群青と漆黒 4/6
俺は、中学時代にいじめられていた。
何故俺がいじめられていたのか、全く分からなかった。
何故俺だけが不幸で、周りが幸せそうにしているのか、俺には理解できなかった。
死にたかった。
俺が生きている事で、俺だけが不幸なのであれば、俺が生きる意味など無いのではないか。
俺の“死”を、誰もが喜んでくれるのではないか。
そうやって己の精神を自ら病み、何一つ変わらない無間地獄の日々を耐え忍ぶばかりだった。
青い春を思うはずの俺の思春期は、もう真っ黒に黒ずんで使い物になりそうにはなかった。
中学時代、二年生の春。
毎日俺は掛川凌とその取り巻きに散々暴力や悪質な嫌がらせを受けていた。
俺が持って来ていた水筒のお茶を何度も頭に掛けられた。
腹パン、肩パンなんて当たり前、胸ぐら掴んでボコボコにされるのなんて日常茶飯事だった。
上靴はいつも校庭の裏の池に捨てられていて、上靴は常に履いていなかった。
教科書はボロボロ、俺が持っていたノートは殴り書きの俺の悪口で埋め尽くされていた。
弁当箱はいつもゴミ箱に放り込まれていて、いつも空腹状態だった。
そんな俺の姿を見て、凛はクラスに迎合し、最後は俺を見捨てた。
誰一人として、俺に構う者はいなかった。
幼馴染の凛ですらこの俺に見切りをつけ、俺の心の拠り所は何一つ無くなってしまった。
そんな中、手紙を使って嬉しい知らせが来た。
授業中に俺へと回された手紙。
女子からだった。
「春日くんへ
好きです
付き合ってください
水無瀬冴羽」
水無瀬は美人で、クラスでも中心人物のお転婆な女の子だった。
まさかいじめられている俺が、カースト上位の女の子に相手にされるだなんて思っても見なかった。
千載一遇のチャンスだと思った。
彼女と付き合えるならば、彼女に今の苦しい状況を良い方向へと変えてもらえる気がしていた。
俺は彼女に一縷の望みを託すべく、OKの返事をした。
そんな彼女に相手にしてもらいたくて何度も話しかけたが、まるで相手にしてもらえなかった。
「ごめん、用事あるから」
「ごめん、この後予定あって」
そんな感じではぐらかされる日々。
まともに取り合ってもらえず、不信感が募っていく。
彼女は本当に俺の事が好きなのだろうか。
約三ヶ月の間、学期が変わっても俺の誘いに乗らない彼女に、再び俺は彼女を誘おうと、放課後彼女の元へと向かうことにした。
しかし話しかけようとした彼女は、教室で掛川凌と一緒にいた。
俺の事をいじめる主犯格の掛川と、水無瀬の会話が聞こえてきた。
俺はその会話を教室の外で聞き、絶望し、憤怒し、戦慄した。
「ねぇ、最近めっちゃ春日に誘われるんだけど」
「ははは! ホント大変だな! お前(笑)」
「でもホント酷くない? いくらなんでも罰ゲームに負けたからって、あの春日にイタ告とか正直キツすぎるわ~」
「いいじゃん、どうせクラス全員俺らが付き合ってんの知ってるわけだし。あくまで罰ゲームじゃんか」
「でも春日は気付いてないんだよね~。相変わらずあんだけしつこく誘ってきてるワケだし(笑)」
「可哀そうな春日(笑) どうせ俺らの株が下がるなんて事無いのに、あいつ一人だけ滑稽だわ(笑)」
…思い出すだけで、背筋が凍る記憶。
何度でも再生できる、リプレイ動画のように鮮明に残っている。
やっぱり俺は騙されていた。
こんな虫のいい話、あるはずがなかったのだ。
俺が、こんな俺が、これっぽっちの俺が、誰かに救ってもらおうなんて夢物語思い描いて、何の意味もない期待して、俺一人が馬鹿見て、俺一人が悔しくて、俺一人が死にたいなんて…何やってんだ、俺。
涙を堪えながら歩く帰り道は、ただただ虚しかった。
何一つ頼れる物を失った、というよりも元より無かった事に気がついたと言うべきか。
読んで頂きありがとうございました!
次回投稿までしばらくお待ちください!




