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第10話 ハーレムと討伐の始まり

 初めての城下町見学から一週間後、魔王討伐の旅への出立日を三日後とする事が決まり、馬車や物資の準備が慌ただしく始まった。

 そしていよいよ明日が出立という日の夜、王城内の竜也の自室のドアがノックされる。健かオッサンか、もしかして弥生ちゃんが「緊張で眠れない」なんて言ってきたりして、と期待に胸を膨らませた竜也がドアを開けると、そこには意外な人物が立っていた。

 エリス王女である。


「こんな時間に御免なさい。お邪魔しても宜しいかしら?」


「あ、ええ。どうぞ。」


 竜也はエリス王女を部屋へ招き入れた。


「分かってると思うけど、王女様に出せる様なお茶も茶菓子も無いぜ。座る所は…硬い椅子と柔らかいベッド、どっちがいい?」


「ふふっ、ではこちらへ。」


 そう言ってエリス王女はベッドに腰掛けた。


「それにしてもタツヤ様は口の利き方は召喚された時と何も変わらないんですね。」


「気に障るかい? 障っても直す気は無いけどな。」


「いいえ、新鮮でいいですわ。むしろそのままでいて欲しいくらい。」


 きめ細かいサラサラの金髪ストレート、澄んだ青い瞳、お嬢様然とした顔立ち。竜也的には同じ美人でも、こういう高嶺の花タイプよりも愛嬌を感じる庶民タイプの方が好みなのだが、美人は美人、悪くは無いと思う。


「それで用件は何だい? こんな時間に。」


「タツヤ様!」


 エリス王女はタツヤの名前を叫ぶと唐突に抱き付いた。


「魔王討伐など本当は行って欲しくありません! でもお許しください。魔族は討ち滅ぼさなければならない存在なのです…。」


 エリス王女は竜也の顔を見据え、その目から涙を溢れさせる。


「ちょ、王女…。」


「お慕い申し上げます。タツヤ様、召喚したあの日、あの時からあなたの事が頭から離れず、身体の疼きが止まりません。はしたない女と蔑みください。でも…あなたを愛してしまいました。」


 あまりに突然の告白にタツヤの心拍数はとんでもない事になっていた。まさか王女から始まるルートとは!


「はしたないだなんて思わないさ、王女様。」


 竜也はエリス王女の涙を指で拭ってやり、そのまま優しく唇を重ねた。


「王女なんて呼ばないでください。どうか名前で、ただ『エリス』と…。」


「エリス、俺を信じろ。魔族どもは全員ブチのめしてやるよ。」


「ああ、タツヤ様、信じております。私はもうあなたの物、信じるしかない身となりました。」


 その言葉を聞きながら竜也はエリス王女のドレスの紐を解き、まだ男を知らない裸体を露出させる。


「この身の疼きも収めていただけるのですね、嬉しい…。」


 竜也は自らの着衣を脱ぎ捨てるとそのままエリス王女を押し倒す。


「信じております! もうタツヤ様だけです! どうか魔族を!」


「任せろぉ!エリス! おまえを悩ませる様な奴はみんな俺がブッ殺してやるぅ!」


 その夜、竜也は久々に女体の快楽を貪った。





 翌朝、王城正門前には“魔王討伐団”の馬車が並んでいた。

 そこへ寝不足の目を擦りながら竜也が現れた。結局、エリス王女とはついさっき、朝までヤリまくった。


「おはようございます、兄貴! いよいよッスね!」


「お~う…。」


「お、おはようございます、竜也さん。」


 自らデザインしたエロファンタジー衣装に身を包んだ弥生が挨拶する。


「おはよう、弥生ちゃん。」


 弥生は確かに元の世界でコスプレイヤーをしていたが自撮り専で、人前にその姿を晒す事にはまだ慣れていない。少し恥ずかしげだ。


「似合ってるから、堂々としていればいいよ。」


「は、はい、ありがとうございます。」


「あいつの衣装のデザインも弥生ちゃんが頼まれてしたモンだろ?」


 竜也の視線の先には同様にエロファンタジー衣装を着用した麗華がはしゃいでセクシーポーズをとっている。その衣装は弥生が自分の衣装を初披露した時に、羨ましがってデザインを依頼した物だ。


「はい。初めてこの衣装を見せてあげた時に『自分も欲しい』って駄々こねちゃって。あはは…」


 弥生が思い出し笑いしながら答え、竜也も笑いながら言う。


「あいつを見習えばいいよ。」


 おお~、弥生ちゃんエロ衣装、神だわ~。さっきまで王女とヤリまくってたのに、これは別腹だな。やっぱ弥生ちゃん最高。


 さて、魔王討伐団は四人編成パーティー二組と御者や料理人などのスタッフ七名から成る総勢十五名を馬車三両で移動する構成になった。

 先頭一号車は御者がゲックレン・ザーバー(近衛騎士団所属)、搭乗するのは第一パーティーメンバーの竜也、ドゲザー(健)、オッサン、それに十年召喚勇者の魔法弓士グレン・ラーベルの四人と料理人で冒険者のジルバート・ホーシェンス、鍛冶師のマック・リー。

 二号車は荷役馬車で野営具や水、食料等を積み込んでいる。御者はセベ・メルファン(近衛騎士団所属)。

 三号車は御者がラフカ・ジョーンズ(近衛騎士団所属)、搭乗するのは第二パーティーの弥生、礼二、舞美、麗華。それに医師のサン・ジャン・ペイス、馬具と馬車の修理技師アーレン・デグリネ。

 団長は全員一致で竜也が推挙された。竜也にしてみればいい迷惑である。


「じゃあ出陣といくか。」


 いよいよ動き始めた馬車の窓から竜也が王城をの方を見ると、エリス王女が心配そうな顔でこちらを見送っていた。


「何も心配要らねえよ…魔族どもなんざ片っ端からブッ殺してやるさ。」


「おお、兄貴、何か気合いが入ってますね!」


「ん…まあな。」


 竜也たちの魔王討伐の旅は王城正門から王都外郭正門まで、魔王討伐団を一目見ようと住民が集まり声援を送る派手な出陣となった。





「父上!」


 シェーン王子が妻とくつろぐイーバル国王の元へ怒鳴り込んできたので、イーバル国王はちょっとイラっとした口調で返事をする。


「何だ、どうした?」


「どうしたもこうしたもありません。たった今ジャスクから魔王討伐団の進軍ルートを聞きましたが、何ですかあれは!」


「ふん、エリスが策定した物だ。問題あるまい。」


 またそれか! どうしてそこまで妄信できる?

 踵を返してイーバル国王の元から立ち去ると廊下をドスドスと怒りも露に進み、今度はエリス王女の部屋の前まで来ると乱暴にドアをノックした。


「エリス! エリス!」


「どうされたんですか? お兄様、騒がしい。」


「大事な話だ、入るぞ!」


 シェーン王子はエリス王女を押し退けるように部屋に入ると、ドアを閉めてソファーに座ったエリスを問い詰め始めた。


「魔王討伐団の進軍ルートはおまえが策定したそうだな。あれはどういうつもりだ?」


「何か問題でも?」


「大アリだろう! レルシェンの真ん中を突っ切るルートじゃないか! あらゆる意味で『どうしてこうなった?』だ! 報告にある魔王の拠点への最短ルートはダグザール経由だろう? どうしてこんな大回りになる?」


「ダグザールとは小競り合いとはいえ交戦状態ではありませんか。危険過ぎます。」


「その程度で潰れる様なら魔王討伐自体が無茶振りだろうが。

 いや、それよりも、だ。ウチとレルシェンの関係をブチ壊す気か? 我がレハラントとレルシェンは国交こそ無いものの、二百年前に時の国王ダンスタット様が国際魔法士連盟の後見で、やっとの思いで不戦の紳士協定を取り付けた関係だぞ。

 今回召喚した者たちには魔族の事も、政治的な事も、ほとんど教えていないんだろう? そんな連中が現地で相手が魔族だからと大暴れしてみろ、世界中から悪者にされるのはこっちだ。」


「あら、まるで今はそうじゃないかの様な口ぶりですわね、お兄様。私に言わせれば、そうなったとしても現状と大差ありませんわ。」


 エリスはあっけらかんと答える。


「今はまだ戦争状態にあるのは北東のダグザール国境だけ、しかも小競り合いのレベルだろうが。だが、レルシェンがウチから損害を受けたと苦情を訴えれば、世界が相手、全国境が全面戦争の最前線に早変わりという事態になりかねん!

 いくら十年勇者を多数揃えているからといって、基本的に我が国にそんな戦争を耐え切る体力など有る訳が無かろう、ひと月と保たずに王都陥落だぞ!」


「いいじゃありませんか。世界相手に戦争。」


「…おまえ…何を言っている? 狂ったか?」


「まあ! いくらお兄様とはいえ失礼な事を言わないでください! 大丈夫です、ちゃんと上手くいきます。」


 シェーンは背筋が凍り付く感覚を覚えた。


 『上手くいく』だと? それはまた、おまえにとって“だけ”上手くいくって事じゃないのか? 断言していい、こいつはまた一人勝ちするつもりだ。しかも今回は規模が違う! 国家間の戦争さえ利用するつもりか。

 くそ、「勇者さえ召喚すれば魔王の問題は勝手に片付くだろ」と楽観視して召喚者に気を留めなかったのは失敗だった。おかげで進軍ルートを知ったのは出陣後になってしまった。

 これ以上、後れを取る訳にはいかん。俺も事を進めなければ…。


 シェーン王子はエリス王女の部屋を出ると、ギリッと歯軋りをしてジャスクのいる近衛騎士団詰所へと向かった。

 一方、シェーン王子が去って行った部屋ではエリス王女がティーカップを手に取り紅茶を飲む。


 あ~…まだアソコが痛いですわ。初めてだというのにタツヤったら激し過ぎるんですもの。破瓜とはあんなにも痛いものなのですね。

 でも…。


 ティーカップをソーサーに置いた時、エリス王女の口元に笑みが浮かんだ。


 タツヤたちは実際に魔族と遭遇した場合、躊躇う可能性があった。それどころか対話すると叛旗を翻す危険すらある。

 だからリーダー格のタツヤにあんな小芝居を打って「魔族は滅ぼすべきもの」と徹底的に刷り込んでやった。これでタツヤは魔族を発見次第、迷わず手にかけ、殺しまくるでしょう。タツヤにはウチの近衛騎士団長にも匹敵する、リーダーとしての強い牽引力を感じます。他の者はリーダーに従って付いていくでしょう。

 処女まで捧げたんです。結果を出してくれなければ打ち首モノですよ? タツヤ。

 そしてレハラントは世界を敵に回します。


 エリス王女の笑みが目つきと共に邪悪なものへと変わる。


 勇者対魔王に“五大災厄”は基本、不干渉。接触できる可能性は十分と言えません。

 ならば手数を増やすまで!

 魔王戦以外に“五大災厄”が関心を持ちそうな大事件を次々引き起こして姿を現す可能性を高めます!


 そして慈愛溢れるいつもの顔に一瞬にして戻った。


 密偵の報告では魔族側の召喚者はまだ動き出していません。あちらにはあちらの予定があるのでしょうが、こちらの勇者が出陣したとなれば、予定を前倒しして動き出すでしょうね。


 エリス王女は窓から空を見つめながら憂いの表情を見せる。


 …タツヤ、小芝居はしたけれど、あなたへの気持ちは決して嘘では無いんですよ。でなければ、初めてを捧げたりはしません。同じ刷り込みをするのでも別の手段を選択します。

 空間操作のレアギフト持ち、継承で剣術スキルがあるという事は元の世界で高い才覚と技量を併せ持っていた証拠、強いリーダーシップ…。

 何よりも容姿が私の好みド真ん中♥

 召喚の日、ギフト判定の時から決めておりました。我が夫になるのはこの人しかいないと。

 進軍ルートは有り得ない程の大回り、言い訳を探すのに苦労しましたわ。たっぷりと時間をかけて進軍してくださいね。きっとその間に魔王戦の決着はつくか、あるいはつかなかったとしてもレハラントは魔王戦どころの状態では無くなり、帰還命令を下さざるを得なくなります。


 エリス王女の顔に再び笑みが浮かぶ。


 そうして“五大災厄”と会って目的を叶えられたら、二人で未開地域にでも逃げ込みましょう。魔族側への亡命でも構わないわ。

 種馬としてその優秀な遺伝子、たっぷりと私の子宮に注ぎ込んでくださいね♥





 魔王討伐団は魔属領レルシェンとの国境にあるザックレイ砦を目指す。到着予定は一週間後だ。

 竜也はその間にハーレム正妻候補である弥生との関係を進展させたかった。エリス王女と順番が違ってしまったが、竜也の本命はやはり弥生だ。しかし、移動中は別の馬車で会話の機会は見込めない。チャンスは食事休憩と夜しかなかった。親密度は高い。が、これを恋愛感情に進展させるには…と、思案する竜也にジルバートが声を掛けた。


「タツヤさん、俺の<生体探知>魔法に感アリです。人間ではありません。中型魔獣、前方右手、約三〇〇セルべ。」


 ジルバートは冒険者として“探知系魔法持ち”を売りにしている。探知系魔法というのは習得に当たって適性に左右される部分が非常に大きく、誰でも習得可能という訳にはいかない種類の魔法だ。適性があったとしても基本的な<動体探知>までなら持つ者は多いが、生命体そのものを探知可能な<生体探知>を習得している者は限られ、さらにその種類を波動や行動パターンで判別出来る熟練者はレアである。


「単純に三〇〇セルべなら確実に目視可能な距離だが…やはり障害物があると分からんな。

 ザーバー、馬車を一旦止めてくれ。ドゲ…健は降りて後続車に通達、弥生に<望遠>で発見してもらう様に。発見後、監視と警戒をしながら進み、敵性行動が確認できたら迎撃だ。」


「先手必勝で、こっちから狩らないんスか?」


「国内では拠点での補給が約束されているとはいえ、伴走の物資は限られているんだ。魔王と魔族以外との戦闘行為は回避可能とあらば回避する。」


 ザーバーたちは「ほう?」と感心する。ドゲザー(健)は三号車の弥生に指示を伝えに走り、やがて戻って来た。


「見えたそうッス。何かキモイ、ウニョウニョしたのがいるって。」


「よし、じゃあ進むぞ。」


 一行は再び進み始め、やがて“ソレ”の姿が竜也たちにも確認出来た。


「うわぁ…キモ…。」


 表面が緑と赤の縞模様でテラテラ光る粘膜質、その真ん丸な球形の胴体の上部からナメクジの様に突き出た三本の触角と下に伸びる無数の茶色い触手状の脚が蠢く。


「講義で聞いた“マクブーブー”って奴じゃないですかね?」


 オッサンにジルバートが答える。


「その通りです。空腹状態だと狂暴な奴ですよ。しかも結構手強い。」


 馬車は進んでマクブーブーの真横を通り過ぎる。敵性行動は見られず、マクブーブーはその場でウニョウニョと触手を動かしているだけだった。


「どうやら奴さん、今は満腹の様だ。このままやり過ごそう。」


 その時、竜也たちの目に飛び込んだのは地面に散乱した刀や靴、鞄だった。そしてマクブーブーの触手の合間から見え隠れする人間の腕と足。


「誰か…襲われた直後の様ですね。」


 ザーバーが呟く。


「あんにゃろ…っ!」


「よせ。」


 馬車から飛び出そうとしたドゲザー(健)を竜也が止めた。


「赤の他人だ、割り切れ。魔獣と渡り合える力も無いのに街の外に出た奴が悪いと自分に言い聞かせろ。」


 それはその台詞を発する竜也の、自分自身に向けての言葉でもあった。

 そう、ここは900年経っても死が間近にある世界なのだ。


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