33話 作戦会議
翼は神聖ミライリアの皇帝であるアルナ・レオンハートと宮廷魔術師で伝説の魔法使いと呼ばれているマニ導師と軍の総司令官で国の英雄のカーリー将軍と皇帝近衛隊の副隊長で神童と呼ばれているエマ・アラバスターと国の政治家で麒麟児と呼ばれているアキレスと諜報機関で闇の暗殺部隊でもある救いの会のガジャを、転移魔法の天才であるテスタロッテに集めてもらった。
みんな他の仕事やらで忙しそうだったけど無理を言って来てもらった。なんとか協力してもらえるように上手いこと説得をするつもりだ。
とにかく時間がない。うかうかしてたらみう達は逃げてしまうかもしれない。早く屋敷に乗り込みヤツらを殺そう。
──急に翼の身体がカタカタと震えだした。
『失敗したら どうしよう 逆にボクがめちゃくちゃな目にあわされるかもしれない きっとまた死ぬよりツラい目にあわされてしまうんだ』
震えが止まらなくなる。呼吸が苦しくなる。みう達から受けた拷問の数々がありありと翼の脳裏に浮かぶ。刻み込まれた恐怖は一生消えないのだろうか・・・
『全部 ガジャに任せよう うん そうしよう』
ガジャは自分に任してくれればみう達を皆殺しにすると言っていた。やっぱり直接会うのは怖いや。今回は安全なとこから見ていよう。
『いや ダメだろ ショリの時と同じ失敗を繰り返すつもりなの?』
シュリの救出をガジャに任したら彼はシュリを見捨てた。ボクの言うことを守る保証なんかない。
ボクは学んだはずだ。絶対にやりたいなら自分でやらなくちゃいけないんだ。これはボクの戦いだよ。人に任してはいけない。
『恐怖から目を背けるな 恐怖に飛び込むことでしか 恐怖から解放されることはないのだから』
戦うことでしか道は拓けない。だけどやっぱり怖い。気が付くと頭の中で戦わない理由を探してる。頭の中で必死に逃げることを正当化しようとしてる。
でもそれはいつものことだし当然のことなんだ。人は本能的に争いを避けようとするものだ。反射みたいなもんだ。
ボクの本当の望みはわかってるよね?それは復讐だ。借りは返す。あの悪夢を自分の手で終わらすんだッ・・・!!!
──みんながボクの方を見ている。さあ、会議をはじめよう。
「えと いまさっき ボクはシュリという獣人の女の子を助けてきました 彼女はボクの友達で世界商会の奴隷商の人に捕まって酷い拷問を受けて死にかけていました ボクは彼女を見捨てることができなかった 気がついたら彼女を助けていました」
てか、シュリはボクの友達と言えるのかな。ほとんど話したこともないじゃん。だけどボクは危険を顧みず助けに行った。なんでそんなことをしたんだろうか・・・
「知っている人もいると思うけど ボクは世界商会の『みう』という人に騙されて かなり酷い拷問をうけて 無理やり奴隷にされて そしてこの王宮に売られてきました」
女の子ならこの辺を泣きながらしゃべれば効果的なんだろうが、ボクにはそんな芸当はできやしないや。
「ずっとボクはみう達に復讐をしたいと思ってました でも神聖ミライリアが大変な時だったからそれを言いませんでした でもボクがシュリを助けたことで 同じ世界商会の一員である彼女はきっとボクのを警戒するはずです 今はみう達のいる場所はわかっていますけど姿をくらましてしまう可能性もある だからボクはこれからみうの屋敷に乗り込んでカタをつけて来ようと思います」
「ボクはボクを奴隷にしたみうをどうしても許すことができません 未だに夜中に恐怖で飛び起きるんです 彼女の顔が・・・声が・・・目が・・・ボクの頭に焼き付いて離れない」
「手をみて下さい 今も身体の震えがとまらない 怖くて怖くて たまらない これはボクの個人的な戦いだからこんなこと言うのは違うのはわかってます だけど」
「助けて・・・もらえませんか? ボクをどうか助けて・・・下さい・・・」
感情が逆流する。気がつくとボクは泣いていた。
あれ?ボクは一体全体どうしちゃったんだろう。こんなことを言うつもりはなかった。ボクはこんなにも弱い人間だったのか?
なんてカッコが悪くて情けないんだろう。ボクはみんなの顔を見ることができなかった・・・




