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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,04
82/104

ep,078 教都ブランシェイルへ

 再び旅に出る日がやって来た。

 ショーマ達は現在、リヨール北東門前で出発の最終準備を行っていた。今はメリルとセリアが荷を確認し、サフィードがその傍らに控えている所だ。

「本当はもう少しゆっくりしていたいんですけど……」

「いえ、大事なことですもの。お気になさらず」

「すみません。こいつが早く行きたいってせがむもので」

「せがんでなんかいませんー」

 送別にやって来たリノンとフィオンを前に、ショーマとステアが挨拶をする。

 ふとリノンが、ショーマの冗談に拗ねているステアの前に目線を合わせるようにして屈んだ。

「……ステアさん」

「な、なんですか」

「あの時あなたが気付いて止めてくれていなかったら、私はショーマさんのことを傷つけてしまっていたそうなんです。だから……、あなたには感謝しています」

「は……!?」

「あの時から今日までずっとお礼を言えなくて、ごめんなさい。……ありがとうございました」

「い、いや、ちょっ……、急にそんなこと……」

「……照れなくて良いのに」

「照れてませんッ!」

「ははは」

「ぐうう……」

 笑みを浮かべるショーマとリノン。ステアはむすっとしていたが、本気で嫌がっている訳ではなかった。十分に戸惑ってはいたが。


「……この街にいれば、きっと安全ですから」

「ええ、わかっています。私のことは心配せずに、頑張ってくださいね」

「はい。……フィオンもな」

「あっ、はは、はい!」

「……急がなくっても、良いからさ」

「はい……。その……、ごめんなさい」

「ん、良いよ」

 結局フィオンはショーマに対しちゃんとした返事は出来なかった。そしてそのまま、また別れの時を迎えていた。

 ただ今のショーマは、セリアが大怪我をしたあの夜に比べればだいぶ落ち着いていた。今すぐにでなければもう永遠に機会は無いかもしれない、とまでは思いつめてはいなかった。

 この街に残るなら、野に出て常に危険と隣り合わせという状況になるわけでもない。落ち着いてゆっくり考えさせるのも良いかもしれないと考えた。


「準備、終わったよ」

 馬車から降りてきたセリアが駆け寄ってくる。もう出発だ。

「あ……、そうだ。ショーマさん。これを」

 と、リノンが懐から何かを取り出してショーマに差し出した。

「あ……」

 あの日リノンに返してしまったペンダントであった。色々あって手元に置いておけなくなってしまっていたのだが、確かにもう問題はないはずだった。

「……ありがとう、お預かりします。あ……、俺が渡したあれは?」

「ちゃんとまだ持っていますよ」

「そうですか。俺の代わりだと思って……、と言うには、味気無いですけど」

「いいえ。そんなことないですよ。大事にします」

「……ありがとうございます」

 笑い合う2人。

 名残惜しいが、そろそろ出発しなければならない。

「それじゃ……」

「行きますか」

「うん」

 ステアとセリアが振り返って馬車に乗り込もうとする。ショーマも少し遅れて振り返ると、そこにいたメリルと目があった。

「あ、あのっ……」

 しかしリノンに呼び止められて、またすぐに振り向く。

「はい?」

 しかし振り向いていた先で待っていたのは、少しばかり予想外の出来事であった。

「……!」


 駆け寄ったリノンが腕を掴む。

 ぐい、と引っ張られ、上半身が前のめりになる。

 頭の位置が少し下がった所で、彼女の顔が近付いてくる。

 そして唇が、重なった。


「あ!」

「……あ」

「あーあ……」

「あわわ……」


 それを目撃した4人はそれぞれ別々の反応を示した。

 もちろん、当の2人もまた別の反応を。


「……しばらくは、きっと出来ないから……」

「あ、そ……、そうですね……」

 ショーマは顔が熱くなり、視線が合わせられない。

 普通にするだけならともかく、まさかこんな他人の目のある所でされるとは思っていなかった。メリル達にも見られたと意識すると余計に顔が熱くなる。

 見れば、してきた方のリノンもまた顔を赤くしていた。

 だがその視線はちゃんと、真っ直ぐにショーマを向いている。

「……えっと、」

「はい……」

「……行ってきます」

「はい。……行ってらっしゃい」


   ※


 がたごとと音を立て、馬車は山道を再び進んでいく。

 荷台にはショーマとセリアが乗り込み、メリルはステアと一緒に手綱を握っていた。

「ああいうことしちゃうんだね……」

 出発してからずっと無言だった車内で、ふとセリアが口を開いた。

「あ、ああいうことと言うと……?」

 ショーマはその声色に不穏な気配を感じ、びくびくしながら聞き返した。

 実際はセリアも別に怒っているわけではなく考え事をしていただけで、ただショーマの思い過ごしなだけであったのだが。

「リノンさん。もっとおとなしい人だと思ってたのに、大胆だなーって」

「ああ……。いや、そうかな……」

 2度も夜這いをかけてきた人が今更大胆も何も、とショーマは思ったが黙っておくことにした。

「……ねぇ」

「はい?」

 セリアはちらりと進行方向を見た。カーテンがかかって見えないが、その先にはメリルとステアがいる。

「?」

 つられて見たショーマが首をかしげる。そしてセリアの方へ顔を向け直しどうかしたのか聞こうとして、

「……!」

 唇が重なった。

 また。

「あ……」

「えへへ……」

 唇を離したセリアが、いたずらっぽく笑う。

 ショーマも今度は誰にも見られていなかったが、少し間違えば見られていたと思い、また顔を赤くさせた。

「ショーマくん、かわいい」

「か、かわいいとか……」

 からかわれてまた赤くなる。よりにもよってその言い方では、尚更であった。


「……はー」

 ステアは背後の気配に、思わずため息を吐いていた。

「何よ」

「何でもないですよ」

 横からメリルに突っ込まれ、素っ気なく返事を返す。どうやら気付いたのは自分だけのようであった。

「今度はまっすぐ到着出来るといいですねー、教都」

「そうね……」

 馬車は進み、やがて見えてきた看板を右に進む。

 今度は通行禁止にはなっていなかった。

 滞りなく、進んでいく。


   ※


「見えてきましたよ」

 時刻は陽が山の影に隠れるより少し前。ステアはカーテンを開け、中にいた2人に声をかける。

「どれどれ……」

 ショーマとセリアが窓を開けて外の様子を覗き見る。

「おお、あれが……」

「教都ブランシェイル、大聖堂ですね」

 山々を形作る岸壁の隙間を縫って、高くそびえる大きな建物が見えてくる。

 王都パラドラの大時計搭や王城にも似た荘厳な趣のそれこそが、教都ブランシェイルで最も大きく、最も象徴的で、最も都市としての機能を集約させた建物、大聖堂である。

「礼拝堂とか騎士団詰め所とか図書館とか宿泊施設とか大厨房とか、まあ何でもかんでも詰め込んでる場所ですね」

「ほー」

「取り敢えずはあそこに行けば目的はだいたい達成出来ると思います」

 教都ブランシェイルは、山間の開けた場所に作られた都市である。

 東の方角を見ればまだまだ山の姿は続き、西の方角を見れば山下の平地が見渡せる。更にもっと遠くを見れば、学術都市リヨールの様子も目にすることが可能だ。

「それにしてもここまで来るのにずいぶん時間がかかった気がしますね」

「……すまん」


 しばらく進んでいくと、次第に賑やかな喧騒が耳に届いてくるようになった。

 何も無い道路や広場に布を敷き、そこへ食料や旅道具、その他珍しそうな貴金属などを並べている人が多く目についた。そして彼らはそれを、通りすがる人々とやり取りしている。

「露店か?」

「ええ。教都の敷地内では物を売ってお金を得ることを禁止しているので、行商人さん達はこうしてギリギリ敷地外でお店を開いてるわけです」

 ステアが解説する。長らくこの街で暮らしていたためその辺りの事情には詳しかった。

 教会に関わる仕事を行っている者は、王国に対し税を納めることを免除されている。その代わり商売によって金銭を稼ぐことは禁止されているのだった。故に、教都の住人や訪れる旅人相手に商売しようと思うとこうなるしかないのだ。

「……なんかズルくね?」

「持ちつ持たれつってやつですよ。教会でも自給自足には限度がありますから。麓の街までいちいち行くのも大変ですからね」

「そういうもんか……」

 まあ色々と事情があってそうなっているのだろうとショーマは納得する。違法な物品を売っているとかならともかく、このくらいならいちいち突っかかることもあるまい。


 露店街を抜けて敷地内に入ると、段々静けさは遠ざかっていく。やはり通りの厳かな雰囲気のせいもあるのだろうか。

 進み行く石造りの道路は、蔦が絡み付く岩壁に沿って配置され、途中に鳳凰を象った石像がほぼ等間隔に並んで飾られている。その道は時折うねりながら、大聖堂まで続いていた。


 道すがら横側から見下ろせる山下の様子は広く雄大で、この地が地理的な面以外でも、『高い』場所なのだと感じさせる。

 何よりも、心なしか重く感じる空気が、ここは神聖な場所であるのだと体に刻み込んでくる。ショーマには何となくそういう風に感じられた。

「あ、ここちょっと空気が薄いんで体調悪くなったら言ってくださいね」

「…………」

 気のせい、ではないと思いたかった。


 道の途中にあった教会騎士団の警備する倉に馬車を預けると、そこからショーマ達は貴重品だけ手に持って大聖堂へ向かい自分達の足で進んでいく。

 参拝を行う貴族も多いとかで、馬車や旅荷物を預かってくれる施設もしっかり完備しているのだそうだ。ちなみにサフィードもそこに預かってもらっている。荷物番、というわけではないが。


「さてやって来たけど、具体的にどうしようか」

 歩きながらショーマが相談する。

「まずは教会が掴んでいて私達が未だ知らない魔族についての情報よね。騎士団の方に聞いた方が良いのかしら」

「うん。ステアもちゃんと会わせてやらないと……。な?」

「私は別に……」

「ちゃんと和解しておいた方が良いと思うぞ。お前、ちょっと物騒なこと言ってたし」

「言いましたっけ」

「言ってた。俺達に拾われてすぐの頃だったかな。あいつらぶっ殺してやるとか何とか」

「忘れましたね」

「忘れたって……」

 あっけらかんと言ってのけるステアに、ショーマはがっくりとなる。

「……そういうのはもう、どうでもよくなったって言ってるんですよ」

 だが思っていたのとはまた違った、それなりの思慮を感じさせる言葉が続いたことで少し安堵する。

「……で、どうするのよ」

「どうせなら神父さんに会いましょうよ。あの人なら騎士団よりいくらか話は通じやすいと思います」

「騎士団の人達はお前のその口振りだと、やっぱり頭が固いのか?」

「固いって言うか、まあ固い方だと思いますけど……。いえ、ほら元、とは言え王立騎士団にいた人には良い顔しないんじゃないかなって」

「それはそうね。立場上は問題なくても、密偵か何かだと思われないとも限らないし」

「なるほど」

「神父さんなら個別の礼拝を受け付けてくれてますので合法的に会えますよ」

「じゃあ、そうしましょうか」

 そう出来なかったらどうするつもりだったのかと、ショーマは言いかけた言葉を飲み込んだ。


 しかし大聖堂内に到着した途端、それもまた難しいことを理解する。

「すごい行列だな」

 大聖堂に入るとまずは灰色で統一された石造りのロビーが広がっていた。左右の壁には階段がそれぞれ配置されて上の階への道を作っている。

 そして正面には礼拝堂に繋がる大きな扉があり、そこには幾重にも折れ曲がった行列を作る人々が並んでいた。

「すごいですねー」

「これずっと待たされるのかな……」

「まさか。ちゃんと整理券なり貰えるでしょ」

 ステアが他人事のように驚き、セリアが先の見えなさに不安を抱き、メリルが安心させるよう言った。

「たぶん今並んでいるのでも今日の分だけだと思います。券を貰ったら何日か後でしたー、なんてことになるかもしれないですね」

「仕方ないわね……」

「……でもなんでこんなに?」

「やっぱり魔族の宣戦布告のせいじゃないですか? 私がいた頃はここまでひどくなかったです」

「ああ、あれで不安になった人か……。そう言えばあれ以来王都を離れたって人も多かったしな。ここに来た人もそりゃいるか」

 ショーマ達は整理券を発行している職員の元へ向かっていく。

 その途中、先頭を進むステアがぶつぶつと呟いた。

「私からすれば他人に話したくらいで晴れる不安なんか溜め込んどけよって感じですけど。神父さんも何が悲しくてそんなもん聞かされなきゃいけないんだか」

「そう言うなよ。お前が思ってる以上に人は深刻に抱えるもんだし、思ってる以上に話すだけで効果はあるもんだぜ」

「ほーさすが、やることやってる人は言うこと違いますなー」

「茶化すな」

 でこぴん。

「あいてっ」

 そんなショーマとステアの後ろで、メリルとセリアの顔が少しだけ赤くなっていたのには、特に誰も気付いていなかった。


 整理券を発行している職員の元へやって来る。

 だがその時、

「……あ! お前……!」

 その隣に立っていた、鎧を着込んだ警備兵の1人がステアの存在に気付いた。

「あっ、やべ……」

 ステアは慌てて鎧の上に着ていたローブのフードを頭に被ったが、今更もう遅い。

「……お前、まさか」

 警備兵の槍を握るその手に力が込められた。もう1人一緒にいた警備兵は状況が一瞬理解出来ずにいたが、とりあえず同じ様に槍を握り締めた。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! いや、ま、待ってください」

 慌ててショーマがステアを庇うようにして立った。荒事は望んでいない。

「こいつは別に、あなた達に何かしようなんて思ってないです。ただ神父さんに会いたい俺達に付き合ってここまで来てくれたってだけで。そりゃあ騎士団の人達とも和解とか出来れば良いとは思ってますが……」

「……失礼ですが、あなたはこの少女とはどういうご関係で?」

「行き倒れかけてた所を助けてあげたんです。それ以来、こちらからも何かと世話にもなってます」

「……あなたは、そいつの力について、」

「知ってて一緒にいます」

「……そうですか。ふむ……。おい、少し頼む」

「え、あ、了解です!」

 警備兵はもう1人を残して階段を駆け上ってどこかへ行ってしまった。

「少しだけ待っていてもらえますか」


 そしてその通り少し待っていると、やがて警備兵が戻ってきた。

「夜になったら、また来てください。話をつけてきました」

「神父さんに会わせて貰えるんですか?」

「ええ。通常の礼拝受付時間とはまた別に、特別に時間を頂けました。その点、重々承知の上でよろしくお願いします。ですのでここの所はまず、お引き取り願います」

「はぁ……」


 再び来た道を戻っていく一行。

「私をここに置いておきたくないってことでしょうね」

「特別に規約超過させてやるから、とっとと出ていけってことかしら。嫌な感じね」

「しょうがないですよ。一般の人にまで私のあれで迷惑かける訳にいかないですし」

「魔導エネルギーをか? 俺から吸ってれば問題ないんだろ?」

「向こうはそんな事情知ったことじゃないですよ」

「まあそうだけど……。なんかな……」

「それより露店でも眺めて時間潰しませんか。あの辺りは冒険者の溜まり場でもありますから、何か聞けるかも知れないですよ」


 ステアの提案で、再び露店街へ戻ってくる。

「さっきは気付かなかったけど、あっちの方になんか人が集まってるよな」

 それを聞いてメリルが密かに顔をしかめた。

「冒険者ギルドの出張所ですよ」

「ああ、あれが噂の……」

 冒険者とは未知の秘境や既知の名所などを腕っぷしひとつで旅して回る者達の総称だ。しかし今では騎士団が発展したこともあり、秘境などに眠る秘宝などがあらかた発掘されつくされてしまったのでわざわざ冒険に出る旨味は少ない。

 そのため今では事実上、依頼を受けて狂暴な猛獣や指名手配の犯罪者などを退治して報酬を求める者達を指す言葉になっている。単に賞金稼ぎ、と揶揄されることも多い。

 ギルドとはそんな彼らのためにある団体が出資をして設立された組織だ。冒険者同士の憩いの場にして情報交換を推進させたり、駆け出し冒険者に見合った依頼を斡旋するなどの援助を行う場所である。

 ショーマはつい物珍しくて余所見をしながら歩いてしまう。そして案の定、すれ違った他の冒険者にぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい」

「……気を付けろ」

 頭まですっぽりと覆うローブを纏った、ショーマよりもずっと背の低い子供だった。こんな子供まで冒険者として荒事に首を突っ込んでいるのかと驚く。

 いや、知識としては知っていたはずなのだ。冒険者は自ら望んでその立場になった者ばかりではない。やむにやまれぬ事情がある者も多いということを。なのに。

「…………」

「余所見してるからですよ」

「気を付けるよ」

「何も取られてないですか? ああいうスリの手口も多いですから」

「え……。いや、大丈夫っぽい」

「それはそれは」


 人の集まりの中心部へ向かうと、大きなテントがいくつか立てられているのがわかった。その下にはいくつものテーブルや椅子が並べられ酒場のようになっている。

「話、聞けるかな」

「飲んだくればっかりですもんね」

 そこは酒場らしく、酒の匂いとがやがやとした喧騒で一杯であった。ここから役立つ話を聞かせてくれる相手を探すのは難しそうだ。

「ねえ、あれは?」

 と、セリアが指を指す。テントの端、テーブルが少なくなっている辺りに大きな看板が設置されていた。

「あれは掲示板でしょうね。賞金首の人相書きとか貼られているわよきっと」

「へえ……。……賞金首?」

「見に行ってみる? あまり見たくないのも貼ってあるだろうけど」

 口元を押さえながらそう提案するメリルの言葉に、ショーマは引っかかるものを感じた。


 そしてすぐに理解する。

「あー、これね……」

 レウス・ブロウブ。罪状、王女誘拐。

 掲示板の最も目立つ中央部にでかでかと掲示されたその人相書きは、かつてショーマ達と行動を共にした頼れる小隊長のそれであった。

「殺したら褒賞金は9割減額ってあるから、賞金稼ぎに殺されるってことは無いでしょうね。そこは安心して良いんじゃないかしら」

「でも騎士団としてはレウスを殺す気がない、ってわけじゃないんだよな?」

「表向きは公開処刑をするつもりなので殺すな、ってことだけど」

「本音は騎士団長の弟だから殺したくないって?」

「みんなはそう思ってるでしょうね。……でも、その更に裏があるんだと思う」

「更に、裏?」

「……ここで話すのはちょっと」

「それもそうか」

 ショーマはレウス以外の人相書きも眺めてみる。あの魔人3人も載っていた。他にはまあ、いかにも悪そうなことしてそうな顔だとか、虫も殺さなそうな柔和そうな顔だとか色々ある。

 そんな中目についたのが、

「あれ、これさっきの……」

「え?」

 ローブの上から少し覗き見えただけなのではっきりしないが、先程ぶつかった子供によく似ていた気がした。

 名前は、ヘレナーディ・マルガンド。

 旧イーグリス王国騎士団の残党によって構成される反乱軍のリーダーと目される少女であった。

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