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それぞれの決意


「みんなお待たせ、少し別室で話しましょう」


私の手を引いて、フィルが皆を誘導する。

廊下を進みながら、遠巻きに見られるのが怖くて俯いていた。

二つ隣の部屋に入って、それぞれが席に着くと。

先程部屋に入って来たディオルムと言う男の子が口を開いた。


「おいコウハ、お前まだ寝ぼけてんのか?」


「え?」


ようやく顔を上げると、そこには様々な顔色の男女がいる。

訝しげに見詰める者、嬉しげに頬を緩ませる者、無表情の人も居る。

私はそれに怯んだ。


「まず私から大切なお知らせです」


フィルが手を打ち鳴らすと、全員の視線がそちらに誘導された。


「この子はコウハちゃんじゃありません」


笑顔と共に吐き出された言葉に、やはり全員が戸惑いの色を浮かべた。

それはそうだろう、長年待った友人と再会出来たと思えば中身が違うなんて…酷い話だ。


私はまた俯きながら無言で話しを聞く。


「ちょい待ちーや、フィルさん?

俺にはどう見てもコウハに見えるんやけど」


「そうね、私にも間違い無くコウハちゃんに見えてるわ。

だけど中身は別の女の子、コウハちゃんであり、コウハちゃんでは無いの」


「……では、ユウシャはどこに?」


「魔王討伐はどうなるの?」


それぞれの不安が漏れる。

フィルはまた微笑むと手を叩く。


「…まず、みんなに聞くわ。

ここに居るコウハちゃんがコウハちゃんじゃない今、旅を再会出来ない。

このコウハちゃんは私達の事を何も知らないに等しく、力は受け継いでいるものの戦う力は無い。

あなた達は、どうする?」


「どうするって…」


また、みんなの視線が私に集まった。

しばらく無言が続き、一人の男の子が立ち上がる。


「俺は別にかまへんよ」


「と、言うと?」


私の前まで歩みを進めると、私の両頬をつまむ。


「この子は紛れも無い、俺らの大将で、友達のコウハや。

中身が別やからって急に現れたこの子に罪は無い。

どうせ俺らの知らんところでコウハのアホが無い知恵絞って出した答えやろ?

…それやったら、この子が馴染むまでいつまでも待つわ」


むにむにと遊ばれながら、私はその言葉に少しだけ感動した。


「私は…一度国に戻る、そして準備をさせてくれ。

少し混乱していると言うのもあるが、私はコウハを待っていたんだ。

今のコウハに戦う力が無いのなら、私はもっと剣を磨かなければいけない」


「ユウシャがユウシャでは無い今、私があなた達と共に居る理由は無い。

私は一人でも魔王討伐に向かうわ」


「俺は別に、仕事が出来ればそれで良いよ」


「お、お前らなあっ」


それぞれの意見が飛び交う中、ディオルムが声を上げた。


「コウハが起きたんだぞ!!?

なら、もっと喜んだり…出来ないのかよ!!」


「ディオルム…彼女は私達の知っているコウハじゃないとフィルロロが言った。

彼女の言葉はいつも正しい、そうだろう?

私達が待っていたコウハは居ない、それが答えだ」


赤い髪を持つ剣士風の女の子は、悲しそうに目を伏せた。

その様子に、夢の中でコウハが教えてくれた光景を見た。


どこかの丘の上、夕日を背にしながらコウハが不敵に笑う。

そして仲間を順に見ながら口を開く。


「私は死なない、目的を達成するまで、絶対に。

だからみんなも私が死ぬまで絶対に死なない」


アリスタはその言葉を胸に、涙を流しながら俯いていた。


仲間の中で誰よりもコウハを尊敬して居たのが、剣士二人のディオルムとアリスタ。

コウハの記憶の中でも、コウハを巡ってのトラブルが絶えない二人。


アリスタがどれだけ傷付いたのか、今なら少しだけど分かる。


「こらこらアンタら、この子だってコウハに無理やり連れて来られたに違いないんやから。

あんまりこの子の事いじめたらあかんやろ」


「シン、貴方はこれからどうするの」


「俺ぇ?」


首を傾げると、にやりと笑って私の手を取る。


「俺は、この子の中の力を解放出来るかどうか、この子と一緒にやってみるわ。

あんたらは諦めてるみたいやけど、こんな姿形の似通ったコウハそっくりな子や、持ってる魔力も申し分無い、それに…」


視線をディオルムに合わせると、にっこりと微笑む。


「今のうち自分が株上げてたら、初印象最悪なあんたらよりコウハに好かれるんとちゃうかなーと思って」


「んなっ」


「それはっ」


「ふーん」


「ああ、そう言う事」


それぞれが思うところがあったのか、シンと呼ばれた男の子が言う。


「それにー、あのコウハとは違って可愛らしいやん?

しおらしいと言うか、可憐と言うか。

あの勝気前面に出てるお転婆破壊神も好きやったけど、この子もコウハや。

俺らの大切な」


優しい頭を撫でられて、私は恥ずかしくなって俯いた。


「……ほら!ほら見た!?これや俺が求めてた反応は!」


「ひゃあっ」


ぐいっと体を持ち上げられて、私は混乱のままにくるくる回される。


「これはこれで可愛らしいし、俺としては得やー!」


「な、何が得なんですかあーっ」


ジタバタ暴れると、また別の人に抱えられた。


「シン、さっきの言葉は聞き捨てならない」


「え?」


姫抱きにされ、顔を上げるとそこに居たのはアリスタだった。


「私だって彼女の事が嫌いなわけじゃ無い、むしろその…様子が違うので混乱して居ただけで…。

彼女がコウハの生まれ変わりだと言うのなら、私だって彼女の訓練に関わる権利がある!

なんたって私は、コウハの剣!そして私の主人はコウハなのだから!」


「え!?」


「そ、それなら俺だってそうだ!

俺の剣はコウハの為に振るう、そう約束した!」


「ええ!?」


やっぱり、コウハってすごい人だったんだ。

私はアリスタの腕の中で驚いて居た。


「エルチナとマギルスは、どうする?」


「…また平和ボケした旅がしたく無いわけじゃないから、様子見かな」


「俺も、隊長なんか変だし、面白そう」


ゆっくり頷くと、初めて無表情が動いて笑顔になった。

隣の女の子はそれを見て、はあとため息を吐き出したのだ。


「それじゃあみんな、コウハちゃんが慣れるまではこの街で逗留と言う事で良いかしら」


「おう」


「ああ」


「かまへんよー」


「分かったわ」


「うん」


それぞれ返事をして、私を見た。


「コウハちゃん、これが貴女の仲間よ。

これからどうぞよろしくね」


にっこり笑ったフィルと仲間達に、私は恥ずかしく思いながらも頷いた。

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