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深瀬瑞希 2/6

出しっぱなしの現国の教科書をリュックにしまっていると、急に聞き覚えのある声が聞こえた。


「優!」


その声はとても震えていたが、どこか懐かしく感じる声で、透き通っていてとても聴き心地が良かった。

ふと顔を上げると、目の前にいたのは凛だった。

正直びっくりして、理解が追いつかないでいた俺の前で凛がしゃがみ、俺の目線と同じ高さに顔を持ってくると、俺を直視できないのか目をそらしながら話を始めた。


「あのさ、昨日のことなんだけど…」


何の話か察した俺は「うん」とだけ返事をした。


「…正直、言いすぎたと思ってる」


俺は凛のそんな言葉に、少し冷酷に返事した。

思い出して正直気分が悪かった。


「それで、何?」


凛は逸らしていた視線を俺の目まで運ぶと、続けて言った。


「優に謝りたかったの。ホントごめん。でも昨日言ってたコト、半分は本音だから」


「え、何が?」


そんな俺の返事に彼女は答えようとはせず、再び目をそらしながら立ち上がって言った。


「と、とにかく…あたしはゆ、優のコト避けてるわけじゃないからね!」


凛の話の脈略が読めずに回答に困る俺。


「ん?何が言いたいの?」


すると凛は俺の質問を無視して言った。


「きょ、今日はさ、あのコと帰るの?」


あのコとはおそらく千野の事だとすぐに察しがついた。


「いや、今日も一人で帰るよ。帰りはいっつも一人だし」


すると、凛は照れながら意外な事を言ってきた。


「ゆ、優が寂しいんだったら、一緒に帰ってあげてもいいけど…あたしも一人だし…」


こいつ、久々に俺と一緒に帰ろうと企んでやがったのか…。

最近になってこんな事を言われたのは初めてだった。

にしても、放課後の完全下校時間ギリギリまで俺が寝ていた事を知っていて、凛が部活に行っていた間に寝ていた俺が帰っている可能性すらあったというのに、わざわざ教室を覗きに来てまで俺に謝ろうとしたのか。

それが全く分からなかった。

それどころか、彼女が中学時代に悩んでいたなんて、昨日聞くまで知る由もなかった。

この三年間という期間で、俺らは隣に住んでいながら、お互いの事が次第に分からなくなっていっていたということに、今になって気がついた。

怒りや恨みなんかの感情は遥か彼方、彼女の思いを分からないなら分からないなりに再び探ってみたいと思った。

凛が与えてくれたこのチャンスを無碍にしたくなかった。

俺はまたあの頃のように、凛に接してみようと決めた。


「そんな事言って、ホントは一人で帰りたくないだけなんだろ?」


いつぶりかに人をからかう俺に、凛は少し取り乱して言う。


「う、うっさい!あたしだって一人じゃなきゃあんたなんか誘わないかんね!」


「そんなに嫌なら一人で帰りゃあいいじゃんよ」


「うぅ…優のバカ…」


凛とのこんなまともな会話、いつぶりだろうか。

すごく楽しくて、だけど切なくて、とても嬉しかった。

俺らはお互い可笑しくなって、つい笑みが溢れてしまった。

気兼ねなく話せて、付き合いも長い分お互いをある程度わかっているから楽しく会話できる。

幼馴染だからこそできる会話。

千野と話す時とはまた違った、対等に話せる感じというか…

ごめん、語彙がないから言葉にできないんだけど、多分そんな感じだと思う。

とにかく、俺が唯一緊張せずに話せるのは彼女だけだ。

人間不信とコミュ障のせいで構えはするけど、誰よりも楽に会話できる。

中学時代のトラウマもこうしてリハビリしていけば、いつかは克服できる気がした。

全くもって確証はないんだけど、それでも信じれた。

読んで頂きありがとうございました!


次回投稿までしばらくお待ちください!

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