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栗の羽二重包み。

俺は栗があまり好きじゃない。食べられるようになったが、今でもモンブラン以外はそれほど好きではない。商売柄、栗を無視するわけにもいかないので、主に陽菜に味見を任せている。何せ、栗は女性に人気の食材だから。

しかし、そんな俺の最近のお気に入りは、栗の羽二重包み。シンプルに潰して裏ごしした栗に砂糖を混ぜただけの繊細な舌触りの栗きんとんが、これまた繊細な羽二重餅でくるんである。餅の好きな俺には最高の一品だ。

これはお袋が好きだったものだが、高校生くらいの、まだ栗が苦手だった頃の俺は見向きもしなかった。よくお袋が買ってきては、陽菜と奪い合うように食べていた。今の俺だったら、喜んで奪い合いに参戦しているだろう。

秋になると買いに走らずにはいられないモノだ。


栗きんとんといえば、お袋が作るのを一緒に作ったことがある。小学一年生の秋だったかな。お袋の実家に帰省したときに。

「栗をいただいたんだけど、どうしよう?」

ばあちゃんが、カゴいっぱいの栗を困った顔をしてお袋に見せた。ばあちゃんも栗が好きじゃないから困っていたんだな。

「こんなにあるの?栗きんとん作っていい?」

「使ってくれるの?」

「全部、いいの?」

「使って、使って。助かる。」

ばあちゃんとのやりとりで、パアっと明るい表情になったお袋はすぐに栗の皮むきを始めた。

カゴいっぱいの栗をむいて、蒸してから、アツアツの栗をガシガシと潰して、砂糖を混ぜていた。あまりの素早さに感心していたが、今思うと、家庭用だからと裏ごしをしなかった分、早かったんだろう。

そして次にラップで茶巾絞りにし始めた。ここで俺は思わず駆け寄って叫んだ。もちろん陽菜も一緒に。

「僕もやる!」

「陽菜も!陽菜も!」

「熱いから気を付けてね。」

そう言ってスプーンとラップを手渡してもらえた俺たちは、お袋の隣に立って、見よう見まねでキュッキュッと絞ってみた。

「お。できたね。」

お袋がニッコリとしたことと、見よう見まねでなんとなく形ができたことがうれしくて、すごい量の栗を三人で全部、栗きんとんにした。しかし…。

「え~?せっかく自分で作ったのに食べないの?」

そうである。俺はそれを一口も食べなかった。作りたかっただけなのだ。自分で作ったのだから一口くらい食べるのが普通かもしれないが、俺は食べたくなかったのだ。

今思えば、食べてみてもよかったという気持ちはある。俺はなんと可愛げのないガキだったんだ。


「あ。また。和菓子、食べてる。店長、最近、和菓子多くないですか?パティシエが和菓子屋に魂売ってするんですか?」

栗の思い出にふけっていたら、陽菜の声で現実に引き戻された。しかし、言葉とは裏腹に陽菜は和菓子屋のこの箱を見てニヤニヤとしている。

「べ、勉強だよ、勉強。栗もモンブランばかりじゃ芸がないだろう。お前も一緒に勉強しなさい。」

箱を差し出すとニヤリとしながら一つを手に取り、口に放り込んだ。

「でけえ口。色気ねえな。」

「ほっふぉいへくははい!」

モゴモゴと食べながら「ほっといてください!」と言ったらしい。実に色気がない妹である。あの頃のお前は、もう少し可愛かったぞ。


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