【22】聖女様と街娘(8)
学校の授業も無事終わり、今日は道草食わずに家に直行……と行きたいところだけど、ソフィちゃんとシェリーちゃんの家を回って荷物を置いて、わたしの家へ行くの。
招待したのはこの二人だけだから、この仲良しメンバーで誕生会をするのよ。あまり招待しないのは気の合う友達じゃなきゃ嫌だから。
今日はお祝いの為にお父さんも家にいるし、きっと楽しい誕生会になると思うの。
いざ帰り足になると、声をかけられた。
クソガキのジャンだ
「ジャン!何?」
わたしは嫌悪感丸出しで睨み付ける。ジャンはビクッとして、それから薄い茶色の髪をかき上げて、緑の瞳でわたしを見る
「いや……その……」
「何?わたし急いでいるの。用がないなら話し掛けないで!」
「あの……さっきは……悪かった」
「許さない」
「……えっ!」
ジャンは固まった。何故わたしを見るの?
「謝る相手。わたしじゃないよね?
カエルぶつけられたのソフィちゃんだよ?」
「でもそれは……お前が避けたら」
「……はぁ」
馬鹿には付き合っていられない。避ける避けないの問題じゃにいよね?カエル投げたあんたが悪いの!
「……で?どうするの?」
「あの……ソフィ……ごめん……なさい。
オレが悪かった」
「うん……いいよ。もうしないでね。
アイラちゃんも許してあげて……」
優しすぎるよ!天使だよソフィちゃん!
「ふう……。今回は許してあげるわ!
でももうわたしに関わらないで!」
「あの……お前……誕生日だろ?
オレも……行っていいかな?お前んち……」
「嫌!絶対こないで!来たら追い返す!
わたしはあんたが嫌いなの!
せっかくの誕生日が台無しになるわ!」
わたしはまたジャンを睨むと「さ。行こう!」二人を誘って歩きだした。少し歩いたところで、シェリーが
「ジャン君。まだ見送っているよ。
アイラちゃん。ジャン君を嫌いなのは分かるけど、あんな言い方ヒドイと思う。ジャン君……泣きそうな顔をしているよ」
「泣けばいいのよ!
……でも、ちょっとキツかったと反省した。
明日。仲直りするね。仲良くツルむつもりはないけど、普通の他人のように接するわ」
いつも子供じみた悪戯をわたしにするジャン。
ジャンのお父さんも冒険者でガイと親友だから、家族ぐるみの付き合いもしている。
そうなればジャンとの絡みも多くなるし、その都度わたしを傷付けるような発言を繰り返したの。
「チビ!」「ブス」「くせ毛」「デカ眼鏡」「ギョロ目」
そんな事言われつづけたら、嫌いになるのは当たり前!
わたしはプンプンしながら家に帰り付いた。
もちろん親友二人も一緒!
それからわたしの家族。ガイ父さんとアマンダ母さんを交えて楽しく誕生会を開いたの。
お母さんが腕を振るった料理はどれも美味しい!
特に朝日鳥の丸焼きは絶品なの!
シャノンに投げつけられた丸焼きなんて、目じゃないわ!
シェリーちゃんからのプレゼントは手作りのお花のブローチ。ソフィちゃんからはフリル付きのピンクのリボン。
どっちも凄く可愛いし!気に入ったわ!
わたし達はお部屋で三人でお話会!
いつしか恋バナに花が咲いた。
「アイラちゃんは誰が好きなの?
あ!お父さんは禁止ね!」
流石恋愛マニアのシェリーちゃん。わたしの思考を読んで釘を刺してきた。学校の良いお顔の男の子の名前を次から次へと上げていく。
ソフィちゃんと二人で
「「どう?どう?誰なの?」」
なんて催促するけど、正直興味ない。
だってわたし!年上が好み!せめて同年代!
同年代って12歳の方じゃなくて、実年齢の16歳の方ね。
だって同級生ってジャンを筆頭にみんなガキ臭くて敵わない!わたしも大分染まっちゃって言葉遣いが貴族令嬢からかけ離れて、下町のガキのように悪くなっている自覚はある。それでも!
──ガキに興味は無いのよ!
「わたしの初恋はまだ先のようだわ……」
寂しい言葉を呟いた。
するとソフィちゃん
「わたしね。
ジャン君が好きなの。ずっと前から好き!」
「「えっ!!ジャン?!」」
いきなり突然ソフィちゃんが暴露して、わたしとシェリーはハモってしまった!
「でも……ジャン君。わたしに興味ないの。
ジャン君……一途だから……」
ずっと馬鹿一筋なのは……理解出来るけど、こんなに可愛い天使のソフィちゃんに相応しい相手とは思えない
「一途って……あいつ……何に一途なの?」
「アイラちゃん……鈍感すぎ……」
「へ?」
ソフィちゃんがわたしを見て天使の微笑みを向けた
「だってジャン君!ずっとアイラちゃんを大好きだもの!」
「えっ!……………………超やだ」
わたしの否定の言葉にソフィちゃんとシェリーちゃんは顔を見合わせて笑った
「「 だよねー! 」」