カウントダウン
頂きましたお題「数字」より
ランナーが追い越してゆく、体をすり抜けるように自転車が追い越し、ランナーに追突する。そのランナーの背中、Tシャツに9。
「強迫観念ってやつですよ。何でもない事に気を使って、実は繋がりがあるんじゃあないか、何か理由があるんじゃあないか何て思うんだ」
「違う、聞いたんだよ。これから99からカウントが始まると」
信号が青に変わり、歩道を通過中、体を掠めるようにして抜けてゆくバイクのナンバーが8。
「何ですかそれ、カウントって誰が数えるんです」
「違う、数えるんじゃないんだ、自然に目に飛び込んでくるんだ」
駅のホーム、階段を下っている最中、躓きそうになった時、目の前に広告の7。
「でも99とか、そうそう見かけないでしょう」
「見かけなくても目に偶然入る事はある、例えば電話番号が断片的に見えたり」
道路脇を歩いている間、車が弾いた石が標識に突き刺さった際に表示されていた数が6。
「そんなの気にしてたら切りがないでしょうが、他の数字だって常に目に入るのに」
「気にしないで居られたら楽だろうけれどね、気にせずにはいられない、偶然にしては出来すぎているんだ」
投げ捨てられたタバコがゴミに引火した際に目にした新聞に5。
「いつからそんな事になったんですか」
「私だってこんな馬鹿げたことに巻き込まれるなんて思ってなかったさ」
人だかりの中、パトカーのランプ、アパートの壁面に4。
「何か恨まれるようなことしたんですか」
「していない、するはずないじゃないか」
大破した車、飛び散るガラス、焦げ付いたタイヤ痕に3。
「じゃあなんですか、よからぬ場所に赴いたとか」
「私は自分から危険な場所に近づいたりしない」
緑色の川、変色した衣服、膨れ上がった体、額に張り付いた髪に2。
「やっぱり気にすすぎですよ。だって影や模様だって時折数字に見えることもあるでしょう、でも違うでしょう」
「気のせいなんかじゃないんだよ、ただ、知り合いから見るなと言われただけだ、けれど私は見てしまった」
話し合う二人の男、電飾看板が明滅して一部の明かりが落ちる。
「そう言われても、何を見るなと言われたか教えていただかないと」
「良いか、0は終わりじゃないんだ。0を見た時から始まるんだよ轢かれた彼の口の中に紙切れの0が覗いていたんだ。私は終わりだが、君は絶対に見てはいけない、何が起きても私を見るな」
青ざめる男の前で電飾看板の金具が外れ、看板が一人の男の上に落ちる、電気が触れ直立不動で痙攣が始まる、その姿に1。
焼け爛れた皮膚、煩悶する表情、頬に看板の焦げ付き、数字の0。
「それで、亡くなった彼の妄言だったって言うんですか」
「確かに0を見たけど、怖くないですよ。信じなきゃいい、気にしなきゃ良いだけでしょ、信じ始めたら本当になるってことも有るんじゃないですか」
そういった男の目はずっと閉じている。




