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俺の異世界冒険記!  作者: ワシュウ
聖王国編
411/411

閑話 グラ・スクラントン 妻の婚約破棄騒動

続き

私は、ツンデェレ伯爵家の長女ジャネット


数年前、婚約者を異母妹に寝取られてさらにその婚約者は、卒業パーティー会場の公衆の面前で婚約破棄を宣言した


「お前は妹を虐げる悪魔のような女だ!いつも口答えばかりして、生意気で男を立てることを知らない!おまけに顔も不細工で傲慢で我儘で全然可愛くない!お前と、この先過ごすのは苦痛でしかない!婚約を破棄する!」


「お言葉ですが、この婚約は私の意志とは関係なく家同士の…」

「言いがかりはよせ!上から目線で偉そうに私に指図するな!分からぬか?そういう所だぞ!母上も〝我の強そうな娘だから心配だわ〟と言っていた!私の母上に気を使わすお前は悪女だ!図体がでかいのも気に入らない!

去年とサイズが変わってドレスが無駄になったではないか!(※と言う口実で異母妹にドレスが渡った)

今までそなたに使ったプレゼント代を返してほしい、本当に無駄金だった」


「大丈夫よ、私がもらえば無駄にならないわ。わかったでしょお姉様?」


彼は言ってやったみたいな顔して、異母妹はニヤニヤ笑っていて…周りからの好奇の視線でヒソヒソ


私は、あの人の良さそうな彼の母から嫌われてたのかとか、言うほどプレゼント貰ってないわとか、異母妹が今つけてるネックレスは母の形見なのにとか

…色々と耐えられなくなって、涙が溢れてその場から逃げ出した


屋敷に帰ったら継母は娘の所業が信じられないと喚いて取り合ってもらえず…

その後帰って来た実父は憤慨して怒ってくれた

「婚家の妹に手を出す男だったとは…お前はどうしたい?このまま婚約を続けるのは無理だろう?こちらから破棄して新しい相手を探そう」


それから異母妹が帰って来て、勝ち誇ったような顔で「これで跡継ぎは私の方が相応しいってわかったでしょ?早く出ていって下さる?新婚生活にお姉様は邪魔なのよ」と罵った。


この家は私が跡継ぎなのに、元婚約者も異母妹も頭が相当悪かったのね。ツンデェレ伯爵家は私の実母の生家、お父様は婿入りしてきた前スクラントン公爵の三男。


母亡きあと、数年後に妊娠した後妻が来た…お父様も妻に先立たれて淋しくされていたのだから、そこは仕方ないと割り切るけど。正直言うと、もっと相手を選んで欲しかったわ


元婚約者は異母妹と付き合っても跡継ぎになれないと知って、私に復縁の手紙を出してきた


〝母上が君に申し訳ない事をしたのだから、謝りなさいと泣いていた。母上の涙にめんじて、私に許しを請うなら、また婚約してやらなくもない。

これからは生意気な事を言わず、誠心誠意私に尽くすがよい。ただし君の妹を愛人にするから、君のことは愛さないよ〟


復縁の手紙と言ったけど、どの面下げて書いたのかしら?厚かましいわね本当に。


運が良かったのは、婚約破棄の手続きもまだで関係があやふやなまま、その婚約者バカは運悪く戦で帰らぬ人に。

長い付き合いだったから少しの情でも湧くかと思ったけど、彼の事はそんなに好きじゃなかったみたい。死ねばいいのにと思ったけど、呆気ないものね…と思ったくらい。


その後、彼の家から息子が死んだのは貴女のせいとか、悪いと思うなら援助しろ、阿婆擦れ妹を使って罠にハメただろうとか散々に言われた


お父様が手を尽くしてくれて何とか収まったけど、異母妹バカ

「お姉様のせいで私は恋人と一緒になれなかった」と社交界で悲劇のヒロインぶっていた



その次の婚約者候補も、家に呼んだ途端に儚そうな異母妹に寝取られてしまった。

だけど、いつものように社交界では私が悪者の噂が流れていた


「あなたが変な男を連れ込むからよ!」

継母は相変わらず私には冷たかった。

家に婚約者を呼べない、私の手紙も継母や異母妹に盗まれる


私の結婚がどんどん遠ざかる…もう諦めたほうが良いのかしら?

どんな最低無能男でもいいから結婚して継母と異母妹を追い出すべき?


転機が訪れたのは、アレナ女王陛下の戴冠式の後の事


激動の例の事件で城にいた上位貴族のほとんどが消えた。グラ様は、前スクラントン公爵がメイドに産ませた子で血縁上は従兄弟だけど、会ったこともない。従者だと思っていたから、遠くで見かけるだけで気にしたこともなかった。


それが、アレナ女王陛下と共にこの国を救った英雄。試練の塔を実力で踏破したグラ様は公爵になった


そんな若き英雄グラ・スクラントン公爵との縁談が持ち込まれた。私の父は前スクラントン公爵の三男だから、お声がかかってもおかしくない


私は冷たい継母と我儘で理不尽な異母妹を許せなかった。

そのことはアレナ女王陛下にはお見通しで、私の子供をツンデェレ伯爵家の跡継ぎにすると言う条件をアレナ女王陛下が出して下さった。お父様もアレナ女王陛下の条件に否は言わなかった


私はこの婚約を受け入れた


グラ様は鎖国を解かれたコルドバータから、グロステーレと国交を結ぶために留学されると聞いた。グラ様は学園に通っていなかった為に卒業資格や学歴がなかった。グロステーレのカレッジは年齢に関係なく学べるらしい


「豊かな国は考え方も自由で先進的ですわね。きっと全てがグラ様の糧になるでしょう」

「留学の間、公爵家をお願いします」


口数少ないグラ様との会話。もっと気の利いた事を言えば良かったと後で後悔した


スクラントン公爵家を私とお父様が取り仕切る為に、婚約期間なしのスピード婚になった。私たちは最短で結婚式を行った為に、初夜と月のものが重なり致せなかった。


グラ様は出国凱旋パレードの中、グロステーレに旅立った。


それから半年後に初めて手紙と荷物が届いた。無事にグロステーレに着いたこと。コルチーノ兄妹の案内で学園都市ミネルヴァを観光した際の、その土産を送って下さった。


美しい異国の茶器と布やレースリボンは、社交界で私の立場を安定させてくれた。


皆がこぞって、珍しいグロステーレの茶器を見たがり、グロステーレで流行りの布の切れ端やリボンを欲しがり、長期保存のきく焼き菓子やドライフルーツや茶葉に心躍らせた。

あれだけヒソヒソしていたのに「お茶に誘って下さいまし公爵夫人」と掌を返したよう。


一緒に入っていた本は大陸共通語で書かれてあった。

父と公爵領を回る馬車の中、アルラシードから連れてこられた奴隷(※合法)少女を買い、翻訳させながら文字の勉強をした


父は三男の自分が公爵領をまとめる立場になったと驕らず、真面目に私の為に手を尽くして下さった。以前より長い時間一緒に過ごせて、優しく時には厳しく私を導いてくれる


「アレナ女王陛下はどうして私を選んで下さったのかしら?」


「ダイタナゴーヨク兄上では公爵家をまとめられない。それに年回りのよい娘がジャネットしかいなかったのだよ」


お父様の2つ年上のダイタナゴーヨク叔父様は、ギャンブル好きで有名ですものね。婿養子なのに伯爵家(婚家)の財産を食いつぶすのですもの


「でも、年回りなら異母妹サリナの方がよろしいのではなくて?」


「サリナに領地経営は無理だ、分かりきった事を申すでない。アレナ女王陛下はサリナの行いを知っておられるのだ、そしてジャネットが真面目で優秀だとご存知だろう。

スクラントン公爵に必要なのがジャネットだと言う事だ。留学から帰って来られた時に公爵家が傾いてたら目も当てられない、しっかり立て直そう」


お父様が育った頃より領地経営は傾いていたそうで、お父様の方が立て直しに積極的になっている


更に半年後にリヒテンシュタインの紅玉芋と言う珍しい紫色の芋とその他のお土産を送って下さった。

アレナ女王陛下にも献上して欲しいと手紙にあり、謁見の為に城へ上がった。


木っ端微塵に吹き飛んだから、新しい城は別の場所に移され、王城跡地は澄んだ地下水の湧き出る聖地へ変貌をとげた


「よく来てくれたスクラントン公爵夫人ジャネット。歓迎しよう」

「お呼びに従い馳せ参じました、拝謁賜り光栄にございます女王陛下」

「ここは私のプライベートな部屋よ、女王陛下ではなくアレナで良いわジャネット。私たちは女王と公爵夫人の前に、一人の人間で友達でしょう?」


女王と言う立場、その肩にずっしり国を背負った女性。きっと心の平穏が私という同世代の友達なのでしょう。

女王陛下と友達など畏れ多い事ですが、年は私の方が少し上ですので、ここは私が折れて差し上げなくては


「ふふ、公爵から手紙と貢物が届いたそうね」

「アレナ様は異国の品をお気に召しまして」


結論から言うと、アレナ女王陛下は紅玉芋をご存知だった。天啓があり芋を育てる場所の候補を伺った。もちろん公爵領で育てるようにと仰せでしたが


「サツマ…紅玉芋は、日当たりが良く乾燥した水はけのよい土地が良いの、コルドバータの元の痩せた土地でもよく育つのよ」


「まあ!それはそれは…グラ様は素晴らしい芋を送って下さったのですね」


「ええ、高級食材なのよ(この世界にもあったのね!)焼いただけで甘くとろけて美味しいの。国中で流行るわよ、きっと」


鳥肌がたった…国中で流行るほどの芋ですって?アレナ様の先を見据える慧眼恐れ入るわ。

献上するのに芽が出た芋は除いたけど、植えるなら芽が出たモノの方が良かったかしら?


紅玉芋料理のレシピを下賜されて、自宅で早速料理人に作らせた。焼いたり煮詰めたりすると屋敷に甘い香りが広がった。


お父様はツンデェレ伯爵家と公爵家を行ったり来たりするから、伯爵家に「紅玉タルト」を送った。


翌日、何故か異母妹サリナと継母が押しかけてきた

「お姉様だけズルいわ!」「あのお菓子は何なのよ教えなさい!まだあるのでしょ!」


もちろん丁重にお帰りいただいたけど、相変わらず社交界で「夫に逃げられた可哀想な公爵夫人」とか悪評を流されてる。


逃げられたのではなく留学されてるのよ!

と反論したいけど、言っても通じないし相手するのが疲れる人たちなのよね。


去年、茶器が届いた時も「ズルい」「欲しい」とうるさかった。お父様が注意してくださったけど、腹いせの散財が増えたと怒っていたわ


紅玉芋を公爵領や伯爵領や親戚領地にばら撒いて半年後…平均して1つの種芋から5、6本は収穫できたと報告を受けた。


麦より断然育てやすいと領民に喜ばれた。他国へ逃げた領主から、領地の救世主に…人の噂なんていい加減と理解する

そして、アレナ様が王城のパーティーで紅玉芋のお菓子を披露したら、爆発的人気になった


そして更に数ヶ月後――


グラ様が、私の旦那様が卒業したから帰ってくる、どうしましょう!


私はもう25歳になってしまった。グラ様はまだ20歳で若いのに…

きっとグロステーレの美しい白い肌の若い女学生に目移りしてるに違いないわ…

もしかしたらまた異母妹に寝取られるかもしれない…


結婚式の時に、頭一つ分ほど大きかった私の身長

(※グラが小さいだけ)


最初の婚約破棄の時の悪夢を何度も見るようになった…

寝不足で目の下にクマができたし、肌も髪も荒れて、食べてないのに太った気がする

(※ストレスで便秘)



そして、グラ様が国境の村で襲撃されたと聞いて震えて立てなくなった

私は一夜を共にすることもなく未亡人になるの?私はこの先もずっと一人なのかもしれないと目の前が真っ暗になった――…



これはきっと夢だわ。

ふわふわした可愛い白い花の妖精が私のことを「母上」と呼んだ。

グラ様は生きていて無事だと、明日戻ってくるから心配しなくて良いと言う。


もしかして、花の妖精が人間に生まれ変わる為に私の下に来たのかしら?そんな物語を幼い頃、母に読んでもらった


「他に心配事はないですか?領地経営はよく出来てるし、ぱっと見て問題なさそうだけど」


異母妹の事、グラ様の無事、たくさん頭に浮かんだけど


「私は自分に自信が持てないの、何度も婚約がうまくいかなかったから…」

「今までは運が悪いだけだよ、どうしたら自信が持てるの?」

「グラ様はお若いでしょう?見た目も若いから私みたいなおばさん、再会の瞬間に幻滅されるわ」

「25歳は十分若いって、ぷるぴちだよ?」

「妖精の概念と違うのよ」

「人間、誰しも外見だけ見てるわけじゃないよ?グラには姉さん女房の方が合ってると思うけど?」

「私は自分の見た目が嫌いなのよ。痩せたって骨太い体型はどうにもならない、頬が出っ張って、実年齢より老けて見えるし。せめてグラ様より若ければ」


「あなたは懐の深い良い女だと思うけどね?

見た目が若返りたいなら、そなたの願いを叶えよう…18歳くらいでよい?」


「え?!……待って!どうせなら美しくなりたいわ!異母妹や継母に馬鹿にされないように…私はお父様に似てしまったの、けどお母様は美しかったわ」


お母様の肖像画を白い妖精に見せると「今もお母さん似じゃん?」と不思議がっていた。

妖精から見たら私もお母様と似てるのかしら?


「よく見て!お母様の二重瞼は、ぱっちりしてるでしょう!顔だって小顔だし、頬骨もない!瞳の色は飴色で、髪も真っ暗じゃなくて焦げ茶よ!それに肌の色も全然違うじゃなくて?」

(※黒髪、黒目、褐色肌の違いを力説)


「では約束してくれる?美人になったからって調子乗らない!グラを捨てないでくれよ?生まれた子が女でも男でも大事にしてよ?

見た目が悪くてもそれは元のお前に似たんだから文句言うなよ?」


「私をみくびらなくて下さる?異母妹のようにちょっと可愛いからって調子に乗らなくてよ!

どんな子が生まれようと私の子ですもの、可愛い我が子を愛さずにはいられないわ!私がお母様に注いでもらった愛情を我が子にも注ぐわ!いえ、それ以上に愛するわよ!」


すると、ニコリと笑った目の前の小さな白い妖精がみるみると成長して


女神になった!?


白銀の髪をなびかせ、どこまでも見通す深い青い瞳の女神様が杖を振ると祝福の光が振り注いだ


私は何と愚かな事をしたのか、女神に欲深い願いをしてしまった――…



「――そして、目が覚めたら体調不良(※便秘)と睡眠不足が解消されて(※髪と肌の艶が)18頃の頃に戻っていました」


「……え?あ、はい」


戸惑うグラと話したことを後悔するジャネット


「こんな話しをして頭がおかしくなったと思いましたよね?」


「いえ、白銀の女神様は信じます!僕も見たことがあるので!でも、そなたの見た目がそんなに変わっていたのですか?えっと会った回数も少ないですし、随分前なので正直言って見分けがつきません。そなたは最初から美しいです」


「旦那様…」


「グラと呼んで下さい、私達は夫婦になるのです。私もジャネットと呼んでも?」


困ったように笑ってから、顔に力を入れて真剣な眼差しで見つめてくるグラ様に胸がときめいた。

2年近く会っていない間に背も伸びて筋肉がついて胸板も厚くなって顔つきも凛々しくなられたわ


「旦那様…それでマリーウェザー・コルチーノ伯爵令嬢とはどういったご関係ですの?」


「え?!マリーウェザー様はスカーレット王女殿下の側近になられて今は聖王国へ留学してる」

「それだけですの?」

「クラスで世話になって、学校が休みの冬の間は領地の温泉街で経営してる宿に泊めてもらった。何から何まで世話になった恩人だ」

「ふーん、その恩人の素敵なお嬢さんとどこまで親密な仲に?」


「は?親密?…マリーウェザー様は8歳だが、何か勘違いしてないか?」


ジャネットの中の年頃の令嬢イメージがガラガラと崩れて、8歳ってどんな子?と思考が迷走した


「王女殿下の側近って言うからてっきり歳の近いご令嬢かと…アレナ女王陛下もお茶会で優秀なコルチーノ兄妹が面倒見てくれてると仰って、それで私てっきり勘違いを」


「スコット様が17、18だったかな?レイナルド王太子の側近をしていて、2人とも優秀なのだ。あ、長兄のコーネリアス様も公爵令嬢と婚約していたから兄妹全員が優秀なのだ。私はコルチーノ伯爵一族のように、領民を導いて行きたい。前伯爵夫婦は一線を退いた後も領地内を駆け回り、温泉街に来るVIP貴族と社交を続けていた。生涯現役だそうだ。

マリーウェザー様とスコット様は幼い頃から領地でコルチーノ前伯爵夫人コンスタンツェ様の教育を受けていたらしい」


「幼い頃の教育は大事とう事ですね?私もお父様と今は亡き母に厳しく育てられましたわ」


「その厳しさは愛されてる証だ。僕は誰からも愛されなかったから…」


「まあグラ様…これからは私が愛してさしあげますわ。だからどうか私を捨てないでくださいまし…もう、捨てられるのも選ばれないのも辛すぎますから」


「僕がそなたを捨てるわけないじゃないか。ジャネットの方こそ、不甲斐ない僕に愛想つかしてしまわないか心配だよ…」


ジャネットが席を立つと座ってるグラの隣に腰掛けて優しく抱きしめた


「私の愛の深さを教えてさしあげますわ、私は懐の深い女ですのよ」


そして、夜着に着替えてベッドに入る時に思い出した


「朝起きたら枕元に不思議な小瓶が置いてありましたの…女神様がくださったものだと」


「あ、それは栄養ドリンクだ!私もマリッ…妖精にもらったことがあるんだ。飲むと疲れが取れて元気になる。マリーウェザー様やスコット様も飲んでいたから大丈夫だ」


グラ様も荷物から小瓶を出して見せてくれた。少し瓶が違うけど淡く輝く所が似ていた。

コルクを抜いてあおる…ほのかに甘い液体がスルスルと体に染み込んでいく。

体が軽くなり、ホワホワと暖かくなってとても気持ち良い


「本当ですわね、体から元気が溢れるようよ……ふぅ~」


艶めかしい吐息が自分から出た!自分で自分が信じられない…グラ様が欲しい



翌朝――


メイドが起こしに来て、静かに出ていった。

昨晩は元気になり過ぎたわ!はしたないと幻滅されないかしら?

グラ様の寝顔に優しく口付けをした


昼頃までのんびり過ごしてしまったわ。

カヤック様とルウ様がいらしてるのに、おもてなしもせず恥ずかしい


食堂へ行くとカヤック様とルウ様がグラ様と話す声が聞こえてきた


「昼前に噂の妹が来てたんだけど、泥団子投げて追い返したよ。文句言ってきたら速攻で逃げ帰るな?」

「効果的だと分かったから次も同じ手を使えばいい、馬糞なら一月は来ない」

「カヤック、ルウ、ありがとう助かった。義妹にかける情はない、次からは馬糞を投げつけよう」


あの異母妹に泥を投げつけたですって?!

何て野蛮なの?最高ね、アハハいい気味!

次に来た時は馬糞を顔に投げつけてやるわ!

なんだ、もっと早くそうすれば良かったのよ


優等生は辞めて、やり返せば良かったのね


いつもより美味しいスープの昼食が出た。


「あ、お口に合いましたか?これはグロステーレで流行ってる高級ブランド・バーバラの魔法鍋で調理しました。料理人の方に使い方の説明がてら」


「んまあ!カヤック様がお作りになったの?グロステーレの食材かしら?魔法鍋と言うだけあってとても美味しかったですわ」


「カヤックは道中ずっと我らの食事を作ってくれてたんだ。実家が有名な高級食事処らしい」


「あらそうでしたのね、英雄アルラフマーンの部下の騎士様と言う一面だけではなかったのですね」


「カヤックは、コルチーノ兄妹のアルラシード留学にもお供して料理番と護衛と御者と案内人をこなしていた」


「何でもこなせるのですね、今後もスクラントン公爵家で雇うに相応しいお方でしたのね」


「え?あー、俺らは故郷くにに帰りますんで」


「あら、そうでしたのね。早とちりしてしまいましたわ、ごめんあそばせ」


「いえいえこちらこそ。閣下が大丈夫そうで安心しました」

「私としてはカヤックとルウがいてくれたら心強いが、無理強いはしない。長い間世話になった、ありがとう。この恩は私が生きてる間は忘れない…何かあれば必ず駆けつけよう…グスッ、楽しかった留学はカヤックとルウがそばにいたからだ、グスッ」


「そんな大層なことはしてないですって」

「カヤックの用意する食事がもう食べれない…グスッ」

「料理人に鍋の使い方教えました」

「眠れない時に出してくれた蜂蜜ミルクも無い」

「次からは奥方にしてもらえますから」

「カヤックを兄のように父のように慕っていた」

「んじゃ、兄弟の幸せを願う。元気に暮らせよ」


そうして、翌日の昼間にカヤックとルウが帰った…

ジャネットはそっと寂しそうなグラの背中を撫でて寄り添った


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