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第13話 助けた結果、昇級と世界の説明が始まった ――褒められてるのに全然軽くない――

今回は前半ホラー全振り、後半は世界の話が一気に進みます。

※怖いのが苦手な方は、音・視線・判断ミスにご注意ください。


挿絵(By みてみん)


 夜の村には、音がなかった。 


 正確に言うなら、「音が存在しない」のではない。

 音を出した瞬間に、何かが始まる――そんな気配だけが、空気に張り付いている。


 俺たちはあれから脱出ルートを探索していた。ダイブから抜けられないのだから、仕方ない。

 今日も村やその周辺をいろいろ探し回っていた時のことだった。

 

 探し回っても何も見つからない徒労感の中、探索を続けており

 しばらく、誰も口を開かなかったときのこと――


 風の音すら遠く、

 村全体が()()している。


 その沈黙を破ったのは、マスターだった。


「……さっきから気になってたんだけど!!」


 前を歩く女の背中に、声を投げる。


「俺たち、あんたの名前を知らない」


 一瞬だけ、足が止まる。


 振り返らないまま、女は答えた。


「……今?」


「今じゃなきゃ、聞けない気がした」


 少し間があった。

 HUDのノイズが、微かに走る。


 やがて、彼女は小さく息を吐いた。


「カナエ」


 それだけだった。


「それ以上は?」


()()()()()()()


 彼女は歩き出す。


「そのときに話す」


 名前を聞いたはずなのに、

 何一つ、分かった気がしなかった。


 それでも——

 不思議と、背中から目を離してはいけないとだけは分かった。彼女といさえすれば、なんとかなる気がする――


 そんな時――

 地面に落ちた瓦礫を踏まないよう、足を運ぶ。

 それでも、砂利がわずかに擦れる。


 ――ジャリ。


 その音が、やけに大きく感じた。


 喉が鳴りそうになるのを、必死で堪える。


挿絵(By みてみん)


 視界の端で、HUDが歪んだ。

 警告文らしきものが流れるが、文字が潰れて読めない。


「……マスター」


 ルステラの声は、いつもより遅延して聞こえた。


「ココでハ、

 ()()()()()()()()


 冗談じゃない。

 “見てはいけない”場所なんて、どうやって進めばいい。


挿絵(By みてみん)


 そのとき――


 カラン


 遠くで、何かが倒れる音がした。


 反射的に首が動きかける。

 だが、腕を強く掴まれた。


「ダメッす先輩!!」


 ナツだった。

 声は抑えられているのに、必死さだけが伝わってくる。


「今の、完全に“振り向いたら死ぬ音”です!」


「……分かるのか?」


「分かります!

 体育館の夜練で、誰もいないはずなのに

 ボール転がったときと同じです!」


 納得できてしまう自分が怖い。――てかこんなときになんだが。ナツはなんで女子高生か中学生みたいなことを知ってるんだ――?ここ、異世界だろ。


 そのとき、背中に小さな衝撃。


「……っ」


 振り返らずに視線だけ落とす。

 そこにいたのは、()()だった。


 いつの間に。

 気配すら感じなかった。


 抱き上げると、子供は俺の服を掴んで離さない。


「しずかに……」


 小さな声。

 呼吸が震えている。


「ここ、だめ。

 ()ラ《・》レ《・》タ《・》ラ、とられる」


 その言葉に、背筋が冷えた。


挿絵(By みてみん)


 視界の端で、何かが動いた。


 人影。

 ……いや、人の形を模した何かだ。


 足音はしない。

 呼吸もない。


 なのに、“そこにいる”と分かる。


 ナツが、ゆっくりとしゃがむ仕草をした。

 合図だ。


 全員、音を殺して身を低くする。


 影が、ゆっくりと移動する。


 ……通り過ぎた?


 いや、違う。


 見られている。


 子供が、俺の耳元で囁いた。


「……いま、()()()


 心臓が跳ねる。――爆発してしまいそうだ――


 ナツが、唇を噛みしめて前に出た。


 彼女が足を進めた瞬間だった。

 視界の隅で、HUDの表示がわずかに()む。


「……止まって」


 低い声だった。

 背後から、()いのない調子で。


 全員が一瞬、足を止める。

 カナエは、いつの間にか一歩前に出ていた。


「今、進むのはやめたほうがいい」


「理由は?」


 問い返すと、彼女は首を横に振った。


「説明できる段階じゃない。

 でも——」


 彼女は、崩れかけた家屋の()に視線を向ける。


「この先で“走る”と、誰かが置いていかれる」


 その言葉と同時に、HUDが一瞬だけ乱れた。

 ノイズ混じりの文字列が、視界の端を滑る。


《ERROR / STEP DESYNC》


 読めたのは、それだけだった。


「……わかった」


 マスターが短く答える。


 カナエはそれ以上何も言わなかった。

 ただ、いつでも誰かを掴める位置に立ったまま、先を見据えている。


 まるで——

 「ここから先で、落ちる人間が出る」と知っているみたいに。



 カナエはしばらく様子を探ると、その辺にあった 拾った小石を、全力で反対方向へ投げる。


 カラン!!


 乾いた音。


 影が、そちらを向いた。


「今だ 走れ!!」とカナエが叫ぶ。


挿絵(By みてみん)


 走る。

 振り向かない。

 見ない。


 背後で、誰かに名前を呼ばれた気がした。

 声は知っている声だった。


 それでも、見ない。


 ――境界線を越えた瞬間。


 音が、消えた。


 ただの夜が、そこにあった。


挿絵(By みてみん)


「……ただいま」 俺たちが疲れ切った顔でダイブルームから戻ると、そこにはいつものギルドの面々が待っていた。


「ちょ、ちょっと!!マスターたち!!とても心配してたんですよ?

 ――それに、その子どうしたんですか!?」


 ナツキの悲鳴。

 同時にイツキが帳簿を閉じる。


「怪我は?」いつも通りの彼女だ。


「ない……はず」


「“はず”は信用しない。...ダイブでも身体にリンクするからね。

 はい座って。ナツ、水」


「はいっス!」


 ナツの動きが早い。

 完全に慣れている。


 フー子は煙をくゆらせ、俺と子供を見た。


「……やっちまった顔じゃの」


昇級発表


「では!――正式に発表します」


 イツキが淡々と告げる。


「マスター。ナツ。今回のクエストで、昇級試験を無事終えられたため

 あなた方を黒曜等級(こくよう)へ昇級とします」


 ざわめき。


 同時に、別のHUDが映る。


挿絵(By みてみん)


 白磁はくじ


 変わらない。


 タニシは、こちらを見ずにうつむき、笑わなかった。


世界の話


「この世界はな」


 ギルマスが言う。


「育成の場じゃない。

 選別の場だ」


「子供は()()()です」


 イツキが続ける。


「予測不能。

 だから回収される」


「取られた子は……」


 フー子が低く言う。


「ロストチルドレンになる」


 子供が、俺の服を掴む。


「……にげたかった」


「だからダイブさせてたんです」


 ナツキが、悔しそうに。


「現実よりマシな場所を探して……」


 ギルマスが俺を見る。


「お前さんは、それを壊した」


「助けただけです」


「それが一番、厄介なんだ」「……今回は、“止められなかった”ってことだ。

 理由は知らなくていい」

いつも通りギルマスは何かを知っていそうだが、聞いたとしても教えてくれないだろう。

――いつか、俺にだけ語ってくれることはあるのだろうか。


ラスト


 タニシは背を向ける。

「……なんでだよ。なんで、俺だけ...」


挿絵(By みてみん)

 ノイズが、静かに走った。

 

 つづく。

昇級は嬉しいはずなのに、背中が寒い。

それが、この世界の“ご褒美”でした。


主人公の現在のステータス

名前:NO NAMEマスター

等級:黒曜こくように昇級 (ナツも昇級した)

危険度:非表示(増加傾向)

観測度:非表示(増加傾向)

SAN値:低下

カルマ値:不明

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