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ヘタレ獣は愛を乞う

短いですがきりがいいので。

ヘタレ染太が押しきったということで(笑)


 恥ずかしい話だけど、その日の夜も激しかった。


 染太くんの実家の帰りにジュエリーショップに連れ込まれ、シンプルなのでいい! と叫ぶもスルーされ、なんカラットですかそれ!? なダイヤの指輪を左手の薬指に贈られ、帰るなり押し倒されたあたしにこれ以上なにを言えと?


 ……しいて言うなら、あたしの指先にキスしただけであたしの腰を砕いたとか、その指輪を眺めて満足そうに笑う染太くんが色気駄々漏れでヤバいくらいだったとか、一回では終わらずに続けての……何回だっけ。まあ、そんな感じで抱き潰されることにも慣れてきている今日この頃。

 あたしの感覚おかしくなってないかな。

 いや、約20年分とか言われると強く拒否もできないというか。力抜けちゃって大した抵抗もできてないし。

 結局、触れてもらうのも抱きしめてくれるのも嬉しいのだ。

 それが、翌日の腰の痛みと引き換えでも。幸せな痛みだよね。


 そんな濃ゆい一日が終わった翌日。

 またもや染太くんによる強制お風呂が終わるなり美容部隊のお姉さま方に遊ばれたあたしは、セレブモードでお客様を迎えた。

「……たく、田崎くん?」

 なんと、大学時代の友人の田崎拓真くんに久々に会った。

「やあ、久し振り。なんだか面白いことになってたみたいだね」

 田崎くんとは大学は違ったけどーー彼は有名国立大学出身ーー染太くんつながりで友人になった。

 染太くんとは親の会社つながりとか聞いたことがあるから、小さいときからなんだろう。

「名前でいいのに」

「話がややこしくなるのだよ、それやると」

 田崎くんを拓真くんと呼ぶと染太くんの機嫌が悪くなるのだ。

「わかってて言ってるだろ、拓真」

「当たり前じゃないか。二人を一緒にいじるから愉しいのに」

この隠れ腹黒が。

「これが楽しみで裏であれこれやったんだから、ちょっとくらいいいだろう?」

 ん? 裏であれこれ?

「拓真くんまた暗躍してたの?」

「当然。いかに表に出ないで楽しむか。永遠のテーマだね」

「最初にこいつを頼ってよかったのか間違いだったのか……」

「やだなぁ、頼ってくれて嬉しかったよ? だからうちの敏腕弁護士も貸したじゃないか」

 どうやら最初から関わっていた模様。確かに拓真くんとあの弁護士さんなら不可も可にするだろう。むしろ嬉々としてひっくり返して叩きのめして頭踏みつけて粉々に砕くに違いない。

「あの女はこっちで処理しとくよ。前科持ちとして然るべき所に、ね。間違っても2度と君達の前になんて現れないように」

 ふふっ、と笑うお顔が恐いよ拓真くん。イケメンなのにもったいない。

 しかし染谷と田崎からのコンボに耐えられるかな、あの人。

「ところで、おめでとうと言っていいのかな?」

 話はここまでらしく、拓真くんがあたしの指輪を見て首をかしげる。うむ、美形はなにしても許される。理不尽だ。

「残念だな。中里がフリーなら、うちの従弟紹介したのに」

 拓真くんの従弟って、田崎グループ次期社長さま?

「結構だ!」

 隣であたしをガッチリホールドした染太くんにあたしもこくこくとうなずく。

 とんでもないめっそうもない。勘弁してよ。

「染太くんがいいの。だから紹介とかいい」

「……芽以、今それは反則だ」

 ん? なんで?

 口を押さえて赤い顔を逸らした染太くんを見て、拓真くんが笑い出す。

「冗談だよ。まとまってよかった。この分ならうちより早いかな?」

「決まったのか?」

「うん。婚約はね。式は来年かな。招待するからそっちも呼んでよ?」

「ああ、もちろん」

 拓真くん彼女いたんだ。マザコンでシスコンだから、似たような人じゃないと無理かなとか思ってたよ。

「なんか失礼なこと考えてるね? 中里」

「イイエナンニモ」

「まあ、当たってるけど」

当たってるんだ!?

「なんとなくだけどね。でもそれだけで決めた訳じゃないから」

 それはそうだよ。そんなの彼女に失礼だからね。

「そっか、幸せなんだね」

「お互いにね」

「「「おめでとう」」」



 怒濤の一週間が過ぎて、明日から仕事のその夜。

 相も変わらず押し倒されてるあたしを、上から見下ろした染太くんは、なにやら真剣な顔で。

「芽以」

「ん……? んん、動いちゃダメっ」

「芽以。俺と結婚して?」

 今? 今言うのそれ!?

「そめ、たっ?」

「俺だけを見て、俺だけを愛して」

 動かないで! 返事できないから!!

「子供ができるまででいい。そしたら子供と同じくらい愛して?」

「待っ、まっ」

「愛してる。芽以だけ」

 言いたい放題言いながら、あたしの返事を聞こうとしない染太くんは、あたしを揺らすだけ揺らして。

 キスで口を塞いだりして……ああもう!

「愛してないならこんなことしないよ!? 流されたまま反抗しないなんてあたしにしたらありえないでしょ? 好きだから! ずっと好きだったから! 嬉しかったんだよ。告白もプロポーズも嬉しかったの! 今更なしになんてしないんだから!」

 恥ずかしいんだからこんなこと叫ばせないでよ!

 それもつながってるこんな時に!

 きょとん、と呆けた顔したってダメなんだから!

「……も、反則」

 真っ赤な顔を隠すようにぎゅうっ、と隙間なく抱き締められて、あたしも首に腕を回して力を込める。

 ほんとだよ。今更なかったことに、なんて言われても納得なんてしないよ。くっついて離れてなんてあげないんだから。

「……幸せにする」

「……よろしくお願いします」

 なんだかなぁ。



 後に噂で、例の彼女は海外のセレブなおっさんの8番目だか9番目だかの側室として、ハーレムに監禁されたらしいと知る。

 そのおっさんの性的な趣味がかなり特殊らしいとも。

 結局彼女はなにがしたかったんだろう。自分の未来をふいにしてまで、あの男が欲しかったんだろうか。

 なぜ、正当なやり方で手に入れようとしなかったんだろう。

ほんとに好きだったのかな。

 今となっては知る術はないし、知りたくもない。ただ……幸せを祈ろう、うん。



 あたし達は婚約を会社に報告。

 次の人事で染太くんは本社に移動が決まり、そしてあたしの 身体の調子の悪かった理由も知れた。

「そもそも染太くん、避妊した?」

「ん? つわり酷いなら会社辞めてもいいぞ?」

 そういう問題じゃないし。

「今はできちゃった婚じゃなくて、授かり婚って言うらしいぞ?」

 そっちでもないし。

「式は今か、産んでから、どっちがいい?」

 それも今じゃないし。

「…………」

「…………」

「ごめんなさい。浮かれて忘れてました」

「最初だけ?」

「あとはちゃんとつけたし、見てだだろ?」

「…………」

 見た。見たくもなかったし見るつもりもなかったけど見た。

 なんか凶悪というか狂暴というか……うん。ノーコメントで!

「幸せするって」

 そうじゃなくて。

 幸せにしてもらうんじゃなくて。

 幸せになるのよ、二人で。



今まで読んで下さりありがとうございました❗

またいつかどこかでお会いできればこれ幸いです。

では!

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