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JOAT -何でも屋-  作者: 多岐川暁
Chapter.VII:探すべきもの
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エピローグ

2 years later……


 心筋梗塞で祖父が倒れた。八十八歳、祝いの翌日の出来事だった。勿論、表向き血族である自分にも連絡はきた。

 祖父の意識は一週間経っても戻らず、父は円城寺グループの掌握と共に再編に手をつけ始めた。

 正直、父の手駒にされるにはまだ情報が足りず、円城寺グループを瓦解させるには力が足りない。兄の失脚を狙うだけなら必要なモノは全て揃っているが、自分が求めているのは円城寺グループの瓦解だ。

 あと一年あれば、もう少しマシな状況だったと思わずにはいられないが、恐らく時間はさほどないことは伺い知れた。

 それまでに必要な情報は多々ある。二年間で人脈を広げ、その人脈を足掛かりに情報を集めてきたが、この方法では時間が掛かりすぎる。

 焦りを生む状況の中で、唐突に懐かしい顔が訪れた。

「よっ、久しぶり」

 そう言って入ってきたのはトオルだった。病院で別れて以来二年ぶりの再会だが、何一つ変化していないように見える。

「久しぶりだが、受付はどうした」

「顔パス、ってのは冗談で、前に使っていたセキュリティーカードとちょっと」

 恐らくトオルのことだから、セキュリティー会社のデータを書き換えて入館可能としたのだろう。

「観光か?」

「ご冗談。わざわざ東京の観光なんてするかっての。……爺さん危ないらしいな」

「あぁ、その件か。まぁ、復帰は無理だろうな」

「という訳で、再び俺を雇わない?」

 余りの軽さに眉をひそめたが、トオルは気にした様子もなくへらりと笑った。

「情報、必要なものがあるだろ」

 確かに必要としている情報は多々ある。だが、二年前トオルを巻き込んだ苦い思いもある。そもそも、トオルには後遺症が残ると聞いていた。再び巻き込むことはできない。

「別にないな」

「またまたー。ほい」

 そう言ってトオルが投げて寄越してきたのは数枚の写真だ。そこにあるのは見知らぬ女性とキスをする父親の写真だ。

「……これをどうした」

「防犯カメラをちょっとね」

 その言い方からして防犯カメラの映像をセキュリティー会社からハッキングしたことは伺えた。

「その……右手は」

「ご覧の通り」

 そう言ってトオルはポケットに突っ込んでいた右手を出すと、握ったり開いたりを繰り返した後、親指から順番に指を折り畳む。

 その早さは通常の人と変わらない。

「まぁ、足の方は長距離走ったりはできないけど、ほぼ完璧。リハビリ、死ぬ程辛かったんだからな」

 偉そうに胸を反らすトオルを信じられない気持ちで見つめる。診療費などを払った関係でトオルの後遺症については書面で知っていた。リハビリ後にも完治する確立は十パーセントと低いものだった。

 恐らくトオルが言った通り、死ぬ程辛いリハビリをしてきたに違いない。

「正直、驚いたな。あの状態から復活するなんて」

「俺に不可能はないの。この足だっていずれ復活するつもりだからな」

 自信満々に言い放ったトオルは、確かに自信に満ちあふれていた。あの状態からここまで戻したのであれば、その自信にも納得できるものがある。

「で、どうよ」

「ダメだな」

 それは即答だった。当たり前だ、これ以上円城寺家のごたごたにトオルを巻き込むつもりはない。しかも、今度始めようとすることは円城寺家との全面戦争だ。兄の可愛いちょっかいどころでは済まない。

 下手をすればトオルだけではなく、トオルの家族まで巻き込むことになる。それに、トオルの母親からは厳しく関わるなと言われていた。それもあって、怪我の状態は気になったが二年間、一切連絡を取っていなかった。

「何だよ、俺じゃあ役に立たない?」

「いや、そうじゃない。今度こそ命の保証ができない。それにトオルを巻き込みたくない」

「えー、もう充分巻き込まれてるだろ」

「家族の保証ができない」

「それについては安心していい。うちの母ちゃん、タイにいる父親のところに行ったんだ。あそこは円城寺の力が及ぶ場所じゃない。姉ちゃんも青い目のイギリス人と結婚して今は海外だ」

 さすがにこの新情報には本気で驚いた。

「なら、トオルはいま」

「一人暮らしに決まってるだろ。まぁ、母ちゃんは最後まで駄々捏ねてたけど、親父と一緒に説得してようやく監視下じゃなくなったって訳」

「……トオルがここへ来ることは知ってるのか?」

「母ちゃんは知らない。でも、親父には話してあるし納得してる。だから、うちの心配はする必要ないかんな」

 学生時代からトオルには幾度となく驚かされてきたが、今回ほどの驚きはない。

「今の状況がわかって言ってるのか?」

「わかってるから親父にまで話して母ちゃん引き剥がしたんだよ。半年前には既にこの状態だったんだ。でも、コウの爺さんが倒れて状況が変わると思ったから、親父にきちんと説明して母ちゃんを引き取って貰った。リベンジには俺だって参加資格あると思わないか?」

 好戦的な目を向けるトオルに思わず口の端が上がる。恐らく、今の自分は他人から見たらとても善人には見えないだろう。

「……確かに、トオルには権利があるな」

「だろー。という訳で、コウが必要としてる情報を教えてくれ。不可能なんてない俺が全て調べてやるからな」

 そう言って笑うトオルは、他人から見たら大言壮語を吐く奴だと思われるかもしれない。だが、軽口の延長だとしても安易にそう言わないことを知っている。

 恐らく、本気でトオルは情報を取りに行く気なのだろう。そして腹を据えた自分も既に逃げるつもりはない。

「本当にいいのか?」

 一歩を踏み出すのは簡単だ。だが、それは戻れない一歩だ。

 だから最終確認のつもりで問いかければ、トオルは笑いながら頷いた。


The End.

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