第101話 犯人は『勇者(ニュー)』だっ!
エヴァ達は、爆発による地鳴りと地震に、膝をつきながら身を守る。
―――ゴ…ゴゴ……ゴ…ゴ…………ッ。
治まっていく揺れと地鳴りの中、
辺りをキョロキョロしながら、エヴァがリンデンに聞く。
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「ねぇ、あの爆発って、『ニュー』だっけ? あの人が行った方向からだよね?」
「そうですね。彼が起こしたものなのでしょうか。」
「あの人、大丈夫かなぁ?」
「どうでしょうか。不思議な雰囲気な方でしたが……。」
「ね、さっきの戦いで、私達の分の素材は揃ったんだよね?」
「あ、はい。」
「ならさ、爆発が起こった場所に行ってみない?」
フリージアも、今の爆発が気になっているようで、刀を手に持ち立ち上がる。
この状況下で、爆破という『非常な事態が起きている場所』に、チームを向かわせて良いものか? リンデンは口に手を当て考え込む。
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「恐らく『お母様』から、何かを聞かされて、悩まれているようですが……。」
マーガレットのその意味深いその言葉に、目を大きくするリンデン。
「でも、『ニュー』さんでしたっけ?
彼の様子を見に行くくらいは、構わないのではありませんこと?」
「ね! リンデン。行ってみよ? これで昇格しても気持ち悪いじゃん!」
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―――久しぶりに見せる『エヴァの慈悲深くも、ひまわりのような笑み』。
ふんわりとするような、あの温かさをリンデンは感じて……
思わず口から「はい」と出してしまうリンデン。
……これは、きっとエヴァさんの『魅了』なのでしょうね。
それが、分かっているリンデンなのだけれど。
それだけではない……エヴァの純粋な優しさも伝わって来ていて、それに納得をしてしまっている自分もいる。
「分かりました。でも、無理することは禁止ですからね?」
自分が「ギルドの悪意」を止めるためにも……と、心に言い聞かして、彼もまた、爆発の現場に向かう決意をする。
✿ ✿ ✿
「うわ、何これ?」
フリージアが、大きく渦を巻き地下に流される砂漠を見て驚く。
「うっ! 皆さんこちらに来てください。」
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マーガレットが血相を変えて、砂山の裏で3人を呼ぶ。
「うっ……、死んでるのかな?」
「うん、後ろから、急所を一撃で切り付け殺してる。手練れの所業。」
エヴァとフリージアがふたつの転がった「死体」を見て言う。
「胸元から何かを盗まれている感じ……盗賊ですかね?」
リンデンが、ふたりの胸元の衣服の乱れを直しながら、彼はおや? と思う。
「あれ、不思議ですね。お金や回復アイテムは取られていません。」
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「盗賊の仕業ではない……といいますか、
逆に、『こちらの方々』の方が……盗賊さんみたいですよ?」
マーガレットが彼らに刻まれている「タトゥー」を見つけ指をさす。
「これは、『盗賊の刻印』ですか。」
「ええ。」
「えと。さっきの爆発はここで起きて、砂の渦が出来てて、その近くで盗賊が2人死んでいる? それで、盗賊が何かを盗まれてる? うーん。」
エヴァが首を傾けて、砂の渦と盗賊の死体を、代わり替わり見る。
「あれ、そういえば『ニュー』はどこに?
消えた? 何か……本のお話しみたいで不思議だね!」
最近、寝る前に読んでいる「お気に入りの本」の主人公を真似て、エヴァは顎に手を当てて、うーんと探偵のようなポーズを取る。
そして、
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「わかった! 犯人は「ニュー」だっ!」
”ビシッ” と指を刺すポーズで決めると、肩から、エヴァの妖精『もも』がぴょんと立ち上がり、同じポーズで『にゅだあぁー』と真似をする。
◇
キラリッ!
「あら、これは何かしら?」
ふたりの指刺す先を見たマーガレットが、何か光るものを見つける。
光る何かを拾い上げて、まじまじと見るマーガレット。
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「あら、あらら? これは『神殿の指輪』?」
「ん? 神殿って、マーガレットが修行したとこ?」
指を刺した姿勢のまま、エヴァと『もも』が首をかしげる。
「えぇ……わたくしがお世話になった「西」ではなく、『東』のものですけど。」
「回復の「西」、光魔法の「東」でしたっけ?」
リンデンが、両手を広げて、東西を左手と右手で例えながらマーガレットに聞く。
「そうですわね……。でも、何故ここに?」
ん~? と、首を傾げていたエヴァ&『もも』。
「何故ここに?」の言葉に、顔を見合わせ『!』という顔をする。
「わかった! 犯人は~~『神殿』にいる!」
『いるー』
再び ”ビシッ” と指を刺すポーズで決めるエヴァの妖精『もも』!!!
今度のその指先は……、何故か ”砂の渦”……。
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これは、フラグなのだろうか……?
……その瞬間。その渦の底から、次々と「黒い影」が飛び出してくる!!!
「え? えー? 今度は一体何をしたんですかあ~。」
「何、そのエヴァの『指刺しフラグ』! 笑える。」
リンデンは怯え、フリージアが颯爽と構えるいつもの構図。
現れたのは、全長1mを超える『大きな蟻』達。
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「え? これは、『アリ穴』のモンスター!?
―――皆さん構えてください! 『世界樹、中層』くらいの敵と聞きます!」
「中層の敵」と聞いて目をらんらんとさせた3人は、阿吽の呼吸の隊列を組む。
そして、それを見て、自分の適切な立ち位置を見極め、動くリンデン。
想定には無かった、絶対に近づかないと決めていた『アリ穴』の敵を目の前にして、彼は思考をフル回転させ始める。




