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【23】聖女様と街娘(9)


ジャンの気持ちを知った処で、わたしの対応は変わらない。だって嫌いなものは嫌いだから。


もし本当に好きなのなら、それ相応の対応をするのが普通だと思う。悪戯や悪口を言って気を引こうなんて考えは、浅はか過ぎて受け入れられない。


わたしは『あんたのタメよ!』なんて恩着せがましく、メイドに殴れ続けた。だからわたしには、人の嫌がる事を平気でしながら『好き』なんてあり得ないし、嫌悪感を抱いてしまう。


体に負った傷はヒールで治せるけど、心の傷は癒せない。

やっと出来たはじめての友達から、ずっと一年間悪口を言われ続けた心の痛みは消えない。


骨と皮だけの悲しい姿を、骸骨と蔑まれたんだよ!


わたしはもう自由だ。殴られたまま、悪口を言われたままで大人しく受け入れるつもりはない。

これ以上理不尽な対応に、身を委ねるつもりもない。


だから言い返す!

悪戯……えっとエロいのじゃないよ。カエルとかヘビとか虫とか投げつける、可愛いヤツね……そんな悪戯されたら、ぶっ叩く!口で言い返す!



嫌なものは嫌!

嫌いな人は嫌い!



外に出られるまでの半年間、ジャンしか友達居なかったから仕方なく遊んでいたけど、学校通い出してわたしを尊重してくれる仲良しの親友出来たら、そんな自分勝手なジャンなんて要らないよね。


これで行いを改めて本気で仲良くないたい意思があるならともかく、アレでしょ?

わたしはとっくの昔にジャンを見限っている。


確かにジャンは謝ったし、少しは反省の色を見せてくれた。でもそれ以前にわたしの誕生日プレゼントにカエルを投げつけるなんておかしいよね?


ということで、ジャンなんて遥か忘却の彼方に消し去って、わたしは女子トークに花を咲かせまくった!


そして夕方。


わたし達は解散した。

彼女達を送るために外へ出たら、あいつがいた


「ジャン!また、わたしに何か文句あるの?」


ジャンは無言でわたしの目の前に歩いて来た


「何?何なの一体?」


ジャンはいきなり後ろに隠してあった手から、花束を差し出した


「アイラ!誕生日おめでとう!

そして……俺は……俺は……誰よりアイラが大切です!

受け取ってください!」


「…………」


無言でジャンを見詰めてみた。

ジャンの手がプルプル震えている。


「…………はぁ…………」


わたしはため息を付いて一気に捲し立てた


「誕生日プレゼントとしてこの花束はいただくわ。

そしてお礼を言いましょう。

ありがとう。ちゃんと飾るわ。

この時期にこれだけお花集めるのは大変だったでしょう?

その心意気は認めてあげる。

でも……ホントにわたしを大切に思っているなら、もっと周りを見て誠実に接して下さい。

まだわたしは貴方が嫌いです」


わたしは花束を受け取った。

ジャンは涙目で去ろうと後ろを向いた


「でも……ついさっきまでジャンが大嫌いだったわ!

つまりね……少しは見直したってこと。

あんた……精進なさい」

「……ありがとう。アイラ……」


ジャンは全速力で駆けて言った。


──青春だね♪


わたしは第三者的な視点で状況を眺めていた。


──まあ。悪くないかな?こういうのも……


だからといってジャンに惚れたり絆されたりしないけど、これで少しでも大人になってくれたらいいかな?


わたしは感慨深げにジャンの小さくなっていく背中を見ていた






それから1ヶ月経った。


わたしとジャンの距離感は相変わらず開いていたけど、ジャンの悪戯はまるっきり鳴りを潜めた。

カエルもヘビも虫も投げつけなくなった。


わたしに暴言も吐かなくなった。


そして少し凛々しくなった。


でもわたしはジャンを嫌いなままだった。


そればかりは一朝一夕にはいかない。




── そんなある日 ──



早朝。

わたしの家の戸が激しく叩かれた。


わたしは一瞬、わたしの正体がバレて、わたしを捕まえに来たのかと思って戦々恐々としたけど違った。


戸を叩いていた犯人はジャンだった。


戸を開けたガイにジャンはすがりついて……


「父ちゃんが……父ちゃんが……ダンジョンから帰って来ないんだ!もう諦めろってギルドから報告が来たんだ!

でも!でも!俺……俺!俺!」


ギャンギャン泣いて、叫びに叫んでいる


「今からギルドへ行く!詳しい話を聞かなきゃ何ともわかれねぇ!俺にはお前の父のゴメスは親友だ。

助けられるなら助けてぇ」


「ガイ叔父さん……ありがとう……俺……」


父さんはジャンの頭をポンポンと叩き


「心配すんなとは言えねぇ。だがな、お前はゴメスの息子だろう?おまえゴメスが生きてるって信じてんだろう?

なら。俺も信じてくれな?

ジャンの父ちゃんは俺が絶対見つけてやる」


ジャンは頷いた


「俺……覚悟してる……だから見つけて欲しい。

今は金無いけど、依頼費用!絶対稼いで返すから!」


覚悟って……。ガイは『助けてぇ』『見つける』って言ったけど、『助ける』とは断言しなかった。

それは……ガイもジャンも最悪の事態を想定しているってこと……。


わたしは……出来ることだらけだ……



「わたしも行くよ」



わたしは自然に言葉に出した。






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