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【53】聖女様と初恋(1)


馬車が止まった。

どうやら我が家に着いたみたいだ。


殿下は降りる前に


「これは学校で知り合った君の家に、急遽訪問が決まった事にしてね。近所には護衛達がそれとなく知らせてある。だからはじめからアイラ目当てだって口を滑らせてはダメだよ。ボクのお気に入りだって分かったら、君は拐われるかも知れないからね」


「怖いわ!訪問自体無かったことにできないの?」

「この状況で?」


馬車の扉が開くと、騎士の皆さんが勢揃いしていた


──うん。無理だわ


わたしはまたアーサーにエスコートされて、家の前にたどり着く。もうドアが開いていて、アマンダ母さんが出迎えてくれていた


「お母さん。ただいま。

御領主様が是非、一般の人々の生活を見たいと仰って、我が家を選んで下さりました」

「とても光栄なことでございます。

末代までの誉れとなることでしょう。

わたくし。アマンダと申します。

アイラの母でございます。」


アマンダ母さんが、堅苦しい挨拶をする。

アーサーは


「宜しくアマンダ。少し世話になるよ。

そういえばもう一人のお母さんには、赤ん坊が産まれたらしいね。会えるのを楽しみにしていたよ。

申し遅れた。

わたしはアーサーだ。宜しく頼むよ」


「小さな家ですが、どうぞゆっくりなさって下さい」


アーサーを招きいれた。

家に入ったとたんにアーサーは


「堅苦しい挨拶は終わり!

玄関先では街の人々の目があるからね。仕方ないけど、ここでは無礼講でいいよ。敬語使ったら不敬罪だぞ、アイラ」


「何よそれ!お母さんも不敬罪になるの?」

「母上様は、もちろんならないさ」


「ではわたくし。お言葉に甘えて。

堅苦しくない敬語にします」

「そうしてくれると助かるよアマンダさん。

ここまできて堅苦しいのは、正直つかれちゃうよ!」


おや?少し()が見えてきたねアーサー。

まだ13歳。されど13歳。

領主には若すぎるけど、それなりに背伸びしてたんだね。


偉いね。頑張っているんだね。


うんうん


「アイラ。なんだそのジト目は?」

「えっ?そんな目してないよ。ちょっと感慨深くて……」


「まあいいさ。それよりも赤ちゃんいるんだろう?

会わせてよ」

「スッゴい可愛いんだから!持っていかないでよ」


「持っていかないよ!姉弟一緒だなんて!」


──ん?今……なんと?


なんでわたしもセットなのさ?


「領主様。こちらの部屋になります」


わたしがツッコミを入れる前に、母さんが誘導したの。

ドアを開けるとそこにはベッドに寝たあかん坊のルイ君と、なんだかガチガチのノルン母さんがいた


「は、は、は、はじめまして、あたし、えっと、なんだけっけ?」


緊張しすぎて、自分の名前飛んでるよ!


「ノルンさんですよね。

はじめまして。一応名目上は領主のアーサーです。

取って食べたりしないから、安心して……」

「はっ!はあい!ありがとうございまする!」


ノルン母さん。あんなに怖そうなギルドマスター平気なのに、このボンボンには弱いみたい。

どういう精神構造しているんだろう?


それよりもアーサー。

物珍しそうに赤ん坊を見ている


「この子の名前は?」

「る、る、るルイです」


「ルルイ君?」

「ルイよ。わたしの弟なの」


間違って憶えそうだから、訂正してあげた


「アーサー。触ってみる?」

「いいの?大丈夫かな?起きないかな?泣かないかな?」


「痛くしなきゃ大丈夫よ!」

「ど、ど、どうぞさわ、って下さい。

そうして、もらうと、う、う、嬉しいです」


「だそうよ!アーサー!」


アーサーは恐る恐る指先で、ルイのぷんぷくりんの頬を撫でる


「すごい。柔らかくて……温かい」


アーサーは頬から離した後も、しばらく指先を見ていた。


アーサーはノルンの部屋を出てから、わたしを見て


「ノルンさん。随分若いね。何歳なの?」

「17歳」


同い年とは言えない


「17歳か?アイラにとってはお母さんというよりも、お姉さんって感じかな?」

「うん。そうだね。お姉さん扱いしてる。

でもノルンさん。赤ちゃん産まれたら、ちゃんとお母さんしているよ。

それと……どう?ルイ君!可愛いかったでしょう?」


「すごく可愛いかった。

大事にしないとな。

弟になるかもしれないしな?」


──ん?弟になる?


どういうこと?


あっ!そうか!弟のように可愛がってくれるってことか!……な?


「領主様。クッキーが焼けましたよ。

お茶にしませんか?」


アマンダさん!もうお茶の準備を終えている。

山盛りのクッキーから、騎士の方々が手に取っている


「皆さん!毒味は済みましたか?

毒が混じってないか、しっかり味わってくださいね」


ブラックジョークを言っちゃてるよ!家のお母さん!


「領主様もどうぞ。皆さん毒味してくれましたから、安全ですよ」

「どれどれ。いただこう」


アーサーはクッキーを一枚手に取り口にいれると、顔色を変えた


「な!なにコレ!美味しい!」

「でしょうー!アマンダ母さんのクッキーは絶品なんだ!」


身内が作ったクッキーが褒められると嬉しいね。

お茶の時間を楽しんでいると、入り口の方で騒ぎが起きた


「何事だ」

「はっ!少年がひとり。暴れてまして」


アーサーの問いに、護衛騎士が答えた。


ここにまで声が聞こえる!

わたしの名前を呼んでいる!


もう!なにやってんのよ!



『ジャン!!!!!!』






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