第18話
第二層を抜けた瞬間、
地面の色が変わった。
黒。
湿った土に、赤が混じっている。
【因果異常地帯:第三層】
【規則:不明】
【警告:生存率低下】
「……血?」
エルの声が掠れた。
足元には、
半分に裂けた鎧。
中身は――なかった。
いや、正確には。
壁に貼りついていた。
肉片。
砕けた骨。
乾きかけた血が、
何かの文字のように広がっている。
【死因:圧壊】
【発生時間:不明】
「ここは……
“間違えた者の末路”を残す層ね」
リゼの声は冷たい。
だが、その指先は微かに震えていた。
一歩、進む。
その瞬間。
後方の護衛が、
首から上を失った。
音は、遅れてきた。
ぐちゃり、という
潰れた果実みたいな音。
血が噴き出し、
胴体だけが二歩進んで、
前のめりに倒れる。
【脱落者:2】
【死因:空間断裂】
「動くな!!」
俺の叫びが、
空間に食われる。
第三層は、
“見えない刃”で満ちていた。
【因果補正:警告】
【結末:複数】
【唯一の生存条件:躊躇しない】
「……踏み込め」
俺は、
血溜まりの“わずかな凹み”を指した。
「そこだけ、
切れてない」
理由はない。
結果だけが見えた。
リィナが、
歯を食いしばって従う。
踏み出した瞬間、
彼女の背後で――
空間が裂け、
別の護衛の身体が縦に割れた。
皮膚が、
紙みたいに開く。
内臓が、
音を立てて落ちる。
【死亡:即死】
エルが、
吐いた。
だが――
誰も止まらない。
ここでは、
止まった瞬間に死ぬ。
第三層は、
血でしかルールを教えない。




