【40】聖女様と救出劇(9)
パーティーは救出したメンバーを連れて、無事カムスの街へ帰還したわ。
箝口令を敷いたせいか、コルメスのパーティーの遭難と救出はそんなに広まっていなかった。
あれからアイラはギルドマスターの爺の要請を受けて、ダンジョンを最下層まで潜った。そして最後まで魔物一匹とも出合わなかった。
ダンジョン内の魔物が全て消え去っていた。
でもコアを壊した訳ではないからいずれ魔物も復活して、元のようなダンジョンに戻るかもしれない。
ダンジョンの危険性が無くなったので、カムスの街にもそういう報告がなされて、魔物暴走を警戒して敷かれていた戒厳令が取り払らわれた。
わたしは今カムスに帰還して、ギルド長室で座っていた。同行したメンバーと助けられたパーティーも一緒だった。
それに所長セイバスと秘書のリンを加えた14名の面々が、ギルド長ノーフィスの言葉を待っていた
「皆。ご苦労であった。そして無事で何よりだった。
そしてアイラ。お前さんには改めて御礼を言わせて貰う。アイラが居なければこの救出は土台無理な話だった。
先程別の偵察隊が周辺の探索から帰ってきたが、魔物とは普通に遭遇したという。
だが我々はダンジョンへの往復30㎞と、魔物の巣窟たるダンジョン内でも一匹たりとも遭遇しなかった。
そしてフロアボスも悉く消えていた。
コレはもはやアイラの桁外れな[魔払い人]の能力が証明されたに他ならないだろう」
ここでいきなりわたしを除く面々が立ち上がって、わたしに深々と礼をした
「えっ!どうしたんですか?皆さん。
頭を上げて下さい!わたしの能力は凄いかもしれないけど、わたし自身はただ座って移動しただけで大したこと……」
「アイラ。お前がどう言おうと父さんの親友が救われたのは、アイラのお陰だ。コレは身内を抜きにしても人として礼を言わせて貰う。有り難う」
ガイの後に、ゴメスさんがわたしの手を握り
「こうして生きて仲間に会えたのもアイラちゃんのおかげだよ。ジャンを褒める前に、俺はまずアイラちゃんに御礼を言いたい。
俺達を助けてくれて有り難う。アイラちゃんは誰が何と言おうが俺達の命の恩人だ。感謝しても仕切れない」
ゴメスとノルンも含めたパーティーが、わたしの元に寄って来て次々とハグしてくれた。
爺はそれを見届けると
「皆。アイラの能力は予想を遥かに越えて桁外れの力を要しているのは、身を持って感じることが出来たと思う。
ついてはこの[魔払い人]の能力が外に漏れれば、アイラ自身にも危険が及ぶかもしれない。
幸いというかここにいる者しか、アイラの能力は知られていない。だから俺にはコレしかいえねぇ。
『アイラの身を守るために、秘密厳守を頼む』と……」
ノーフィスが頭を下げると、皆口々に同意した。
こうしてこの騒動は終息した。
ゴメスパーティーは仲間が一人動けなくなった所を助けられた事にした。魔物の集団に襲われたが、それはたまたま群れていたに過ぎず、懸念されていた『魔物の大量発生は無かった』と結論付けされた。
そしてわたしは一人だけ、ギルド長室に残された。
ここにはガイも所長もリンさんも同室をゆるされず、爺と二人きりになった。
爺はその厳つい顔を更に厳しくして、わたしをじっと見詰めた
「で。アイラ。お前さんは一体何者だ?」
「どういう事でしょう?わたしはガイに拾われ助けられた、元孤児に過ぎません」
「そういうのは止してくれ。
お前さん……貴族じゃねぇか?
となれば……アスタ……」
「それ以上は言わないでください。
わたしはそんな人知りません。
知っていたとしても、その人はもう死んでしまったか、戻りたくないと思います」
コレは爺にはわたしの正体を明かしたようなもの
「そうか……どうやって髪や目の色を変えているのか知らねぇが、本人がそれを望んでいるのならもう何も言わねぇ。見た目が随分と幼く見える事もな」
「どうして……分かったのですか?」
ここは聞かずには居られない
「ああ。他の奴なら騙せても俺には通用しねぇ事もある。アイラ。ゴメスに蘇生魔法使っただろう?」
──思い切りバレてる
「それだけじゃねぇなアイラ。
[幻のポーション]なんて嘘っぱちだ。全部お前さんが治してくれたのだろう?」
どうして……そこまで?
「いやな。ちょいとお前さんらが寝ている隙にその[幻のポーション]とやらをちょっくら拝借して舐めてみたのよ。ところがどうだ?ポーションなんて嘘っぱちの只の苦い水じゃねぇか?俺の無数の古傷一つも治せやしなかった」
もう言い訳は効かなそう
「そういう目で見れば、疑いも深まるっつうもんだ。
あの全身の傷や骨折を治しちまうポーションはもう無くなる筈なのに、救助されたメンバーに惜し気もなく使っただろう?それも全てアイラが飲ませた。
それはポーションの効果と思わせて、皆に治癒魔法を使ったと思えば納得もいく。
軽傷のパンナにも使っていたし、何よりゴメスだ。
アイツの死は俺が確認した。ポーションでどうにか出来るもんじゃねぇ」
そしてギロリとわたしを睨み
「で。もう一度聞く。貴族の御令嬢の事はもういい。蒸し返すつもりもねぇし、アイラ本人の問題だろうからな。
で。俺の聞きたい事は一体全体……お前さんは何者だってことさ」
コレは……上手く逃げ切るなんて無理そう。
百戦錬磨のギルド長に掛かれば、わたしの嘘なんて一発で見抜かれちゃうよ!




