救えない人、掬えない意図 4/6
「……凛はなんで急に俺に話しかけようと思ったんだ?」
凛はビクッと反応すると、少し焦っていたようだった。
「べ、別に理由とかどうでもよくない!? 何も理由なんて無いって!」
「それにしても何か引っかかるんだよ、昨日から急に俺に構ってくるからさ…」
「何か不満!? 嫌なら嫌って言えばいいじゃん!」
そう取り乱す凛は何故か涙目だった。
周りの視線が俺たち二人に集まる。
「いや…その…何でなのかなって思っただけ。だって中学以来口訊いてなかったし、俺はてっきり嫌われてると思ってたからさ…」
「あたしは一度だって優を嫌った事なんて無かった! むしろ優があたしを嫌ってるんじゃないかってずっと不安だった…。あたしは辛い思いをしてた優に何一つ優しい言葉を掛けてあげられなかったから…」
そんな事ずっと抱え込んで今日まで生きてきたんだな、こいつ。
正直俺は、凛と俺は相思相愛ならぬ相恨相憎の関係だと思っていた節があった。
俺は中学時代、いじめをきっかけに突然凛が俺と距離を置き始めて、まるで他人同様の関係をあっちから強要してきたから、あいつは俺の事が嫌いなんだって思ってた。
「いじめられてしまうような弱い男子はダサい」なんて腹の底で思われていそうで、それ以来俺も凛を嫌い始めていた。
避けられてた理由だってきっといじめが原因だった事くらい、頭の悪い俺だって理解できた。
俺はそうやって、勝手に相手の感情を決めつけて、己のエゴで自ら突き放していたという事に、三年越しの今日気が付いたのだった。
凛は続けて言った。
「だからあたしは、今日優が深瀬さんに話しかけてたの、凄く立派に見えたの! あたしにはそれができなかった…。だから、優はもっと自分がした事に自信もって良いんだって!」
「…ごめん、なんか色々勘違いしてたみたいだわ、俺。凛がそんな風に思ってたなんて、今日初めて知った。俺、もっと他人の心分かるようにならないとな」
俺は色んな感情が渦巻きすぎてどんな表情をしていればいいのか分からず、とりあえず笑って見せた。
凛が俺を嫌っていなかったことが嬉しくて、でもそんな凛を嫌っていた俺が憎くて、その凛が俺の今日の行動をやたらと褒め称えてくれるのが照れ臭くて、自分の見る目の無さに少し落ち込んで、もう笑うしかなかった。
つられて笑顔を見せる凛は、窓から差し込んでくる夕日で赤く染まっていた。
周りで見ていた奴らの声がした。
「え、あいつらどういう関係?」
「何? あの冴えない奴二股してんの?」
「いやいやあいつに限ってそれはねぇって(笑)」
「あー、西野さんの株下がったわ」
また頭フラフラしてきた。
いつ耐性付くんだろ、これ。
もう涙目の凛と、思考停止中の俺に声を掛けてきた男がいた。
読んで頂きありがとうございました!
次回投稿までしばらくお待ちください!




