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【26】聖女様と冒険者(2)


わたし達はローレンの南街の冒険者ギルドを後にし、馬車を走らせ冒険者の街カムスに入った。


馬車のままカムスの冒険者ギルドへ向かう。


カムスは周囲を魔物の襲撃に備え、塀で囲って更に堀まで巡らせている。居住する者は少ないけど冒険者ギルド支部を中心に武器、防具、道具、食事処、宿屋、酒場、情報屋、様々な店や施設が揃っている。

男性冒険者相手のいかがわしい店もあるわ


「なんだ?いったい?」


わたしの目の淀んだ視線にたじろぐダン。

わたしがチラッと横目でそのお店を見やると慌てて


「父さんはそんな所には行っていない!」

「昔。良く俺が連れて行ってやったじゃないか!」


「マスター!それは結婚する前の……」

「ふーん。そーなんだー。お母さんに言いつけよー」


「こらっ!違う!誤解だ!」


ちょっと緊張し過ぎだったから、からかってほぐしてあげた。ノーフィスが乗ってきたのは意外だった。ダンはそんなお店にはいかないと思うけど、別に行っても構わない。浮気さえしなければね。


冒険者は日々命を懸けているから、ついついこういう、いかがわしいお店で発散させると聞いた。冒険者の奥さんも元冒険者が多くて、離れた南街にいたりするから理解があって、こんなお店にたま(・・)に通うくらいは大目に見てくれるらしい。

他の女冒険者と浮気してイチャイチャする位なら、むしろお店の玄人さんを相手にしてもらった方が安心するらしいわ。


そしてギルド支部に付いた。

支部というのはローレン管轄ギルドの支部ってこと。つまりは南街ギルドの出張所みたいなところね。

でも規模はこちらの方が大きい。宿屋等が許容オーバーした時に人員を受け入れる宿泊所もあるし、食事処もあるから大きいの。ちなみに宿泊所は個室は少なくて、大部屋で何人も雑魚寝出来るようになっている。


地下には訓練所も有るみたい。


この冒険者ギルドのトップは南街のトップも兼ねるギルドマスターのノーフィスだが、ここには不在時のトップである所長がいる。セイバスという見るからに事務畑出身の感じがする、40代の灰色の髪の男でスーツをビシッと着こなしていてね、所長というよりも執事といった方がしっくりくるかも。


そのセイバスが出迎えて、更なる詳しい状況説明をしてくれた。


ダンジョン攻略中に突然魔物が湧き出した。瘴気が突然濃くなりそこから魔物が大量発生してダンジョンに満ち出したという。メンバーが血路を開いて逃がした仲間が一人、このギルド支部に駆け込んで来て発覚した。


これは典型的な魔物暴走(スタンピート)の前兆候。

魔物がダンジョンを満たせば外に漏れ出すか、最悪集団で村や街を襲う。今までも瘴気が突然濃くなり、魔物が何もない瘴気だけの空間から湧き出た現象は報告されている。


だから……


「もう諦めろと云うのか?」


ガイが声を低くする。

ガイは分かっている。この状況は絶望的だ。魔物暴走に巻き込まれて生きていられるとは思えないし、助けに行ったら、救出チームも無事に済まないだろう。

もちろんガイは助けに行きたいが、冒険者だからこそ己の分をわきまえているし、現実的に考えて助け出すのは無理だ。


それよりも、もし魔物暴走(スタンピート)なら、この街の防備を固め備えなければならない。時には瘴気が突然消えて、魔物もそれ以上増えず空振りに終わる時もある。

だがそれを当てにするのは無理だろう。


魔物の群れに、引退したようなガイがノコノコ出て行っても自殺するようなもので、ガイも家族を残して無駄死には出来ない。ましてや救出隊を募っても、更なる二次災害が起こるだけだ。


もう詰んでいる。


後は[諦める]という決断をするだけ。

ガイはただその為の気持ちの整理をするしかない……。


ギルドマスターのノーフィスは、そんなガイの気持ちを察した


「ガイ。お前さん位の冒険者ならわかるな。

この状況は絶望的だ。

だが……決断は俺の仕事だ。

そして俺はギルドマスターとして、より多くの者を救う立場にある。危ねぇ橋は渡れねぇ」

「危なく無かったら、渡ってもいいのですか?」


ここでいきなりアイラが口を挟んだ。

ノーフィスが水を差されて鼻白む


「何を言ってる?これはガキのお嬢ちゃんが口を出せる案件じゃねぇ!」

「ガキはともかく……口を出せる案件だと思います」


「出ていけ!」


ノーフィスは立ち上がり怒鳴りつける!

アイラは中年筋肉親父の狂暴な顔にも眉毛一つ動かさず、真っ直ぐノーフィスを見詰めている。

ノーフィスは暫く凄い形相で睨んでいたが、ドカッと座り溜め息を着いた


「大した玉だ。俺にビビらねぇとは……。それに免じて話だけは聞いてやる。話せお嬢さん」


お嬢ちゃん(・・・)からお嬢さん(・・)に格上げされたアイラは答えた


「わたしは[魔払(まばら)(びと)]だと思います。わたしの周りに魔物は寄ってきません。それどころかわたしが近付くと逃げちゃいます。

わたしなら。力になれると思います」


「それは本当か!」


ノーフィスが再び立ち上がって叫んだ!






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