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黒緋の勾玉が血に染まるとき  作者: 弍口 いく
第3章 運命の人

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第4話 妖狼の指輪 その3

 銀杏の森を出てから、仁南になは本堂の裏で蹲っていた。

 大きな溜息とひとつ。

 さっき立ち聞きしたことが頭から離れない。


「こんなとこにいたのか」

 突然かけられた声に顔をあげると、庫裡にいなかった仁南を捜しに来たはるかがいた。


「狩りの仕事は終わったの?」

 流風るかが帰ってきているのを見たので、狩りが終わったことはわかっていたが、なにか話さなければならないと思って咄嗟に出た言葉だった。


 そんな仁南の不自然な態度を遥は見逃さない。

「なにかあったのか?」

「いえ……」

「体調悪いのか?」

 遥は横に座って仁南の額に手を当てた。

「熱はなさそうだけど」

「そうじゃなくて」

 仁南は赤面しながら遥の手を払い除けた。


「ハル君だってずっと元気ないじゃない」

「俺は疲れてるだけだよ、人狼の出没が多発してるからな、アジトを一つ潰したけど、それだけじゃ収まりそうにない」


 それだけじゃないでしょ、立て続けに起きた事件、まだ史乃ふみのの死も引きずっているに違いないと仁南は勘違いしていた。


「俺はあまり役に立たないんだ、ほとんど流風が一人で片付けてるようなもんだから」

 遥の言葉には皮肉がこもっている、流風の能力ちからに嫉妬しているのが垣間見えたので、つい口をついて出てしまった。

「いいよ、もっと効率よく霊力を受け取れるようにしても」


「効率よく? どうやっ……」

 一瞬、意味が解らなかった遥だが、すぐに理解して驚きの目を向けた。

貉婆むじなばあさんが言ってたんでしょ、霊力を奪い尽くすのには肉体関係を持つのが一番だって」


 なぜ今、こんなことを言いだしたのか、仁南自身もわからなかったが、

「なに言いだすんだよ、いきなり」

 思いもよらぬ仁南の言葉を聞き、困惑して慌てる遥を見て腑に落ちた。


(ハル君、困ってる。そりゃそうよね、でもハル君はあたしを女として見てないだろうし……それはわかってたけど、流風さんが報われぬ想いに身をやつしていることを聞いてしまったから、自分は想いを遂げたいと思ってしまったんだ)


「そういうことは、簡単に出来るもんじゃないだろ」

 遥は行き場のない視線を逸らして地面に落とした。


「なんで? 知ってるのよ、以前はしょっちゅう逆ナンされるのいいことに遊んでたって」

 仁南は簡単に引き下がれずムキになった。


「それは一夜限りの割り切った関係だ、俺もそういうことに興味を持ちはじめたガキだったからな、そこに特別な感情はなかったし後腐れもない、でも、お前は違うだろ」


「違わないわ、あたしだって興味あるし、そういう体験しちゃえばあたしの妄想も少女マンガからTLの世界へ広がるんじゃないかなって、ハル君は慣れてるんだから、手ほどきしてもらうのにちょうどいいし、ハル君も霊力アップして好都合でしょ」


 本当はそんな軽い考えではない、あの日からずっと思っていたことだった。

(襲われた時に思ったのよ、ハル君でなきゃ嫌だって、……でも、そんな風に言ったら重いでしょ)


「バカなこと言うなよ! そこまでして霊力を貰いたいとは思わない。だいたい、お前の興味は少女マンガみたいな恋愛だろ、その先の、飛び切りロマンチックな初体験を夢見てることくらいわかってる」


「わかってない!」

 仁南は思わず声を荒げた。


(まともな恋愛できるわけない、妖怪に付き纏われる霊力に加え、右目に呪いの勾玉を持ってるんだもん、恋愛なんか妄想の中でしかできない、ハル君にもほんとの想いを伝えることは出来ない。ずっと言い聞かせてきたはずなのに、いつの間にか想いが膨らんで手に負えなくなっていた。だから、だからせめて思い出くらい欲しかったのよ、でも……)


「そうよね、ハル君にだって選ぶ権利はあるよね、ゴメンね、忘れて」

 仁南は立ち上がると、駆けだした。


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