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イタ告から始まる恋を信じてもいいのか?  作者: 二狐
幼い頃に馴染みがあった人
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幼い頃に馴染みがあった人 2/6

 次の日、相変わらずだらだら支度して、家を出た俺。

 今日は柄にもなく早く家を出たんで、ゆっくりチャリを漕ぎながら学校へと向かう。

 すると、昨日のあの交差点でまた信号待ち。

 何となく嫌な思い出が頭に浮かんで、朝から少し気分が悪い。

 ボーっと待っていると、俺の左側から声がした。


「せーんぱいっ!」


 その明るい声、一瞬で千野のものだと確信した。

 目を向けると、満面の笑みを浮かべた千野がそこにはいた。


「お…おう、千野! お、おはよ!」


 相変わらずの吃り具合。

 ぎこちない挨拶をする俺に千野は言った。


「あーっ! 先輩、約束と違いますよ! 私のコトは『千野』じゃなくて『美沙』って呼んでくださいよ~?」


「い、いや…さすがに美沙って呼ぶのは抵抗があるっていうか何というか…」


 童貞コミュ障陰キャキモオタ男子にとって、さすがに年下女の子の事を下の名前で呼ぶのには抵抗があった。


「まぁ、先輩が対人恐怖症なのはわかってますし、全然ゆっくりでいいですよ! 私を練習台に使っていただいて結構ですし!」


 気を遣ってくれるのはありがたいが、あんまり人から対人恐怖症とか病人認定されると気分が悪いな。


「あ、ありがとうな…。み、美沙…」


 俺自身、言ってて小っ恥ずかしくなった。

 しかし、千野も俺の言葉のせいか分からないが顔を赤らめて恥ずかしがっていた。


「べ、別に私は言われ慣れてますから! ぜ、全然恥ずかしくないですし! あーなんか今日は暑いなー! 主に顔付近が!」


 照れ隠しか知らんがやたら喋る千野だったが、俺も凛以外の女の子の名前を呼んだ記憶って全然なかったから、正直やばかった。

 裏返った声で、俺は続けた。


「ま、まぁとりあえずは『千野ちゃん』って呼ぶようにするわ! 下の名前で呼ぶの全然慣れねぇし!」


 千野も裏声になりながら返した。


「そ、そうですね! まだ下の名前呼び捨ては先輩には早いかもですね!」


 なんて話しているうちに信号は青になった。

 まだ登校の時間に余裕もあったので、俺は千野と二人で歩きながら登校することにした。

 そこで、ふと気になって俺は尋ねた。


「そ、そうだ。そういえば千野ちゃんってさ、家はどの辺なの? 学校まで歩いて来てるみたいだし、結構近い?」


 千野は少し考えながら答えた。


「そうですね~、浅葱野高校までは歩いて二〇分くらいですかね」


「あぁ、じゃあそんなに遠くないんだね。でも自転車のほうが速くない?」


 俺の返答に対し、千野はこう返してきた。


「先輩、わかってませんね~。女の子は甘いスイーツを沢山食べた分、こうして運動して、エネルギーでカロリーを相殺してるんですよ」


 ニヤニヤしながら話す千野。

 相変わらず可愛い。


「そ、そっか。あはは…」


 苦笑いする俺に、今度は千野が質問してきた。


「そういえば先輩って、私と同じ東浅中(とうせんちゅう)でしたよね? もしかしたら、先輩の家と私と家、近いかもですよ~?」


 びっくりして俺は聞き返した。


「え、おい。なんで俺が東浅中だって知ってんだよ⁉」


 まさに俺が通っていたのは、東浅葱(ひがしあさぎ)中学校(通称:東浅中)に間違いはなく、この事は友達のいない俺が誰にも言うはずがなかった。

 すると、千野は戸惑った様子で俺に言った。


「え、先輩、私に見覚えありません?」


「いや…ごめん、全く記憶にない」


 こんな美少女、あの中学にはいなかったと思う。


「えぇ~なんでぇ~。私は先輩に見覚えあるのにぃ~」


「え! どこで⁉」


 目立たなかった俺が、どこで見かけられてたというのか。

 俺は中学時代、本当に暗黒時代という名が相応しいくらい、絶望的な生活を送っていた。

 部活や文化祭なんかには一切顔を出しておらず、学校でも基本的に教室から出ず、机に伏せていた俺を、後輩である彼女が見かけるなどという可能性は、正直に言って皆無に等しかった。


「え、あ、その…いや、何ていうか…」


 胡麻化すのが下手くそな千野は、言葉をほとんど発せていなかった。

 結局観念して、千野は話す決意を固めたらしく、俺にこう言った。


「じゃあ、今日のお昼ご飯の時に話します。全部、洗いざらい」


 覚悟が決まったような面持ちで俺にそう告げた千野に、俺も覚悟を決めた。


「お、おう。どんな話でもどんとこい」


 そんな会話をしていた俺らを、ずっと睨みつけてくる奴がいた。

 その事に、千野も気付いたようだった。


「ねぇ先輩、あそこで私たちのコト睨んでる人、先輩の知り合いか何かですか?」


 その鋭い眼光の主の正体は、一目でわかった。


「いや、知り合いじゃないし、知り合いたくもないな、あんな奴」


 凛は俺に向かって、怖い表情でその目を向けていた。

 正直、俺が何かあいつにとって不都合なことをしたのか全く記憶になかったが、昨日の様子からするに、千野と一緒にいるのが気に食わないんだろうな。

 マジで一ミリも理由はわからんけども。

 とにかく、『幼(い頃)馴染(があっただけで今は何の関係もない女)』風情が、何を言ってこようが俺には関係ないし、考える気にもならなかった。


「ホントですか? じゃあいいんですけど」


 その千野の一言で、この話は解決だ。

読んで頂きありがとうございました!


次回投稿までしばらくお待ちください!

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