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【75】聖女様の結婚式(6)


若葉も鮮やかな五月の初旬。


[青い水晶宮]で世紀の結婚式が行われていた。


国王夫妻初め、オルフェル王子の生母オフィーリア第一側妃他、多くの貴族の列席者が見守る中、華やかに式は進んでいた。


長々と伸びたレッドカーペットの上を、白い礼服に身を包んだ青い髪の長身の貴公子オルフェルと、純白の花嫁衣裳でその華奢な身を飾った美しい花嫁が歩みを合わせて進んで行く。


今日の主役の一人、ラフィーネ伯爵令嬢は噂通りの変わった御令嬢だった。仕草や言動が子供のようで、終始ニコニコと笑顔を振り向けていた。


けれどこうして静かに新郎と手を携え歩く姿は、非の打ち所もなく美しかった。実際花嫁のラフィーネ伯爵令嬢本人も美しい顔立ちで、薄化粧された容姿は天使のように清らかで人目を惹きつけた。





前日。国王夫妻をオルフェルと共に出迎えたラフィーネは、たしかに完璧とは程遠かった。貴族令嬢の振舞いも及第点には遠く及ばないだろう。

終始落ち着きがなく、興味が引けば直ぐにそちらへ目を向けた。


ただ国王と王妃、二人の国の代表者の心証を良くするという点では満点に近いだろう!

まだ45歳と若い国王は自身に何の警戒心も抱かず、胸に飛び込んで来た義理の娘となる少女を大いに気に入り可愛がった。


39歳の見目麗しい王妃もその一人だった。


初めはオルフェルの小細工を警戒していたシンシア王妃も、ラフィーネを一目見て『これは演技ではない』と看破した。それに王妃には[真眼]というスキルがある。

これはその者の本質の一部を知ることの出来るスキルで、嘘偽りも直ぐに見破れた。

シンシアの見た処、ラフィーネの鑑定結果は

《ラフィーネ・ルシアン。女性。魔力値512》

こういうものだった。

魔力値は一定ではないので、下二桁はゆらぎのようなもので日々変化する。オルフェルの言う[魔力値500]というのは嘘ではない。

そして大事な所は[聖女]という項目が何処にも無いこと。


義母である王太后に《真眼》を使えば、[聖女]という文言が名前の横に表記される筈だ。オルフェルも《真眼》保持者だ。ラフィーネが聖女では無いという真実を明らかにした上で、結婚に踏み切ったのだろう。

これはオルフェルの王妃へ対するメッセージでもある。

ラフィーネというこの純真無垢な少女を正妻に迎える事により[国王の地位を求めない]と示したのだ。


シンシア王妃もそのメッセージを汲み取り、安心した。

同時に警戒心も無くなり、その分はラフィーネへの好意に変貌した。ラフィーネ自身もシンシアへ愛情を表現したから、シンシアもそれに応えざる得なかった。

というよりもラフィーネを愛おしい存在として認知した。


駆け引き出来ない子供のようなラフィーネが全身全霊で愛情表現して懐いてくるので、王妃も戸惑いながらも母性本能がくすぐられラフィーネを可愛がった。


ラフィーネは左右の手で国王と王妃の両陛下の手を握り、高貴な二人に挟まれるような格好で[青い水晶宮]へと入っていった。

オルフェルは生母のオフィーリアをエスコートした。


[青い水晶宮]を嬉しそうにはしゃぎながら、国王夫妻の手を引き案内するラフィーネ。国王夫妻も実の娘に接するように、柔和な笑顔で引き回されていた。


王家の護衛騎士の面々も、険しい表情の取れた国王夫妻とラフィーネを温かく見守った。国王夫妻の初めて見る姿でもあった。

もちろん義母となるオヒィーリア第一側妃も、ラフィーネを大いに気に入った。これなら夫婦共に余計な政治闘争に巻き込まれなくて済むと思ったからだ。



☆☆



結婚式に戻る。


この日の為にわざわざ駆けつけた[愛の神マーリア]を奉じ、国教でもある[マーリア教]の法王ヨハネス七世は、祭壇の前で佇む花婿と花嫁へ優しい視線をむけた。


祭壇を降りた法王は二人の前に進み出て、簡単な説法を説いて後、指輪の交換をうながした。

新郎新婦は滞りなく指輪の交換をする。


そして法王は二人の永遠の愛を誓う儀式をして、二人に

「愛を誓うか?」と問うた。

新郎は淀みなく

「誓います」と宣言した。

新婦も問われて


「はい!オルフェルが世界で一番すごーく大好きだから、たくさんちかいます!」


そう大きな声で宣言した。

ここで多少の失笑も漏れたが、それよりも誰にともなく拍手が起こり、やがて会場中を包み込むような盛大な拍手が鳴り響いた。


法王が右手を挙げると拍手は鳴りやんで、一瞬の静寂が訪れた。


祭壇の上には宝珠の形をした、西瓜(スイカ)程の大きさの半透明な桃色の宝玉が、厚みのある白いクッションの上に置かれていた。法王が微笑みながら頷くと、二人は指先を重ねるように宝玉へ手を置いた。


宝玉は魔力によって光る。


この王家伝来の宝玉は聖女の力によって更に光を増すとされていた。


新郎新婦の手が置かれた宝玉は金色に耀いた。

これは二人の魔力というよりも魔力値3万もあるオルフェルの魔力が顕す光だと、誰もが思った。


確かに光は美しいが、王都中を覆ったという前聖女が(あらわ)した奇跡の光と比べたら、あまりにも大人しかっかたら……。

それはこの成人したばかりの少女が、あたかも聖女ではないと告げているようであった。



「「「おおおー!!!」」」



会場中……どよめきが起きる。


金色の光の一部は、まるで意思を持ったように動き出しラフィーネの体を包み込み、少女の体が黄金に耀いていたからだ。


やがて光も収まり、二人は見詰め合っていた。



ふと……。



花嫁が小首を傾げた。


そしてオルフェルを、目を大きく見開き食い入るように見詰めた。


瞬間。誰にも分かるくらいに花嫁の顔が真っ赤に染まった。


急にもじもじして俯くと、上目遣いでオルフェルへ小さな声で聞いた






「ここは……何処でしょうか?」







宝珠の形は◯ラゴンクエストのスライムのようなものね。


ピンクだからスイカではなく、大きな桃だね。

桃太郎が生まれるかも?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 記憶を失ったせいで、魔力も500になってしまったのかな… 「聖女」の称号が付いてないのは疑問に感じますね。
[良い点] やっとアイラちゃんに戻ったのね。 良かったよかった。 [気になる点] けどこの現状どう収めるのやら、 あわわわ。 [一言] お姉さま許して下さい。 今後はアイラちゃんを、 あまりいじめない…
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