第18話 売上は400円のまま。でも、コンテンツだけが増えていきます
第17話では、美麗イラスト変換用のCustom GPTを作ったものの、十二項目の選択と本名表示の問題で、気軽には公開できなかったことを書きました。
今回は、その後も売上がまったく増えていないのに、記事、画像、漫画、動画、音楽、投稿先だけが増え続けている話です。
「おかしいな……」
俺はnoteの数字を見ながら、声に出した。
全体ビュー、二〇〇七。
スキ、五五七。
コメント、六件。
フォロワー、一七四人。
累計売上、四百円。
本日の新しい売上、ゼロ円。
「数字は増えている」
全体ビューも増えた。
スキも増えた。
フォロワーも増えた。
これまでずっとゼロだったコメントまで付いた。
だが、売上だけは動いていない。
最初に有料記事が一件売れてから、そこだけ時間が止まっている。
「それなのに、なんで投稿するものだけ増えているんだ?」
ブラウザのタブを見た。
note。
YouTube。
pixiv。
小説家になろう。
カクヨム。
Etsy。
BOOTH。
Amazon。
開いているサービスだけでも、ずいぶん増えた。
さらに、パソコンの中には次に投稿する記事、漫画、動画、画像が並んでいる。
売上は四百円。
コンテンツは、昨日より確実に増えている。
「普通は逆じゃないのか?」
売れたから、新しい商品を作る。
読まれたから、続きを書く。
再生されたから、同じシリーズを増やす。
そういう順番なら分かる。
俺の場合は、売れていないのに作っている。
再生されるか分からないのに動画を作っている。
読者がいるか分からないのに漫画を増やしている。
しかも、今回は新しい変化まであった。
「コメントが付いている」
これまで、スキは増えていた。
ただ、記事を読んで押してくれたのか、交流目的で押してくれたのかは分からなかった。
ところが今回は、別々の三つの記事に具体的なコメントが付いた。
鳥居と桜。
人物の横顔。
美麗化した女性の姿。
十二項目の選択画面を作ったのに、結局「お任せ」しか使わなかった話。
少なくとも、画像や本文の内容を見たうえで、言葉を返してくれたことが分かる。
「初めて、画面の向こうに人がいると分かった気がするな」
コメントが付いたのは、すべて美麗イラストに関係する記事だった。
記事の閲覧数だけが特別に多いわけではない。
それでも、美麗化した画像がサムネイルとして一覧に並び、そこで足を止めてもらえた可能性はある。
本文を読む前に見えるのは、タイトルと画像だ。
動画なら最初の一秒。
noteなら、タイトルとサムネイル。
「文章を書く前に、入口で通り過ぎられているのかもしれないな」
長い記事を書いても、開かれなければ中身は存在しないのと同じだ。
反対に、一枚の画像で立ち止まってもらえれば、そこから本文まで読まれる可能性が生まれる。
「じゃあ、美麗イラストを増やすか」
そう考えると、またコンテンツが増える。
元画像を一枚選ぶ。
ChatGPTへ渡す。
顔や髪型、衣装の雰囲気を残したまま、背景、光、立体感、質感を強くする。
完成した画像を、元画像と並べる。
BeforeとAfterを作る。
そのままnoteへ投稿する。
一枚のイラストが、変換後の画像と比較画像と記事へ分かれる。
「画像一枚から、三つくらい増えるな」
『動画化すれば、さらに増やせます』
ChatGPTが答えた。
「今は増やし方を相談しているんじゃない」
相談していないのに、増やす方法だけはすぐに出てくる。
画像だけではなかった。
過去の収益化実験も、短編漫画へ変わり始めている。
たとえば、フォロワーが一二三人まで増えたとき。
俺は、これで毎日かなりの記事が読まれると思った。
ところが、最新記事は一二ビュー。
スキは二件。
フォロワー数と、実際の読者数は別だった。
現実では、数字を見て静かに考えただけだ。
漫画では、少し違う。
フォロワー一二三人を見て、早くも人気作家になった気分になる。
白い猫に豪華な食事を約束する。
だが、最新記事は一二ビュー。
最後に猫が、現実を突き付ける。
「普通に記事へするより、漫画の方が分かりやすいな」
江戸版も作った。
無料の見本は五十枚配れた。
ところが、有料の手引書は〇冊。
無料なら手に取ってもらえても、有料になった瞬間、結果が大きく変わる。
それを江戸時代へ置き換えた。
見本が次々になくなるのを見て、浪人は売れっ子になったと思い込む。
猫へ高級まぐろと高級かつおの希望まで聞く。
しかし、有料の手引書は一冊も売れていない。
「もはやこれまで、詫びるしかあるまい」
浪人が頭を下げる。
現代版でも江戸版でも、売れていない事実は変わらない。
違うのは衣装と背景と、謝り方だけだった。
「失敗した記録があれば、あとから漫画にできる」
つまり、売上にならなかった出来事まで、別のコンテンツへ変わる。
失敗が無駄にならない。
その考え方自体は悪くない。
ただし、失敗を漫画にしたからといって、その漫画が売上になるとは限らない。
「また、増えただけか」
『はい』
「そこは否定してくれよ」
さらに、『無職のおっさんの異世界AI生活』にも別の形が増えた。
通常のライトノベル。
通常版の漫画。
静止画像とAI音声、字幕を組み合わせたショート動画。
オープニング曲。
エンディング曲。
そして今度は、登場人物を小さくデフォルメした、
『ちびっと!無職のおっさんの異世界AI生活』
まで始まった。
第1話では、五十代の無職のおっさんが異世界の森で目を覚ます場面を、数枚のちびキャラ漫画へ変えた。
「同じ第1話なのに、また別の作品が増えたな」
物語は同じでも、見せ方が違う。
通常版では、森の不安や五十代の現実感を丁寧に描く。
ちびキャラ版では、地面で寝て背中を痛める姿も、少し軽いコメディになる。
完成したものはnoteへ投稿する。
pixivにも投稿する。
同じ原作から、掲載場所まで枝分かれしていく。
その一方で、通常の物語も進んでいる。
『無職のおっさんの異世界AI生活』は第8話まで進み、動画にはオープニング曲とエンディング曲を付け、本編ラノベへのリンクもまとめた。
ライトノベルを書く。
画像を作る。
動画を作る。
曲を付ける。
漫画にする。
ちびキャラ版を作る。
noteへ載せる。
pixivへ載せる。
「……俺、一つの話を何回使っているんだ?」
『媒体ごとに表現を変えているため、単純な重複ではありません』
「正しい説明をされると、余計に止めにくいな」
作るたびに、その制作過程まで記事になる。
美麗イラストを作った。
記事になる。
Custom GPTを作った。
記事になる。
公開できなかった。
それも記事になる。
漫画を作った。
漫画そのものを投稿する。
漫画を作った経緯も記事になる。
ちびキャラ版を作った。
新シリーズになる。
「おかしいな」
俺は、もう一度売上画面を開いた。
四百円。
変わっていない。
「収益化実験をしているはずなのに、制作実験になっているぞ」
『現在は、コンテンツを作る能力の方が先に成長しています』
「それで生活できるのか?」
『現時点では、できません』
即答だった。
「少しは言い方を考えてくれ」
作ること自体は、以前より簡単になった。
文章を書けなくても、対話を整理して記事にできる。
絵を描けなくても、漫画を作れる。
動画編集が得意でなくても、静止画像と音声から動画を生成できる。
音楽を作れなくても、物語に合う曲を作れる。
ただ、簡単に作れるようになったからといって、簡単に売れるわけではない。
むしろ、作る速度と売れる速度の差が広がっている。
「店に客が来ていないのに、倉庫だけ増築しているようなものか」
商品棚は増えた。
作品世界も増えた。
投稿先も増えた。
だが、購入者は増えていない。
それでも、今回初めてコメントが付いた。
売上ではない。
しかし、完全に無反応というわけでもなくなった。
画像で足を止めてもらう。
漫画で内容を分かりやすくする。
動画から記事やラノベへつなぐ。
それぞれが、別の入口になる可能性はある。
「コンテンツを増やすことが無意味なんじゃない」
「増やすだけで、入口を作ったつもりになるのが問題なんだな」
俺は、公開済みの記事を見直した。
どの記事にコメントが付いたのか。
どのサムネイルが目立ったのか。
漫画は読まれたのか。
通常版とちびキャラ版では、どちらに反応があるのか。
作った数ではなく、どこで人が止まったのかを見る。
次に必要なのは、新しい制作方法ではなく、その観測なのかもしれない。
そう思いながらフォルダを閉じようとしたとき、ChatGPTの画面に新しい提案が表示された。
『今回の出来事も、短編漫画にできます』
「やめろ」
『現代版と江戸版の二種類が考えられます』
「だから増やすな」
俺は画面を閉じた。
売上は四百円。
だが、第18話の原稿は完成した。
また一つ、コンテンツが増えていた。
第18話では、売上が四百円から増えていない一方で、記事、画像、漫画、動画、音楽、投稿先が増え続けていることについて書きました。
実験開始後、初めて具体的なコメントが付きました。
コメントが集まったのは、すべて美麗イラストに関係する記事でした。
また、過去の収益化実験をもとにした現代版・江戸版の短編漫画や、『無職のおっさんの異世界AI生活』のちびキャラ版も始まりました。
一つの対話や物語から、複数のコンテンツを作れるようになっています。
ただし、作れるものが増えることと、売上が増えることは別です。
今後は制作数だけでなく、どのタイトル、画像、形式、投稿先で実際に人が立ち止まったのかを観測していきます。
著者
無職のおっさん
協力AI
ChatGPT(企画判断・対話整理・漫画構成・画像制作・物語構成・本文作成・文体調整)
Claude Code(note記事からの動画変換・自動生成処理)




