8-2彼と彼女
テストが近くなり、周りが慌て出した時期の朝、ギルバートはいつも通り日課のランニングを終えたあとに自室に戻って勉強を始めた。
部屋に戻ると、いつもなら寝ているレーガが、起きて勉強をしていた。ギルバートは、おはよう、とだけ言うと、自分の机に座った。するとレーガが、あっ、ギルバート、とこちらを向いた。
「おはよう。ねえ、教えてほしいところがあって…」
そうレーガに尋ねられて、ギルバートは立ち上がると彼のそばに向かった。
一通り教え終わると、ごめんね、とレーガに謝られた。
「ギルバートも勉強忙しいだろうに…」
「いや、大したことじゃないから」
ギルバートはそう言うと自分の椅子に戻った。そんなギルバートを、じっとレーガが見つめる。ギルバートは視線を感じて振り返る。
「…なんだ?」
「いや、もし…もしよければ今日の放課後、少しのあいだでいいから勉強を教えてもらえたらって…」
レーガが、僕ほんっとうにまずくって…、と顔を青ざめさせる。ギルバートはすぐに、構わない、と返した。そんなギルバートに、レーガは目を輝かせる。
「ギルバート、本当にいい人…!」
「同室のよしみだ」
ギルバートはそう返すと、自分の机に向かった。
ミーナとうまく話がかみ合わなかったあの日から、ギルバートは毎日ずっと胸のそこに靄がかかったような気持ちでいる。
「(…レーガといたら、気が紛れるかもしれんし…)」
そんなことを考えつつ、ギルバートはノートを開いた。
教室に向かうと、クラスは皆一様に机に向かって勉強をしていた。そんな光景を見ながら、テストが近づいているのを肌で感じながら、ギルバートは席についた。
「よっ、おはよう」
前の席のジェームズが話しかけてきた。ギルバートは、ああおはよう、と返す。
「万年主席様は、今回も大丈夫そうなのか?ジャックがまた勝てなくて癇癪を起こすな」
ジェームズがくつくつと笑う。テストで毎回勝手に自分と競ってきて、そして負けては悔しそうに嫌味を吐くのが恒例になっているジャックの顔を思い出して、ギルバートは顔が引きつる。
「なんであいつは俺と競いたがるのか、よくわからん。あいつは別に十分優秀な成績だろ」
「1位様にはわからない苦悩があるんだろ」
俺は進級できたらそれでいいけど、とジェームズは謎に胸を張る。で、進級できそうなのか、とギルバートが尋ねると、1位様の助けがあれば、と返ってきた。毎度のことなので、はいはい、とギルバートは軽く返す。
「…あー、でも、今日は先約がある。レーガと一緒で良ければ」
「なんだ、あいつと最近仲良くしてるのか?」
「同室だからな」
「俺はあいつが好かん。なよなよしていて、ジャックたちにされたい放題されてもへらへらしている。気に食わん」
「…ならお前とは別日にしよう」
「だが、今は緊急事態だから我慢する」
なんだそれは、とギルバートは呆れた。
そして放課後、カフェテリアにて、ギルバートはレーガとジェームズの勉強を見ていた。
ジェームズもレーガも、もともとそこそこ勉強はできるので、わからないところがでてきたらその都度教えるだけで済んだため、2人が自分で問題を解いている間は、ギルバートは自分の勉強をすることができた。
1.2時間ほど時間が過ぎた頃、そうだ、とレーガが紙袋を取り出した。
「お菓子作ってきたんだ。よかったら休憩に…」
レーガは威圧感のあるジェームズに少しおびえながら提案した。しかしすぐに、あっ、と声を漏らした。
「そういえば、ギルバートは食べないんだったね…」
「ああ、すまない…」
「俺も食わん。甘いものは控えているんでな」
ジェームズもきっぱり断った。レーガは、そ、そっか…、と苦笑いしながら、紙袋をすすすと引っ込めた。
なんとなくそのレーガが気の毒で、絶対に食べられないわけじゃないから…、とギルバートは話しかけた。
「じゃあ、私がもらおっかな」
いつの間にかギルバートの隣に座っていたアイリーンが、レーガの手にある紙袋を指さしてにこりと微笑む。ギルバートは、げっ、と声をもらす。
ジェームズは、斜め向かいに座るアイリーンに、おお…、と感嘆の声を漏らした。
「あのアイリーンだ…。ギルバート、やっぱお前ら付き合ってんのか」
「なわけあるか」
ギルバートはジェームズに即訂正する。アイリーンはレーガから紙袋を受け取ると、中にはいっているクッキーに目を輝かせる。
「今日はクッキー?わあ、美味しそう!あなたが職人だったの?」
「しょ、職人?ってほどでは…」
レーガは苦笑いを漏らす。アイリーンはクッキーを口に運ぶと、美味しい!とさらに目を輝かせる。
「あなたって天才なの?もうどのお菓子を食べても、あなたが作ったものには敵わないんだけど…!」
「え、えへへ、嬉しいなあ」
レーガは嬉しそうに頬を染めて微笑む。ジェームズは頬杖をついて、アイリーンを眺める。
「ほーん、こりゃあみんな好きになるわなあ」
アイリーンを見つめて鼻の下を伸ばしながら何やら納得するジェームズに、ギルバートは呆れたような顔をしたあと、ぎろりとアイリーンを睨んだ。
「食べたなら早く帰れよ。こっちは忙しいんだよ」
「あら、まだ食べているわ」
「……」
ギルバートは歯ぎしりをする。ジェームズが、まあまあ、とギルバートをなだめる。
「ゆっくり食えよアイリーン、こちとら休憩してるから」
「あらどうも…ってあなた、ミーナとダイエットしてた男…?」
アイリーンは、ようやくジェームズのことを思い出したのか顔をしかめる。
「あなた、ミーナに怪我をさせた男ね。よーく覚えてるわ。もう二度と、ミーナに近づかないで」
アイリーンがジェームズを睨見つける。ジェームズは、はあ?と怪訝な顔をする。
「俺は善意でやってやってたんだぞ。そんなこと言われる筋合いはない」
「余計なお世話とも言えるわ。ミーナには必要ないことだもの」
「必要だろ!あんな太い体、生きてて恥ずかしいだろ!」
「どこが恥ずかしいのよ!私の大切な人のことを勝手に自分の物差しで測って貶さないで!」
「や、やめとけお前ら…」
ギルバートが止めるが、激怒したアイリーンは、レーガからもらった紙袋はしっかりと持って、私もう行く!と立ち上がった。するとレーガが、あっ、アイリーン、と言った。
「今度はシフォンケーキを焼くんだ。そんなに喜んでもらえるの嬉しいから、また食べてよ」
こんな状況でもほのぼのしているレーガに、ギルバートは拍子抜ける。アイリーンは少し固まってレーガを見たあと、ほんとう?と目を輝かせた。
「あなたって、男のくせにとってもいい人ね。なんでこんなやつらと一緒にいるの?」
「こんな奴らとは何だ!」
ジェームズがアイリーンを睨む。アイリーンは、そんなジェームズを無視する。レーガは、ほのぼの笑いながら、こんなじゃないよ〜、とアイリーンに言った。
「ギルバートはいつも鈍臭い僕にも優しくしてくれるよ。…いじめられても助けてくれるし、今日だってテスト前の忙しいときに僕の勉強見てくれたんだ。ジェームズも、そんなギルバートの友だちだからきっといい人だよ」
レーガはそう優しく笑う。そんなレーガに、アイリーンは固まる。そして、恐る恐るギルバートを指さした
「…いい人…?この男が…??」
「うん〜」
「…なんか、俺のフォローだけ投げやりじゃね?」
「フォローしてもらえるだけありがたいと思え」
不服そうなジェームズを、ギルバートはたしなめる。アイリーンは、レーガを見つめて、ふうん、と少し納得のいかない様子で呟く。レーガは、両手を合わせて、それじゃあ、と微笑んだ。
「また作ったらギルバートに渡してもらうね。よかったら食べてよ」
朗らかに言うレーガに、う、うん、ありがとう…、と少し表情を緩めた様子のアイリーンはお礼をいうと、この場から去った。
ジェームズは、あーあ、とため息をつく。
「結局顔だけか。男たらしだとか、女友達の恋人を片っ端から奪って女子全員に嫌われてるってのは本当そうだな」
いくら可愛くても、あんだけ気が強けりゃなあ、とジェームズが呟く。ギルバートは、へー、とさして興味なさそうに返す。
「でも、なんでまたあの女に食い物をやる約束したんだ?さては、お前もアイリーンが好きなんだな?」
ジェームズがにやにやしながらレーガに言う。レーガは、僕なんかがそんな高望みしないよ〜、と苦笑する。
「ただ、ギルバートがお菓子をあげてる知人って、彼女のことでしょう?ギルバートが嫌いなお菓子をわざわざ受け取って渡してるくらいだから、大切な人なのかなって思って…。そんな人と険悪なまま終わりたくないでしょう?」
レーガはギルバートに微笑む。ギルバートは、レーガなりの優しさに胸を打たれつつも、いや、と手を振った。
「あいつじゃない、決してない」
「えっ、そうなんだ」
なんだ、勘違いかあ、とレーガは恥ずかしそうに微笑む。ギルバートはそんなレーガに、でもありがとう、と目を細めた。
2人に勉強を教えた翌日の朝、ギルバートはいつも通りランニングを終えて宿舎に戻った。すると、ロビーで勉強しているジャックの姿があった。
ギルバートは無視して部屋へ戻ろうとしたが、おい、とジャックに呼び止められた。ギルバートは面倒くさそうに、なんだよ、と返した。
「テストまでもうすぐだというのに、トレーニングだなんて余裕だな」
「…日課にしてるから、やらないと気持ち悪いだけだ」
ギルバートは嫌々そう返すとまた歩き出した。すると、昨日、とまたジャックが話しかけてきた。ギルバートは渋々立ち止まる。
「(…まだ話があるのかよ…)…なんだよ…」
「アイリーンと2人でいたらしいな」
「いないよ」
「カフェテリアで二人仲良くいたという話を聞いたぞ?」
「誤報だ。ジェームズもレーガもいた」
「そうかそうか、婚約者の可愛い可愛いミーナ・ワイアットがお前にはいるんだものな。アイリーンには興味もないか」
そう憎たらしい言い方で言ってきたジャックに、こいつにはもう何を言っても無駄だと思い、ギルバートは無視して歩き出した。
「次のテストでは!」
すたすたと歩くギルバートの背中に、ジャックが呼びかける。
「俺が絶対に勝つからな!!」
ギルバートはそう宣言するジャックを無視して、さっさと歩いて自室に戻った。
ギルバートが休み時間に廊下を歩いていると、アイリーンに呼び止められた。嫌そうに振り向くと、あんたの話じゃないわよ、とアイリーンが言った。
「あの、彼…職人の…」
「職人…レーガか?」
「そう!あのお菓子くれた人!…これまで何度もお菓子を頂いたし、今度はケーキも焼いてくれるみたいだし、お礼がしたいなって…。何が好きか教えて?」
彼女にしては珍しく、少しもじもじとしている。ギルバートはすこし不思議そうに彼女を見ながら、わかった、と言った。
「聞いておく。それじゃあ」
「まっ、まって、待ちなさい!」
アイリーンが呼びとめる。ギルバートは振り返って怪訝そうに眉をひそめる。
「何だよ。早く済ませてくれ」
「…あなたって、いい人なの?」
「はあ?」
「レーガがそう言ってたから!…レーガが言うのなら、そう、なのかもって…」
「…なんでレーガの言うことは信用するんだよ」
呆れたように言うギルバートに、アイリーンは目を伏せて、だって、と言う。
「あの人、他の男と違う。…あいつらみんな、私の顔を見て、下衆な顔と下心丸出しの目をする。…でも、レーガは違った。…あの人は男だけど良い人で、そのレーガが言うのなら、あなたも良い人なのかも、って…」
ギルバートは言葉が詰まる。散々彼女が、クラスの男子たちの話題に挙げられていたところは聞いてきた。勝手な評論に巻き込まれているところも。
彼女の顔を見て、ギルバートは気まずそうに一度目を伏せたあと、まっすぐに彼女の方を見た。
「…その下衆な話題に乗っかって、君の名前を勝手にあげて、申し訳なかった。君が嫌な思いをしたこと、謝罪する」
「別に。慣れっこだから」
アイリーンはそう、本当に何でもないように言う。そんなアイリーンに、ギルバートはまた言葉を詰まらせる。
アイリーンはじっとギルバートを見つめると、ねえ、と話しかける。
「あなたは私に気があったの?」
「そ、う…そうだよ、昔な」
「じゃあ今はミーナが好きなんだ」
「そん、なわけ、ないだろ」
「……」
「……」
ギルバートはじっと見つめるアイリーンに咳払いする。アイリーンは腕を組むと、なんかおかしいと思ってたのよ、と言った。
「私のことが好きだって聞いてたのに、私の顔を知らないし。実際顔を合わせても私に興味のない顔をするし」
「…………」
「…にしたって変よ、なんでミーナじゃなくて私の名前を挙げたの?」
「…別に好きじゃない」
「この期に及んで…。なら私のことが好きだって言いふらすから」
「……」
ギルバートは追い詰められたような顔をする。ミーナはじっとギルバートを見つめる。ギルバートは眉をひそめて、小さく息を吐く。
「…男はな、恋だの愛だのに振り回されたりしない。そういうのにうつつを抜かすのは、意志の弱い情けない人間のすることだ。全く男らしくない」
「…よくわからないけど、好きな人に堂々と好きだっていうのも、すごく男らしいと思うけど」
アイリーンに怪訝そうに言われて、ギルバートは、ぐっ、と言葉に詰まる。
「(…俺が…ミーナに好きだと言う…?この俺が…?!)」
ギルバートはそんなシーンを想像する。ずっと思い続けてきた彼女を前にして、積み重ねてきた気持ちを口にしたら、そうしたら。
「(…そんなことしたら、そんなことをしたら…俺は全身軟体動物と化する…!)」
ギルバートは、想像しただけで恐ろしくて鳥肌が立った。そんなことになった自分は恐らく、男としての体を持たず、見るに堪えない形になっているだろう。ギルバートは、あり得ない、と頭を振る。
「そんなこと、あってはならない…っ!」
「……」
アイリーンは、理解ができないという顔をギルバートに向ける。ギルバートは、はっとして、軽く咳払いをしたあと、とりあえず、レーガには聞いといてやるから!と言うと、アイリーンの前から去った。
1日の授業を終えたギルバートは、宿舎に戻り部屋に入った。すると、先に帰っていたレーガが、おかえり、と笑顔で迎えた。
「ああレーガ、アイリーンが君に、お菓子のお礼がしたいらしい。何か好きなものを教えてくれるか?」
「ええ?いいよ、趣味で作って食べきれない分を食べてもらってるだけだから」
にこにこと笑って手を振るレーガが、あ、そうだ、と言うと、紙袋を一つギルバートに渡した。
「僕のお菓子をあんなに美味しそうに食べてもらえたのが嬉しくて、早速焼いちゃった!アイリーンに渡してよ」
「あ、ああ…」
ギルバートは、もうすぐテストなのに余裕だな、と言うと、ぎくりと肩をゆらしたレーガが、き、気晴らしだよ!と慌てて言った。
「それと、これも」
レーガはそう言うと紙袋をもう一つ差し出した。ギルバートは、え?と呟く。
「これは、ギルバートのいつもの知人さんに」
レーガはそう言うと柔らかく笑う。ギルバートは少し目を丸くして、その紙袋を見つめる。
「(…ミーナに、話さないと…)」
ギルバートは、あの日からずっと胸の底がもやもやしているのを改めて思い出す。ギルバートはレーガを見ると、ありがとう、と小さく微笑んだ。
その翌日の放課後、ギルバートはミーナを探した。すると、先にアイリーンが見つかった。ギルバートは、おい、と声をかけた。アイリーンはギルバートに気がつくと、あっ、と声を漏らした。
「ねえねえ、ちゃんと聞いてくれた?」
「礼はいらんらしい」
「はあっ?」
アイリーンは眉をひそめた。
「そういうわけにはいかなくって…、もうっ!ちゃんと聞いてきなさいよ!気が利かない男ね!!」
「……そんなに知りたいなら自分で聞いてこいよ」
ギルバートは呆れた顔でアイリーンを見る。アイリーンは少し口ごもったあと、そ、そういう話じゃなくって…、と何やら恥ずかしそうに自分の指同士を絡めた。ギルバートは、よくわからずに首をかしげる。
「おっ、噂通りじゃん」
ジャックの声がして、ギルバートはうんざりした。ジャックはにやにやとギルバートとアイリーンのそばに来ると、仲良しだな、と言った。
「お前はもう相手にしない」
ギルバートはそう言うと、ジャックの前を通り過ぎた。
悔しそうなジャックの前に、アイリーンが来た。そして、ふふ、と笑った。
「ざんねん、相手にしてもらえないんだって」
アイリーンはジャックにそういうと、ねえ待ちなさい!とギルバートを追いかけた。ジャックはしばらく顔を赤くして立ち尽くしていた。
「ねえっ!約束してよ!聞いてきてくれるって!」
アイリーンはそう言ってギルバートを追いかける。ギルバートは、もう知らん、と冷たく言い放つ。アイリーンはそんなギルバートを恨めしそうに睨む。
「なによ、良い人だと思ったのに!」
「…本当に思ってるのか?」
ギルバートは呆れたように言う。アイリーンは歩き続けるギルバートの背中を見つめた後、目を伏せる。
「…私ね、見た目がこんなだから、たくさん勘違いされたし、嫌なこともたくさん言われた。男遊びしてるんだ、とか、友だちの恋人を盗んでる、とか。…すごく嫌だった。見た目がちょっと派手なだけでなんでこんなこと言われなくちゃいけないんだって、思ってたのに私、あなたのことも見た目で判断しちゃった。…ちょっとだけ反省してたのよ」
「……」
ギルバートはゆっくり立ち止まり、アイリーンの方を振り返った。
「…わかったよ、聞いておいてやるから、」
「わっ!急に止まらないでよ!!」
アイリーンは、立ち止まったギルバートに反応できず、体勢を崩した。ギルバートは慌ててアイリーンの肩を手でささえた。
「おい、怪我はないか?」
「う、うん…」
ギルバートはアイリーンに怪我がないことを確認すると、アイリーンの体勢を戻す手伝いをした後、彼女から手を離そうとした。すると、こちらを呆然と見つめるミーナの姿が横目に見えた。
「あっ…」
ギルバートは、はっとしてミーナの方を見た。
ミーナはギルバートと目が合うと、気まずそうに目を伏せて、そしてこの場から逃げ去ってしまった。
「あっ、あーっ!!」
またややしいことになる…!とギルバートは頭を抱えた。
「…ミーナ、もしかして……」
アイリーンは、ミーナの方を見つめてそうつぶやくと、ミーナが逃げた方向へ走り出した。
ギルバートは、一瞬絶望に身体が硬直したが、そんなことをしている場合ではないと思い直すと、慌ててミーナを追いかけた。




