第90話 宣教師Ⅲ
※ 現在執筆の時間を余り取れない為、投稿を優先して話が短くなっております。また、誤字脱字の確認も不十分です。以上、ご了承ください。
※ 今話の中に宗教や民族に対しての厳しいやり取りがありますが、飽くまでも演出の一つであり、フィクションです。よって特定の宗教や民族を貶めたり、差別をしたり、対立を煽る事を意図する物ではありません。
◎近江国・近江八幡城 楠木正顕
1563年 5月中旬
フランシスコ・カブラルへの威圧はそのままに、コスメ・デ・トーレス、ルイス・フロイス、ガスパル・ヴィレラ、ロレンソ了斎、小西隆佐へと目線を移し、最後にフランシスコ・カブラルを見やる。
「俺の言う条件とは…一つ、今後一切日ノ本の民を本人の意思を無視して、国外へと連れ去る事を禁ずる。」
「それは商人にも遵守させよと言う事でしょうか。」
「当然だ。」
「それは余りにも…。」
「本国やバチカンが本気で取り組み、罰則を設けて通達を出せば、ある程度は可能であろう?」
「ですが…」
トーレスが言葉を続けようとするが、俺は無視して次の条件を語り出す。
「二つ、日ノ本より連れ去った奴隷を見つけ出し返還せよ…と言いたい所ではあるが、不可能であろうから、現実的な所でローマ教皇が定めた【教皇子午線】を破棄せよ。」
「それはスペイン帝国とポルトガル王国の争いを調停する為に…。」
「そのような事は俺を含め、他国の者には関係がない。お前たちの国同士が欲望のままに争い、滅びるのは勝手に滅びれば良い。だが、神ではない只の教皇が、世界の領境を何の権限を持って決定しているのだ?そしてその決定に全世界の者、そして神々は納得しているのか?因みに俺はそのような事を尋ねられた事も無いし、仮に尋ねられたとしても許容するつもりも無いぞ?」
ここで俺は一神教の司祭に対して、敢えて神々と口にする。
「……。」
「三つ、布教を利用し、欲望のままに植民地を増やす国策を即刻転換せよ。」
「四つ、真に教義に生きるのであれば都合よく教義を利用し、利益を享受する事は止めよ。」
「そして…。」
そう言って俺は三通の書類を取り出し、満和経由でトーレス司祭に手渡す。
「これは?」
「ポルトガル王国国王、スペイン帝国皇帝、ローマ教皇宛ての誓約書だ。先程の内容を書面にして列記してある故、三者の記名血判の上、返送して貰いたい。返送のやり方はその旨を頭の中で意識し、誓約書を空中に投げればそれで俺の元へ戻ってくる。因みに、記載した事柄を意図的に破れば、神罰が下るので気を付けるように。そしてその判定はは神々が行われるので、誤魔化しは効かんぞ?」
「「「「「「…」」」」」」
宣教師一行は一様に絶望の表情を浮かべている。皆分かっているのだ、俺の突き付けた条件が殆ど達成不可能である事を。
「以上の事、特に期限は設けない。理由として、残念ながら俺は普通の人では無いのでな…それ故、時間はタップリある。百年でも二百年でも、時間が許す限り腰を据えて取り組むが良かろう。ただ、余り時間を掛けすぎるとその分、俺の領土は広がって行く上、布教活動にも遅れが生じ、布教する地域も少なくなっていく事だろう。まぁ、お前たちの上役が、真に教義に生きているのであれば、問題なく実現可能であろう。」
「「「「「「?!」」」」」」
最後のダメ押しとも言える俺の言葉に、信じられない者を見る目でこちらを凝視している。そして目に見えて落胆の色が濃くなって行った。
「…最後にお前たちに聞きたい。宗教とは何だ?何のために存在する?」
「人々に生き方の指針や精神的な拠り所を与え、平穏な人生を送って頂く為です。」
ルイス・フロイスが自分の考えを口にする。
「ではなぜ、キリスト教圏が広がるにつけ、植民地となる地が増え、それに比例する様に不幸な人生を送る者が増えておるのだ?宗教とは人々を幸せにする物では無いのか?」
「それは…」
「言い難いなら俺が言ってやろう。それは宗教を、この場合はキリスト教となるが、それを都合の良い道具として利用し、自らの欲望を満たす為にのみ使っているからだ。真に教えを必要としている者達の方を見ていないからだ。違うか?」
「違いません…。」
「俺は基本的にはどのような宗教も頭から否定する事はしない。ただし、その宗教が信じられるかどうかと言う事は、幾つかの事を見る事で判断する様にしている。」
「それはどのような事でしょう?」
ジョウチン(小西隆佐)が訪ねて来る。
「俺はその宗教の教義などは、端から見ていない。では何を持って判断しているか?それは末端の者達ではなく、ある程度の上位者以上の者の衣食住を見て判断する。そうすれば、その宗教の本質が見えて来ると思っている。」
「…。」
「上位の者たち自らが、真に教義に生きているのなら、上位者であればある程、その衣食住は質素な物になって行くと俺は思っている。当然だな?教義に邁進する生活を送っているのであれば、自らの私財を増やしている余裕などないからな。逆に上位者になる程に派手で、立派な居住まいになる宗教は権力を利用し、利益を享受し、私腹を肥やしている故、信頼することは出来ない。…俺の言いたい事は判るな?」
「はい…。」
「それでは聞くまでも無い事だが、バチカンのローマ教皇殿は豪華で贅沢な衣食住とは無縁の、皆の手本となれるような質素な生活を送っていらっしゃるのかな?」
「…いいえ…。」
「だろうな…それが俺の答えだ。表面上、どれだけのご立派な教えを説き、美辞麗句を並び立てようとも、トップの者が豪華絢爛な生活を送っている宗教を俺は信じる事はしないし、信じるに値しない。故にそのような宗教を、民が不幸になる可能性のある宗教の布教を許すことは出来ない。ただし、先程渡した三通の宣誓書に記名血判が得られた場合はその限りではない。…以上だ。」
俺は満和を含め、家臣の者たち皆に視線を向けると謁見終了の意を示し、そしてフランシスコ・カブラルを地下牢へと幽閉する様にと指示を出すと、その場を後にした。
※活動報告にも書きましたが、来週より病気治療の為入院しますので、今話を持って七月一杯お休みさせて頂きます。再開は八月初めの予定です。
以上、宜しくお願い致します。




