プロローグ(前)
プロローグ
僕は家に向かっていた。
ただただ、ひたすらに。
ただいま、俗にいう「敵キャラ」に追いかけられている最中である。
後ろには、青くて小っこくて、一つ目でいかにも鋭利な牙が生えている、「デスライミュ」がいた。響きは可愛らしいが、耳をつんざくような奇声を上げ、「エサ」となる僕を骨の髄までしゃぶりつくそうとしてるようなヤツだ。
あと、デスって何だ。。
「ギャアアアアアアアアアアァァアァアァァァァァアアァァァアァァアアァ!!!!!!」
『耳をつんざく』は比喩ではなかった。全半角までも無視するその叫びは、耳の感覚を徐々になくしていった。
クソッ……。
「どうして…ッ こんな目に…ッ…」
思い返せば、全ての原因は…。
原因は……。
インワ………。
意識が朦朧としてきている。今にも気絶してしまいそうdぁ……
「」
誰かが近づいてくる。何かしゃべっている。しかし、今の僕にはその声を受け取ることは出来なかった。
僕は、そのままそこに倒れた。
*
「……………………ーい…… 大丈夫か… ……………ー夫か」
「おい!!」
僕は、突然目が覚めた。
ここはどこだ?
目の前には、がっしりとした体つきの男が1人と、どことなく優しそうな雰囲気を醸し出している女の子が1人。彼女は、目覚めた僕を見て、言った。
「良かった~。気がついた。全く、あんな弱っちいヤツにやられて、一体どうしたの」
「あの…ここは?」
「ここは私の家。あっ、私はマリア。こっちはタケル。私の部下よ」
「……」
「よろしくお願いします」
「……」
沈黙。
「えっ?部下ですか?」
どうやってこんな人を従えたんだ? 僕は思った。するとマリアは、まるで僕の心を読んだかのように、
「実はですね、飢えに困っていた彼を助けたら、いきなり忠誠を誓う、とか言いはじめたのです。簡単な人ですよね、全く」と言った。
この人は、「全く」が口癖らしい。いやどうでもいいが。
「もっと深いわけがあるのですが」
「いいです」
「2時間程度で済みますから」
「いいです」
「聞いてやれよオオオオオォォオォオオ!!!」
心臓が止まるかと思った。ああうるさい。ムリクリ ライトノベル仕様にしろとは誰も言ってないじゃないか。
「やめときます」
男は20代前後といったところだろうか。丸刈りで、目の上には古い切り傷が走っている。しかし、マリアは10代ほどで完全に「少女」である。茶髪、整った顔立ち、ピンクのワンピースに短めのスカート。よくよく考えてみれば、恐ろしい部下だ。
「忠誠を誓う」とか言ってるが、この男何するか分からないじゃないか。という考えは、マリアの穏やかな微笑みにかき消された。何考えてるんだ僕は。
「なぜだ。マリア様の話はありがたいぞ。私の命の恩人なんだ、むしろありがたくないわけがない」
「長いんですよ。僕は急いでるんです。早く家に帰らないと」
「「今から「ですか?「か?」」
二人の声がハモる。
「窓でも見てみてください」
「はい…」
言われるまま、紺色のカーテンをめくって、窓の向こうを見てみる。そこには、モンスターの大量発生の現場。色とりどりのデスライミュ。名前もわからない虹色のドラゴン。体長30mはゆうに越すであろう、血色の浮き出た人ならざるもの。恐ろしい奴らばかり。
僕は、無言かつ真顔でカーテンを閉めた。
「どうすれば……」
「うちに泊まればいいんじゃないですか?」
「…………」
「うむ。それがいいだろう。今日はもう遅いしな」
「……………」
「ではお風呂にでも入ってきてください。そうそう、名前を聞いていませんでした。お名前は?」
「…ヨウヘイ。鈴村洋平。15歳」
「あら、同い年です。よろしくお願いしますね♪」
「…はい」
急転直下の展開に頭がついていってなかったが、僕ははっきりとそう答えてしまった。




