【70】聖女様の結婚式(1)
ここは湖の畔の宮殿。
[青い水晶宮]と呼ばれる青と白を基調とした美しい宮殿である。小高い丘の上に立ち湖に映るその姿は優雅で、今は亡き先々代聖女の王妃が愛して止まなかったという。
その宮殿に働くメイドが一人いた。
15歳を迎え、成人したばかりの少女の名前はララと呼ばれていた。男爵家の三女で、このお城に住み込みで働いている。焦げ茶色の頭髪は緩やかにウェーブが掛かり、茶色の瞳は大きくクリッとしている。15歳にしては背が低く、性格も子供っぽい。
髪は肩甲骨辺りまで伸びて、三つ編みにして垂らしてある。そして特徴的な大きな丸眼鏡をしている。
眼鏡には度は入っていない
「ララ!殿下がお呼びだよ!直ぐ仕度をして向かいなさい!」
「はーい!」
ララは先輩メイドに促され、身嗜みを整えて貰って、殿下……この宮殿の主、オルフェル第三王子殿下の元へ向かう。身嗜みと言っても髪を梳かしてエプロンを外して、メイド服のシワを直すくらい。
ララは小走りに廊下を走る
「こら!ララ!廊下を走らない!」
「はーい!」
ララはにこやかに廊下で遭遇した先輩メイドへ返事を返して、速度を緩めずそのまま小走りで通り過ぎて行く!
「こら!ララ!走らない!ダメだってば!」
「はーい!」
そんな注意は何のその、ララは廊下を曲がり殿下の指定した部屋の前に現れた。扉の前には二人の護衛騎士が待機していて、通り過ぎたララに
「ララ様!殿下がおられるのはこの部屋です!」
「はーい!」
ララはにこやかに手を上げると、Uターンして扉の前に立った。ドアノックの金輪をコンコンとすると中から扉が開けられた。
ララはニコニコしながら部屋に突入する。
挨拶も何もあったものではない。
そこは応接室で長テーブルの奥には青い髪と瞳の貴公子然としたオルフェル第三王子殿下が座っている。
その両脇には身なりの良い男達が、ララがを見て微笑む。
「でんかぁー!」
ララが呼ぶとオルフェルは
「やぁララ。良く来たね。さあ。ここにお座り」
「はーい!」
ララはオルフェルの真っ隣の豪華な椅子に座る。
オルフェルはララの頭を撫で
「ララ。今日来て貰ったのはね。新しいパパが来てくれたからだよ」
「新しいパパ?」
ララは首を傾げる。
ララは直ぐ隣でテーブルの側面にいる、茶色の髪の壮年の男を見る
「パパはパパだよ」
ララは椅子を降りると、その男に抱きついた
「ララ。いい子だね。
でもララは今度侍女になるんだよ。オルフェル殿下のお付きの侍女になるから、パパの爵位では役不足なんだ。
だから……」
男爵は目の前の銀髪青目の30代の男を見た
「このルシアン伯爵が新しいパパだ。
ご挨拶してララ」
ララはルシアン伯爵を見つめる
「新しいパパ?」
「よろしくララさん。わたしはラル。
ラルフォード・ルシアン伯爵だ。
今日から君の新しいパパになった。
前のパパのバランシア男爵にも以前のように接しても大丈夫だよ。どちらも君のパパで、君を守るからね」
「じゃあ新しいパパはラルパパ。
ララのパパは……なまえ、トーマス・バランシアだから……トーパパ!えっとそれと……ガイパパ!」
「ガイパパって誰だい?」
殿下はララに尋ねる
「ガイパパはね、ガイパパなの!
えっとね……誰だっけ?」
ララは首を傾げる。
そこへ薄い水色の髪の貴婦人が部屋に入ってきた。
オルフェルはそんな彼女を見て
「ララ。紹介するよ。彼女は君の新しいママだ。
そこのラルパパの奥さんでもある。
ララはずっとここで暮らすから、侍女頭としてララの面倒も見てくれる。頼っていいんだよ」
「わたし!ララ!」
ララに伯爵夫人は微笑んだ
「わたくしはエネシー・ルシアンでございます。
この宮殿ではどうぞわたくしをお頼りくださいませ。
これからはララ様とお呼び致します」
「じゃ!エネシーだから、エネママだね。
よろしくエネママ!」
「よろしくララ様」
「こちらこそ!」
ララは立ち上がって、身を屈めて挨拶をした。
それから殿下の方を見て笑った
「殿下ぁ!新しいママとパパありがとう!」
「どう致しましてララ」
オルフェルはララを愛おしそうに見て笑った。




