第19話
第三層の奥で、
空間が歪んでいた。
血の匂いが、
急に薄くなる。
【領域:安定】
【死の密度:低】
……罠だ。
中央に、
黒い杭が突き立っている。
杭には、
干からびた死体。
いや――
“置かれた”死体だ。
腹部は、
綺麗に抉られている。
だが、
雑じゃない。
【解体技術:高度】
【見せるための処理】
「……これ」
リィナが、
声を落とす。
「紅晶の研究者……」
胸元に、
王国魔導庁の古い紋章。
だが、
それより目を引いたのは――
杭の根元に刻まれた“文字”。
『IF YOU KNOW, YOU SURVIVE』
英語。
……やっぱり、な。
【転生者関与確率:極高】
「これは……
挑発?」
エルが問う。
「いや」
俺は、
血で黒くなった地面を見る。
「確認だ」
同類がいるかどうか。
闇カジノでも、
同じ匂いがある。
勝ち方を知ってる奴の、悪趣味なサイン。
その時。
背後の空間が、
破裂した。
護衛の最後尾が、
圧縮される。
骨が砕け、
肉が潰れ、
赤い塊になる。
【脱落者:3】
【第三層:侵食進行】
リゼが、
前に出た。
「……ここまでね」
「何がだ?」
「国家の人間が、
足手まといになるライン」
彼女は、
護衛たちを見る。
「ここから先は、
“選ばれた者”しか通れない」
【決断:必要】
俺は、
短く言った。
「下がれ」
護衛たちは、
血と恐怖にまみれた顔で、
頷いた。
残ったのは――
俺たち五人だけ。
同類は、
確実にこちらを見ている。




