プリン
プリンというと、よくスーパーで売られている、三連でミルクゼリーに毛が生えたようなツルンとしたのどごしのものもあれば、卵の効いた、ちょっと固めの焼きプリン、クレームブリュレ、チョコプリン、抹茶プリン、黒ゴマプリンと様々であるが、俺は卵の効いた、ちょっと固めの焼きプリンが好きだ。そしてできればスーパーのではなく自家製がいい。スーパーのスイーツは甘すぎるものが多いから。
「プリン食べたい。」
「じゃあ買い物の時に買ってくるわ。」
「卵の効いたのがいい。カラメルがたっぷりで、甘すぎないのが食べたい。…買って来るんじゃなくて、作って。」
「今日は無理〜。」
「お願い!」
よくそんな会話をした。その日は無理でもたいていは翌日には作ってもらえた。場合によっては待ちきれずに出来たばかりのまだ熱いものをハフハフ言って食べてはお袋に笑われた。「冷える前になくなっちゃうわよ。」と。俺にとってプリンはそんな懐かしい味がする。
そして店頭に時々並ぶクレームブリュレはお袋のお気に入りだった。バーナーで焦がした表面のカラメルを嬉しそうにスプーンで割りながら食べてはニコニコしていた。
店には普通のプリンと、クリームとフルーツをあしらったアラモードの2種類を常に置いている。そうそう。お袋はケーキは買ってくれても、ケーキ屋でプリンを買うことは滅多になかった。
「家で作れることを思うと、買った方が安いじゃないの。」と。まあ確かにそうだと思っていたし、ケーキ屋ならケーキ屋を買ってもらえた方がうれしかったので、その頃は特に疑問に感じなかったが。しかし、売る側になった今はちょっと変わった。
「ケーキ屋さんでプリンを買うなんて。」というお客様にお願いします。ぜひ、ケーキだけじゃなく、プリンもご賞味ください。ご家庭の味とはひと味違います。後悔させません。