【78】聖女様の結婚式(9)
それからはてんやわんやだった。
宝玉の奇跡でわたしは人格を取り戻した事になったらしい。
国王夫妻とも面談し、ミドルネームも賜った。
ミドルネームは[エルフィーラ]
王族はミドルネームをつけるのが慣わし。ファルシア王国のご先祖様が神に近い存在とされるハイエルフだったそうで、その威光を忘れない為にミドルネームに[エルフ]をいれるのだという。
だからわたしは
ラフィーネ・エルフィーラ・ファルシア第三王子妃
になるみたい。
ただこのミドルネームはわたしが離縁されれば外される。あくまで王子のオルフェル様の伴侶だから王族の一員として扱って貰えるだけで、彼との縁が切れれば特権も消滅するのは当たり前。
でも元の自分になるだけだから、その事に対する不安はない。どちらかといえば準王族として王族扱いになる方が怖いかも。
国王夫妻は前のラフィーネを大層気に入ってくれていたようだけど、今のわたしも[可愛い]と褒めて可愛がってくれた。特に王妃陛下は
「わたし!娘が欲しかったの!」
自分の子供の嫁ならかえって気を使うかもしれないけど、わたしくらいの立ち位置なら警戒なく可愛がれるそうで……。
「母のように頼りなさい」
不安に押し潰されそうなわたしを励ましてくれたの。
そして……
「8月に王家主催の舞踏会があるのはご存知?
貴方。デビュタントまだでしょ?
その舞踏会へ主賓の一人として招待するから、是非いらして?そうね……二週間前から王宮で過ごしていただこうかしら?わたくしが全面的に貴方を支援いたしますわ!」
「こ……光栄でございます」
此でわたしのデビュタントの舞台が決まった。
15歳の成人から社交界デビューするのをデビュタントと呼ぶ。王妃陛下直々にわたしのデビュタントを応援してくれるとらしい……。
それからオルフェルの生母のオフィーリア・エルフィア・ファルシア第一側妃へも面会した。
終始和やかな雰囲気で面会を終えたが、あまりにも呆気ない感じで戸惑ってしまった
「わたし……嫌われたのでしょうか?」
「母上が?君を?それは無いから安心して欲しい。
母上はね。気を使ったのだよ」
「わたしにですか?」
「いや。ラフィーネにというよりも……王妃陛下にだね。王妃陛下は君の後援者に成ってくれたね。本来はそれは母上の役目だったのだよ」
それは……わたしが安易に返事をして、母上様の役目を奪ってしまったってことかな?
「ラフィーネは心配しなくて良いからね。
王妃陛下としては母上と和解……というかもう争わない意思表示を示したのだよ。ぼくが平民の君を選んで、国王の後継者から降りた埋め合わせになるのかな?」
オルフェル様は色々説明してくれた。
この王国は聖女様がおられるようで、国王やその後継者が聖女様を正妻に迎えるのが慣わしらしいの。
そしてまだ見つかっていないけど、新しい聖女様の誕生を告げる御告げが4年前にあったの。
国王陛下がその聖女様を見つけて正妻に迎えた者を後継者にすると決めたようで、オルフェル様が平民のわたしを正妻に迎えたことで、『国王にはなりません』と宣言したようなものですって!
「つまりぼくは、聖女様や国王の地位よりもラフィーネ、君を選んだということだよ」
甘い眼差しで見詰められ囁かれて、わたしはまた性懲りもなく顔を赤らめる。
オルフェル様が後継者レースから脱落したので、王妃陛下はその意を汲んで、その象徴たるわたしを支援して下さるという。王妃陛下は社交界のドンのような存在だから、王妃陛下が後ろ楯になれば社交界で恥をかかされる事もないという。
わたしに意識的に恥を掻かせたら、それは王妃陛下に喧嘩を売った事となるらしい。だから母上様もわたしのデビュタントを王妃陛下に委ねる選択をしたから、あんなに呆気ない面会だったって話ね。
☆
午前の結婚式もわたしの人格覚醒というオマケ付きだけど、滞りなく終わった。
国王夫妻と母上にも面会を済ませて、夕刻から披露宴が行われたわ。
わたしも何度かお色直しして、オルフェル様に導かれて貴族の皆様にご挨拶して回ったの。人の名前と爵位を一致させるのは大変!後で名前と家門を憶える勉強もするから、今は無理に憶えなくて良いと言ってくれた
「君は傍で微笑んでくれさえすれば、後はぼくが何とかするから」
そう優しくエスコートしてくれる。
皆口々に御祝いの言葉をくださって、今頃わたし実感してる
──わたし……本当に結婚したんだ……
これで[結婚式]パート終わりました。
いかがでしたか?
アイラ(レイア)ちゃんが記憶喪失になってララとなり、それからラフィーネと改名して結婚式!
式の最中に戻っちゃったけど、平民を過ごしたアイラとはまた別の人格でした。
☆
次は[初めて]のパートになります。
初めて……といったらアレですよね(-.-)
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