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イタ告から始まる恋を信じてもいいのか?  作者: 二狐
幼い頃に馴染みがあった人
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幼い頃に馴染みがあった人 6/6

 昼休み時間の二年四組教室。

 凛は昼ご飯を食べ終わると、紙パックのジュースを片手に窓際にふらふらと歩いて行った。

 淋しそうな目で、校庭を見つめる。

 その視線の先にあったのは、優が千野と一緒に弁当を食べる姿だった。

 その姿を見て、飲み干したジュースのパックを握りつぶし、悔し気に自分の席に戻る。

 友達が凛に声をかけているが、反応するのも億劫になるほど、彼女の心は沈んでいた。

 彼女は机に突っ伏し、涙を流した。

 誰にも気づかれまいと、必死に声を押し殺して。

 彼女は涙しながら、ずっと悔やんでいた。


「あたしの意気地なし…」


 そんな彼女の苦悩を、誰人たりとも知る由もなかった。



 幼少期、少女は少年とある約束をした。


「大きくなったら、絶対結婚しような」


 そう言う少年に、少女は応える。


「うん、約束だよ」


 にこやかに笑う少年に向かって、少女は続ける。


「あたし、優のコトずっと支えられる、頼れるお嫁さんになるよ」


 そう言うと、少女は少年に笑顔を見せた。


「おう、楽しみに待ってる」


 少年は嬉しそうに言葉を返した。


 その少女は小学校に上がってからも、どこへ行くにも少年の隣にずっといた。

 登校も、登校班で二列に並びながら、二人は手を繋いで歩くほどの仲良しぶりだった。

 下校も言わずもがな、二人きりで手を繋いで帰っていた。

 学校ではクラスは違えど、休み時間中にずっとお話するほど仲が良かった。

 幼気ながらも、まるで彼氏彼女かのような二人は、学年でも公認カップルのような扱いをされていた。


 小学校も高学年になり、二人の間に恥じらいが生まれるようになっても、登下校は常に一緒だった。

 手こそ繋がなくはなったものの、二人の関係が悪くなる事はなく、二人のおしどり夫婦っぷりは彼女らの両親からもお墨付きだった。

 本当に二人は結婚するんじゃないかとまで、噂されるほどだった。


 しかし、その二人の関係もそう長くは続かなかった。

 中学に上がり、その二人は相変わらず仲良くしていたが、それを見ていた周りの生徒たちから、二人は付き合っているのではないかと噂されるようになった。

 二人は勿論そういった関係ではなかったものの、お互い男女として意識はしていた。

 それを遠巻きに見ていたある男子生徒。

 彼は少年がその少女と一緒にいる事を嫌った。


「俺があいつならもっと西野さんを幸せにできるのに…!」


 彼の嫉妬は怒りへと変わり、憎しみへと変わっていった。

 自分にとって都合の悪いあの少年を、どうにかして排斥してやりたかった。

 そして彼はある行動へと出る。

 人として間違った『いじめ』という行動へと。

 それが原因で、二人は引き裂かれてしまった。


 いじめられる少年を、一傍観者として見る事しかできなかった少女は、いつか助けたいと思っていた。

 しかし少女はその勇気が出なかった。

 自分自身が好奇の目にさらされ、悪たれ口や憎まれ口という鋭い刃物を全員から向けられる覚悟が無かった。

 少年を助けるべきは自分なのに、それができないもどかしさと毎日葛藤した。

 好きで仕方がない初恋の少年が、みるみる弱っていく惨めな姿を眺める事しかできない自分の弱さを、日夜恨んだ。

 家に帰った少女は毎日、声が枯れるまで、瞼が腫れるまで涙した。


 そして少女は決意した。

 せめて私が彼を助けるためにできる事。

 それは少年にできる限り近い場所に居続ける事。

 高校は、少年と同じ高校への進学を決意した。

 少年が目指した高校は、決して偏差値の高い高校ではなかったが、少女はそれでも学力が足りなかった。

 少年に追いつくため、近付くために、彼女は日夜朝暮に渡って勉強に励んだ。


 そして飛躍的に成績を伸ばした少女は、少年と同じ高校に進学した。

 苦労して手に入れた少年との学園生活だったが、少女は少年に合わせる顔が無かった。

 どんな顔をして彼に声をかければいいのか。

 どんな言葉が彼の心を開いてあげられるのか。

 彼を想って高めた学力も、彼の前では無力だった。


 少女はそれからも日々葛藤しながら、二年生へと進級した。

 そしてクラス替えで見事、少年と同じクラスになった。

 チャンスだと思った。

 何度も声をかけようと思った。

 しかし、勇気が出なかった。


 そして、少年は別の女の子に心を開いた。

 自分より年下で、自分より遠くから遥々助け舟を出し、少年を迎えに行った別の女の子。

 少女は許せなかった。

 自分よりも相応しくない者が、彼を奪っていく事。

 相応しいはずの自分が、勇気を出せずに何もできなかった事。

 そうやって、やり場の無い怒りや悲しみを、突っ伏した机にぶつけることしかできずにいた。

 彼女はただの『幼い頃に馴染みがあった人』でしかなかった。



 凛の苦悩は、凛のみぞ知る。

 それを分かってもらいたいのに、優には分かってはもらえない。

 今も優が好きで、優のそばにいたい。

 優は今も、それを知らない。


 そんな彼女の押し殺した泣き声に、誰も気付く事は無かった。

読んで頂きありがとうございました!


次回投稿までしばらくお待ちください!

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