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【58】聖女様と初恋(6)


結婚……って


これがわたしがただの平民だったら、降って湧いたようなシンデレラストーリーに喜ぶかも知れない。

反対にアーサーが王子様じゃなく平民だったら、垣根無くすんなり良い返事も出来たかも知れない。


わたしもアーサーが好きだよ。


たぶん出会った時から好意を持っていたと思う。

初めは凄く生意気で嫌なヤツだと思っていたけど、一緒に露店を巡って楽しかったし、どんどんわたしに優しく丁寧に接してくれるし、ずっと紳士だったし……何より顔が好みだからね。


だからアーサーと別れてからも、貴族って知っているからもう会わないし関わらないって決めていたけど、毎日貰った髪飾りを取り出してはアーサーを思い出していた。


それが突然学校に現れて、自宅訪問されて、おまけにジャンと決闘して……わたしにプロポーズ。

所々アーサーに思わせ振りな言動があったけど、まだ子供だからとそんなに警戒もしていなかった。



アーサーって王子様なんだよね……。



わたし……あの日。アスタリス侯爵邸を出た時、誓ったの。


もうあの場所には戻らない。

侯爵令嬢レイア・アスタリスは死んだ。


そして庶民として生きる時にも、貴族、特に王族には関わらないと決めていた。


なのに……その全てがひっくり返ってしまう。


わたしは二の句を告げずに、押し黙るしか無かった



「アイラは……ボクの事が嫌い?」


わたしは首を激しく振る


「ボクとの結婚は嫌?」


また首を振る。

嫌じゃない。嬉しい。出来れば頷きたい。

でも理性が押し止めている。


こうなったら侯爵令嬢であることを打ち明けた方が良いかも知れない。けれどわたしが4歳も歳上の17歳ってバレるし、アーサーはアイラが好きだからホントのわたしに幻滅するかも知れない。


魔法が使えること王家にバレたら、どう転がっていくのかも分からない。


もう……どうしていいのか……混乱してる


「アイラ。ボクの話を聞いて」


わたしは頷く


「ボクは君が好きだ」


わたしは頬を赤らめる


「君がもし、誰かの物になるのは耐えられない」


わたしは更に赤くなったと思う


「本心ではボクは身分を捨ててでも、君と生きたい」


それは無理。

それにこんなに責任感の強いアーサーなら、きっと素晴らしい領主になってくれると思う。

だからわたしは首を振る


「例えアイラが今断っても、ボクは何度でも君の元へ行くよ。良い返事を貰えるまでね。

ボクはジャンにはアイラを渡せない」

「わたしも嫌よ!比べるのもおこがましい!

わたしは断然アーサー派よ!

………………あっ」


やらかした


ぷぷぷってアーサーが笑っている


「それは……了承って取ってもいいのかな?」

「それは……色々と……相談してみないと……」


少なくとも助けてくれたガイ父さんを蔑ろには出来ない。


「そうだね。直ぐの返事は酷だね。

今日まで会うのを待ったんだ……少し待つくらい造作もないさ。ボクは本気だからね。

そうだな。一月後。御屋敷に招待するから、是非来てほしい。そこで返事を聞かせて?」


えっ?あの屋敷に……


「どうしたの?嫌なのかい?

無理強いさせたかな?」

「いいえ。その。御屋敷が怖くて……」


「怖い?どうして?」

「何かお嬢様が閉じ込められて、毒を盛られて殺されたと聞いて……。怖いなって……」


当の本人は目の前にいるけどね。

お母さんが心配そうな顔でわたしを見てくれている。

あの侯爵邸での悲惨な日々は、無かったことには出来ないもの


「そうだね。まだ生きてるかどうかは秘密だけど、あんな悲惨なことは二度と起こさせないと誓うよ。

15歳直前までは生存を確認出きるけど、それ以降の足取りは掴めないんだ。逃げ出したって噂はあるけど、11歳の終わりから屋根裏部屋に閉じ込められていた。しかもどうやら毒を飲まされ続けたらしくてね、とても逃げられる体力も力も無かったと思う。えっと……今のは秘密だから、口外は控えてね」


随分調べが付いているみたい


「前の領主代理と称する輩が来るまでのお嬢様はとても愛らしくて、将来とても美人になると評判だったらしい。

でもその代理が現れ、お嬢様も消えた。

生きていたら17歳。

本来なら華やかな社交界で、綺麗なドレスを着て、恋をして楽しく過ごしていたと思うと……ボクはお嬢様の人生を滅茶苦茶にしたアイツらを許せない。その償いと言ってはなんだが行方不明のお嬢様や、ご両親の前侯爵のお墓の前で、この領民を幸せにしようと誓ったのさ……どうしたの?アイラ」


わたしは泣いていた。


少しでもわたしを気に掛けてくれた人がいた。


そしてその人が目の前にいる。


わたしの涙は止まらなかった……。






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