【52】聖女様と領主様(4)
学校の教室。
少年少女は緊張しながら授業を受けている。
何故ならここに校長も副校長も顔を出しているから。
そこへ別の教員が教室の中へ入り、校長へ何やら耳打ちして、校長が副校長に耳打ちして、副校長が担任の女教師を呼んで耳打ちして、その担任の先生が
「えー。皆さん!領主様はお帰りになられるそうです。
皆さんの授業風景に大変感銘を受けた様子で、褒めて下さいました。
それで全校生徒へキャンディのお土産が有るそうなので、皆さん下校前に配りますね」
「「「「やったぁあ!」」」」
みんな口々に喜んでいる。
砂糖が高価だから、キャンディなんて庶民の子供には最高の贅沢品!
半年に一個。舐められるか?ってくらい!
校長も副校長も教室を出たので、安心したのか、緊張の糸が切れてちょっとしたお祭り騒ぎになった。
窓の外を何気無く見たシェリーが叫ぶ
「きゃー!アイラちゃん!王子様のような御領主様にエスコートされて、馬車に乗ったわ!」
「「「えっ!本当!」」」
皆が一斉に窓辺に寄る。
シェリーがうっとりして!
「愛が目覚めたらどうしよう!
あの恋愛音痴のアイラちゃんに春が来たかも!」
大仰に手を天に伸ばす
「クソッ!」
「こら!ジャン君!戻りなさい!」
先生の忠告を無視して、いきなりジャンが教室を飛び出した。
アイラを収納した馬車が、走りだした。
少し遅れてジャンが学校から出て、走って馬車を追いかけていく!
「一人の女の子を巡る争い!
ああ!いたいけな鈍感美少女の心を射止めるのはどっちかぁー!」
シェリーが芝居掛かった口調で、口上を述べた!
☆☆
アイラを乗せたアーサーの馬車は、一路アイラの家へ向かう。その車内のこと
「あの。アーサー。
わたしの家に行ってどうするの?」
「領地の調査だよ。一般家庭はどのような暮らし振りをしているか?とかね」
「わたしの家に来ても別に何もないよ。
それに突然行ったら驚くかもしれないし……もしかしたら外出しているかも?」
「それなら心配ない。もう許可は得てある。
騎士が事前にアイラの母君に、報告を済ませてあるよ。
そしてもしかしてアイラ……まさか……」
「なによ……」
いきなり雰囲気が変わったので、わたしはたじろぐ
「これが丸っきりの偶然だと思った?
たまたま今日突然訪ねた教室に、アイラがいたとでも?」
「違うの?」
「もちろん!君に会う為にわざわざ足を運んだのさ。
君の家も家族も学校も学年も全て知っている。
調べたからね。
だから今日は君を驚かせようと思って、君が学校にいる時間帯を狙って突入したのさ」
えっとじゃあ。
何もかも折り込み済みってこと?
「どう?アイラ!驚いた?」
「……もちろん」
──驚いたわよ!
今の話もね!
「じゃ。本当にわたしに会いに足を運んだの?」
「そうだよ」
もしかして……わたしがレイア・アスタリスだってバレた?
ううん。違うわ。そんな気がする。
でもどうして?
こうして家に向かっているとなると……
「じゃあ。わたしに会いにきただけじゃなくて、わたしに用もあって来たの?」
「そう。君にあの場所で別れてから直ぐに調べて、君の住んでる所はわりかし簡単に分かったよ。
なあに。君のお母さんが品物を卸した御店に問い合わせしたら、直ぐに教えてくれたよ」
ああ。なるほど。
そちらからの情報か?
盲点だったわ!
「本来はもっと早く会いに来たかったけど、こちらにも色々事情があってね。ようやく全て整えてアイラの元へ来たってわけさ」
「あの。わたし……いまいち事態が掴めてなくて。
もう!面倒臭い!単刀直入に聞くわ!
わたしに何の用なの?」
ふっ
アーサーは不適に笑った
「それは……『蓋を開けてからのお楽しみ』ってね」
少し短いですが、これで[領主様]パート終わりました。
思いがけないアーサー君の登場でしたね。
☆
ごめんなさい。ちょっと勘違い。
アイラを好きなアイツがやらかすのは、次のパートでした。
バカですからね。




