうが、荒っぽさはみえない。


「フローデフ家では、畜産も行っている。

 このまわりにはいくつかの放牧地があり、そこで食用の猪を飼っている。


 依頼内容だが。

 最近、子供の猪が行方不明になっている。

 今までに7頭もやられている。

 私も見回っているのだが、原因がわからない」


 そう言えば、この家には他に騎士が見当たらない。

 何処かに行っているのか。


 使用人を夜見回せるのは危険だから、冒険者に依頼したのか。


「何かに、食われているのではないのですか?」

 別のパーティーの冒険者が質問をした。


「血の跡がない。

 襲われた痕跡がどこにもないのだ。


 丸呑みできるほど大きな奴なら、流石に見つけているだろうし。

 そんな足跡もなかった」


「空から来たのに、さらわれたとか。

 ギリシミロウの、可能性が高いのでは」


 ギリシミロウは飛行する魔物で、夜行性でしかも飛ぶ音を出さない。

 今聞いた話からすると、俺もそう思う。

 ギリシミロウなら、ここにいる1つ星でもやれる。


「かも知れんが、わかっていない。

 君たちへの依頼だが、今回の原因を調べて欲しい。

 ギリシミロウが原因なら、その証拠を手に入れて欲しいと言うことだ」


「ギリシミロウを、見たと言うだけではダメで。

 倒して、その死骸を証拠にしろと言われてますね」


「そうだ。

 ただし、見た物が君たちに手が負えない場合は、別に討伐依頼を出す。

 討伐されて、目撃証言が合っていたとわかった時点で、この依頼の成功とする」


 開始の指定があったのは、冒険者を集め監視する目を増やす考えだったようだ。

 他のパーティーとクジで、受け持ちを決めて夜の放牧地に散った。

 受け持った場所でなにも出なければ、報酬はもらえない、この依頼には運も必要だ。


「フローデフ卿はいかにも、紳士という感じでしたね。

 トゥールさんのお父様もあんな感じなの」


 元々リーシェさんの持っている、貴族への印象はかなり悪い。

 ラーディに来て上昇中だ。


「父は、もっとくだけてます。

 魔境周辺の貴族は元冒険者なので、父のような人がほとんどです。

 フローデフ卿のような人は珍しい。


 繋ぎ男爵なのかも知れませんね」


「繋ぎ男爵って、何なの」


(ビチュレイリワ、知ってる?)


[いいえ]


 最近、ビチュレイリワの情報収集の得意、不得意がわかってきた。

 これは苦手な分野だ。


「男爵の正当な後継者がまだ条件を満たしていない時に、暫定的に養子になって家を継ぐ人を指してます。


 嫡子が4つ星になってない時に、急の病気や怪我で当主がなくなってしまうことがあります。

 そんな場合に、わりと行われていますね。

 うちの場合、今父が倒れたら多分ガチートが、養子に入ると思います」


 ガチートさんか、トゥールさん家に仕えていると言ってたものな。


「自分のせいで男爵家が取り潰されないよう、よけい真面目になるのか」


「そんなとこです」


「そう言えば、トゥールさんってクランに入っているの」


「いや、入っていない。

 パーティー単位で、入るものだからな」


 出来れば『アルテミラルの盾』に入りたいと思っている」


「俺は遠征に行きたいんだけど、その『アルテミラル盾』に入ったらどうなりそう」


「遠征は、各クラン支援の貴族が、王に願い出てそれが許されれば行ける。

 まあ、願い出る前に貴族間で調整されているんだけどね」


 順番で言えば、次が『アルテミラルの盾』でもおかしくはない。


 でも、俺たちはすぐには入れないぞ。

 入団は、2つ星からだからな」


「そうなのか。

 1つ星こそ先人の知識とか知りたがるだろう、入りたいと思うけどな」

 なんでなんだろう」


「カンパニーなら1つ星でも入れるよ。

 目的が違うからな。


 貴族と関係のないカンパニーは、冒険者の底上げが目的。

 ヨガが言ったのは、こちらがやっている。


 貴族が支援しているクランは、遠征と爵位にふさわしいかのふるい落としだ」


「なるほどね。

 馬鹿な事をする1つ星は多いだろうしな」


 自分の実力を勘違いしての無茶とか。


「『アルテミラルの盾』はツェローラ子爵様がクラン・リーダーをなさっている。

 うちの家は昔から、ツェローラ子爵様にお世話になっているので、他の選択はないな。


 そして、『アルテミラルの盾』の支援はカナーエフ公爵様がされておられる。

 カナーエフ公爵様が次は自分のクランが行くと言えば、誰も反対しないだろう」


「なら『アルテミラルの盾』に入っていたほうがいいかな」


「ヨガ、その前に2つ星にならないとな」


「2つ星よりも、この依頼の成功です、お兄様」


「そうねキューさん、男の人ってどうして、先のことばかり気にするのですかね」

 リーシェさんに、笑いながら指摘されてしまった。


 2人は、あの夜甘いものを一緒に食べてから、仲良くなっていた。

 そしてうちの女性陣は、現実主義のようで。


「ヨガは、ちゃんと空見てるの」


「見てますよ」


 リーシェさん、俺が認識能力使って、空を見ているのを知っているのに。

 空は警戒して見ている。

 昼間の話なら、飛ぶなにかが拐っていった可能性が高い。

 俺の認識能力で監視しているので、見逃すことはない。


 その夜は、なにも出なかった。



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