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【62】聖女様と二つの国(2)


「なんだ?お前達。見慣れねえ顔だな?」


ギルドの休憩用の待合テーブルに座る二人連れに、ギルド常連の冒険者が声をかけた。

二人組はその男を見て


「チョイと『流れの』ってやつさ。

ここで少し稼いだら、また別の場所に行くつもりだ。

長居するつもりもねぇ」

「俺達はこれからカムスに行くつもりだ。

お前さん常連だろ?

久しぶりにいい女を抱きたくてね。

良い店があったら教えてくれねぇか?」


「ああ。任せときな」


常連客は二人組にカムスの街のオススメの店を教えた


「ところでよ。さっき丸い眼鏡を掛けた女の子見たんだが?」

「ああ。ガイさんの娘さんだ。

元は妹さんの子供らしいけど、母親の妹さん亡くなったようでさ。養子縁組みして育てているみたいだな。まるで本当の親子のように仲良しだぜ。俺の実の娘ときたら『父さん!臭いから近寄らないで!』だぜ。泣けてくるよ」


常連はオイオイと泣き真似をする。

流れの冒険者は


「いやね。こんな荒くれた場所に不釣り合いだって思ってよ。あの丸眼鏡ちゃん」

「ああ。確かにそうだな。天使だぜアイラちゃんは!

何故か何人かの冒険者には敬意を払われているしな。

俺達の中じゃ、彼女、何らかのレアスキル持ちじゃねぇかって話だ」


「レアスキル?」

「ただの噂だよ。俺も詳しい事は知らねえ。

ただ時々ギルドマスターの部屋に父娘(おやこ)で招かれっからよ、何かあるだろう?ってさ。

俺でさえまだ一度もギルド長室に招かれたこと無いって云うのにさ」


「成る程……ね。

ありがとあんちゃん!今の話。面白かったぜ!」

「どういたしまして、だ!

また何か知りてぇ事が有ったら聞いてくれ、俺はいつでもここにいっからよ」


常連客はそう言って、別の冒険者仲間のところへ行った。

二人組の冒険者はそれを見届けると、額をあわせて声を潜めて


「どう思う?」

「匂うな」


「お前もそう思うか?」

「金の匂いがプンプンする」


「決まりだな」

「ああ。決まりだ」



二人は連れだってギルドを後にした。




──二日後──




アイラ達は下校していた。

シェリーちゃんとソフィちゃんと別れ、ジャンと二人きりになる。ほんの五分くらいだ


「なあ。アイラ。あのさ」

「なに?ジャン」


「願い事はもう済んだ……かな?って思ってさ」

「願い事?」


なんだっけ?


「ほら!あれ……領主様との勝負に勝ったらってやつ」


その瞬間。アイラは顔を赤くして


「何も無いわよ!バカ!」


そう言って、ジャンを突き飛ばして走って行った。

ジャンは尻餅を付いた腰をあげて


「なんだ?あいつ……顔を赤くして……。

もしかしてまた怒らせたか?やべ!」


ジャンは頭を掻きつつ、走り去るアイラの背中を見送っていた


「また。明日。取り敢えず謝っとこう……」


ジャンも家路に付き、分かれ道でアイラとは違う道へ曲がった。



アイラは家路に就く。



アイラの家はジャンと別れる道から家並みが途絶え果樹園が広がり、また集落にでる。

その集落には学校に通う子供がいなくて、この数百mがアイラの一人になる時間だ。ただ学校は昼前に終わるし、今も12:30を少し出たくらいで、治安は良い。


アイラが薄い革製のカバンを背中にしょって歩いていると


「済みません。お嬢ちゃん」


声をかけられた。

果樹園の方から人の良さそうなオジサンが現れる。

オジサンはアイラの前で警戒を解くようにかがんで、目線を合わせる。3mは離れているのも安心させるためだろう


「なんでしょう?オジサン」

「いえね。この道を行けばガイさんっていう人の家があるって聞いたのだけど、この道で合ってるかな?

木だらけで、なんだか不安になってね」


「ガイさんに何の用ですか?」

「いえね。力仕事ならガイさんに頼めって言われましてね。なに。ギルドを通すような危ない仕事じゃなくて、一日荷運びを手伝って貰えないかと思いまして……」


なら、丁度良かった


「わたしガイの娘です。今、お父さんが家に居ますので、折角ですから御案内いたしますね」

「ああ!本当かいお嬢ちゃん。そうして貰うと

あ・り・が・た・い・ね」


急に声を低くしたので、アイラは良く聞き取ろうと前に出ようとしたら


──えっ!なに?


視界が急に真っ暗になる


──袋?


どうやらアイラの頭から大きな袋を被せられたらしい。

足元まで全身が覆われる。


後ろにももう一人がいたの?


──拐われる!


アイラは自衛のために大声で助けを呼ぼうと口を開き掛けたその時



グヘッ



腹部に強い衝撃と痛みを感じ、前屈みになり胃液が逆流する。おそらく当て身を食らったのだろう



アイラの意識は急速に落ちていった。






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