和パフェ。
「店長、こしあんのスイーツはどうなりましたか?」
親父から課題を与えられた数日後のこと。陽菜が笑顔で言い出した。
うっ。あの赤福の時のことを覚えていたのか。言葉のアヤなのに。わかって言っているんだろうけど、それだけにタチが悪い。
「先日、"考察"しているって言いましたよね?店長?」
黙っていると、ニヤリとして更に言う。
や、ヤバい。何か言わなくては。
「こしあんは、和菓子屋の仕事であって、洋菓子担当の俺たちが入り込むのはナンセンスであって、その…。」
「ふーん。ナンセンス。」
陽菜がますますニヤニヤする。て、提案しなくては。店長としての沽券に関わる。何か…!
「和のパフェに、こしあんじゃなくて、水羊羹の角切りをトッピングするってどうだろう?」
「思い付きにしてはなかなかですね。」
見抜かれている。わかっていて言わせるあたり、お前の"いけず"もなかなかだぞ。外では人たらしのくせして。
「パフェの詳細は?図案はあります?まさか、抹茶味に決まっているなんて店長ともあろう人が言うわけありませんよね?」
赤福を食ったくらいで、どうしてこんなに言われなきゃならないんだよ。試練か?谷へ突き落とすのは母ライオンで、突き落とされるのは子ライオンだよな?妹ライオンが兄ライオンを落とすなんて話、ないよな?
「もう少しだけ時間をください。」
なぜか頭を下げる俺。ああ。法事の日のことも考えないといけないんだった。じいちゃんを喜ばせる事が親父から与えられた課題である。
「いつまで?」
「明日の朝まで。」
「わかりました。楽しみにしています。」
微笑とは言いがたい笑みを再び浮かべて、陽菜は店に戻っていった。さて、どうしよう。何か甘いものでも食べて考えるとするか。
冷蔵庫の取手に手をかける。
「ん?」
扉を開けると冷蔵庫の中央に小さなグラスと小皿を乗せたトレーが鎮座していた。グラスには見慣れないスイーツ。そしてメモ用紙が添えられている。
『試作のきな粉アラモードです。味見してください。それから、こしあんをどこに入れたら良いか相談に乗ってください。冷蔵庫の隣に置いてある赤福は頂き物です。』
見ると冷蔵庫の隣の台には赤福を乗せた小皿が鎮座していた。
「お。美味い。」
きな粉の上に乗ったホイップに金粉をパラリとかけられたそれは、控えめな色合いの一品だった、ホイップの隣にはわらび餅。その下から出てきたのは、黒蜜のゼリー、抹茶のムース。いけずをしに来たのかと思ったら、試作の相談だったんだな。心憎い奴め。イヤしかし、それを素直に言わないあたり、やっぱりいけずだよな。
う~ん。こしあんかあ。黒蜜のゼリーの部分をこしあんに変えても良さそうだけどなあ。




