【25】聖女様と冒険者(1)
わたしは今。冒険者ギルドにいる。
お父さん……というよりも冒険者ガイの隣にちょこんと座っている。髪と瞳はアイラ仕様に戻し、助手として傍にいる。
ギルドマスターはそんなわたしを明らかに迷惑そうにしていたし、苦言も洩らしたけどガイが押しきった。
ジャンはいつになく真面目な顔をしている。
目の周りが赤いのはきっと泣いていたからだろう。
ギルドの受付は7:00~19:00までだけど、ギルド自体は24時間年中無休だ。何が起こるか分からないからその対応が必要でしょ?。
だから職員の何人かは泊まり込むみたい。
今日のこんな日の為に……。
ジャンの父ゴメスを含むパーティーがダンジョンで消息を絶った。ジャンの父親の冒険者職は剣士。腕はそれなりに立ち、30歳半ばでベテランの域に入り信頼も厚い。
ガイとは親友だけど、歳上のガイをいつも立ててくれる空気の読める、気立ての良い男。
ジャンも見習って欲しいくらい。
でも若い頃は随分と粋がっていたらしく、ガイとは反りが会わなかったようだけど、何度かパーティーを組んで助けたり助けられたりで自然に仲良くなったみたい。
先ほど冒険者ギルドに、森の中にある冒険者の街[カムス]のギルド支部から知らせが入り、それを直ぐ家族のジャン親子に知らせが行ったのだ。
ここから[カムス]までは、半日行程。
ただ道は整備されて馬車も使えるし、カムスまでは魔物は殆んどいないし、いても弱い。道中護衛さえ揃えれば差程危険はない。
けれどカムスからダンジョンへの道はそうはいかない。
キチンと冒険者パーティーを組んで向かわないと、何処から魔物が襲ってくるか分からない。
ともかくここ南街で話合っても何だから、今すぐカムスへ向かうことになった。そのカムスに12歳のガイの娘……わたしが同行すると言い出して、さっきから揉めていたの。
けれどガイが助手だと言い張ってギルドマスターが折れた。
でも何があっても責任は負えないと念を押された。
──うん。それは大丈夫
殺されても、わたし……死なないから!
それにカムスの道中なら安全。魔物は出ないからね。
ということでわたしとガイとギルドマスターのノーフィスとその秘書件受付嬢のリンさんが同じ馬車に乗り合わせることになったわ。
ジャンはお留守番。行くと言い張ったけど、ガイが止めた
「俺は何かあったらアイラを守る。おめぇまで守れねぇ。そしておめぇも弱いから自分を守れねぇ。
ハッキリ言う。お荷物だ。
それに……おめぇ。誰が母さんの傍に居てやるんだ。
一人で抱え込むとツレェからな。
それに妹達も不安がっているだろう?
男のお前が傍にいたら安心するんじゃねぇか?」
そう言って説得して別れたの。
ガイは口は悪いけど、優しい。
そんなところも大好きなの。
だからって恋心とかないよ!あくまでもお父さんとして、人として大好きなの。
そんなガイの無二の親友のゴメスおじさんを、わたしも助けられるなら助けたい。
ギルドマスターのノーフィスは、厳つい顔の大男。
灰色の髪で青い瞳。もう還暦も間近だけど若々しく、ヤバいくらい強いらしい。身体中傷だらけで、特に顔に大きな傷跡がある。若い頃魔物にヤられたんだって。治療が遅れて傷跡は治せ無かったらしい。ノーフィスはガイと向かいあっている。
隣の秘書のリンさんは亜人なの。
猫のような耳を持った美人さん。この辺りには亜人は殆んどいないけど冒険者には結構亜人種が多いから、南街では時折見かけるわ。でも学校にはいない。
つまり子供の亜人は住んでいないって事ね。
リンさんはしきりにわたしを見ている。ちょっとウザい。話し掛けたくてウズウズしているの丸分かり
「リンさん。何ですか?何かお話しでも?」
「……可愛い」
──えっと……
今。可愛いと言ったの?わたしを?この状況で?
子供が好きなの?それとも女の子が好きなの?
──特殊な御趣味があるの?
「何が可愛いのですか?」
「貴女のその妙に大人びているところが……見た目小さい女の子なのに、弱そうじゃないわ。ふてぶてしいというか、肝が据っているというか……。そのギャップが堪らなく可愛いの。お姉さんと気が合いそう!」
ちっとも合いそうじゃ無いけどね……。
でも鋭い。わたし見てくれ12歳以下の少女にしか見えないけど、数々の命の危機を乗り越えた16歳のしたたかな女なの。
何せ毎日致死量の毒を飲まされてきたからね。これくらいは平気なの
「アイラちゃんは魔物とか怖くないの?」
「怖くないと言ったら嘘になるけど、今は平気。
お父さんもいるし、それに……」
わたしはチラッとノーフィスを見る。コイツを見れば魔物が逃げ出すに違いない。
だって強者のオーラ。だだ漏れだもの!




