第84話 入京・その後Ⅰ
※ 現在執筆の時間を余り取れない為、投稿を優先して話が短くなっております。また、誤字脱字の確認も不十分です。以上、ご了承ください。
◎山城国・妙覚寺 楠木正顕
1563年 3月下旬
「面を上げよ。」
皆一斉に顔を上げた。ここに集まっているのは総大将の明智光秀、副将の竹中重治、元松平組の石川数正、本多正信、本多忠勝、蜂屋貞次、加藤孝明、酒井忠尚、酒井忠次、そして滝川一益、藤堂虎高となる。
「この度は皆の頑張りにより、畿内の大半を制する事が出来た。恐らく戦を継続しておれば更なる領地拡大は可能であったであろうが、急激な拡大は要らぬ混乱と反発を招く故、この辺りで一旦終いとした。」
皆、真剣な面持ちで俺の話を聞いている。
「さて、此度の領地獲得に伴い、大きく領地替えを行う。これには此度の恩賞も含まれておる。また、この場にいない者に関しても行うつもりでおる故、その事理解して貰いたい。」
皆の目、特に数正ら元松平組は、自他共に此度の戦で活躍した自負がある為、余計に期待に満ちた目を向けて来ている。
「まずは戦功第一は与七郎(石川数正)、平八郎(本多忠勝)と半之丞(蜂屋貞次)と共に摂津国を降した功は見事だ。その方には丹波国氷上郡6万8千石を与える。」
「ははあ!有難き幸せ!!」
与七郎の嬉しそうな声が部屋の中に響く。
それ以降も領地配分は続き、最終的には次のような結果となった。
◦石川数正:丹波国桑田郡(6万8千石)
◦本多忠勝:丹波国天田郡(5万2千石)
◦蜂屋貞次:丹波国何鹿郡(4万9千石)
◦加藤孝明:摂津国西成郡(5万4千石)
◦酒井忠尚:摂津国有馬郡(4万5千石)
◦酒井忠次:河内国錦辺郡・石川郡(4万3千石)
◦藤堂虎高:河内国八上郡・丹南郡(3万6千石)
◦滝川一益:江戸切子茶器一色(密林市場取り寄せ)
◦竹中重治:金五千貫
◦明智光秀:伊勢国桑名郡を加増(11万石)
◦楠木(村田)盛邦:伊勢国桑名郡(6万1千石)→近江国高島郡(7万4千石)
◦本多正信:近江国伊庭城主(1万石)
◦神宮司正輝:近江国滋賀郡(4万6千石)
◦恩智満和:近江国 水茎岡山城主(2万石)
皆口々に喜びを露にしている。
「半兵衛には済まないが、軍略方として傍で補佐して欲しい故、金銭での恩賞となった。何かの形で別途保証する故許せ。」
「そのお言葉だけで十分に御座います。」
そう言って半兵衛は頭を下げた。その後は解散となり、皆は新たな任地へ向かう支度の為、急ぎ国許へと戻って行った。
◎和泉国・岸和田城 松永久秀
1563年 4月上旬
楠木が攻め寄せて来ていた隙をついて和泉国へと攻め寄せていたウジ虫が如き畠山高政を徹底的に打ち破り、岸和田城まで帰還した。一応、長慶様からの伝令により、現状については認識しておったが、ここまで畿内の領地を削られようとは思ってもいなかった。
確かに実休様を取り戻すためであれば、この程度の条件は寧ろ安いくらいだが、今後のご予定について、長慶様にお聞きしたい所だ。
「霜台、畠山の撃退、大儀であった。」
「滅相もございません。畠山の撃退如き…赤子の手を捻るより簡単な事に御座います。それよりも、実休様が捕虜となったとお聞きした時は、本当に肝を冷やしましたぞ。」
「本当にその通りだ。私が命じた事とは申せ、主税(岩成友通)から報告を聞いた時には生きた心地がしなかったわ。」
「いやはや…大変申し訳ない。皆にも心配を掛けたようじゃが、何とかこの通り、五体満足で戻ることが叶った。」
「しかし、主税助…実休様の傍にいながら、お助けするどころか、一人無傷で戻って来るとは…一体どう言う了見だ?!実休様の身に何かあれば、三好にとっては大変な損失…儂や其方程度ではその穴を埋める事など出来ぬのだぞ?!」
儂は怒りの余り強い口調で主税助を睨みつけた。
「霜台殿の申される事は一々尤もな事なれど、あの時の実休様は敵兵のど真ん中に孤立されており、更にお気を失っておられた故、どうする事も出来なかったのだ。」
「それならば残りの兵を纏め上げて再度突貫すれば良かろうが!」
自分でも聊か無茶な事を言っている自覚はあるが、今の自分の憤りをぶつける相手が主税助以外にいない為、仕方が無いのだ。
「まぁまぁ霜台、その位で良かろう?大きく領土は失したが、実休殿もこうして無事に戻ったのだ。今はその辺りの責任を追及するよりも、これからの事を話し合うのが先決であろう?」
確かに山城守(三好康長)様の仰られる通りであるな。ここは一旦儂の感情は収め、これからの事を話し合うが吉であるな。
それ以降、場の流れが変わり、重臣皆で今後の事について意見をぶつけ合った。
「…ふむ、皆の意見は大変参考になった。最終的には当主である義興が決断せねばならぬ事なれど、私としては楠木との敵対は避け、和睦から可能であれば同盟へと関係を深めて行くべきだと考えておる。」
「兄上、それは…難しいのではないか?恐らく楠木は畿内全域を平定する事を考えておると思うぞ?」
「それならば、それで残りの畿内の所領、この和泉国と播磨の所領も譲渡してしまえば良い。そしてそれを持って同盟を申し入れれば良い。」
長慶様の仰りように皆が皆驚きの表情を浮かべる。
「父上、楠木とはそれ程の家なのですか?そこまで我らが敵対を避けねばならぬのですか?」
「そうだ、現時点では我らと楠木の軍事力は互角のように見えるが、実際には違う。楠木正顕と言う御仁の恐ろしい所は多々あるが、最も警戒すべきはお伊勢様の神子ととしての力にある。その考え方や国の運営方法など警戒すべきことは多いが、それ以上に国を富ませるその力が恐ろしい。」
「それはどういった物なのですか?」
「その力の内容は特に秘匿されていない事なので、楠木領内では下々にまで浸透している事なのだが、彼の御仁の領地では日照りや飢饉、洪水などの天災が一切発生しなくなり、全ての実りが二倍以上に増加するらしい。」
「そのような事があろうはずが…」
義興様のお言葉は尤もな事だと思うが、儂の調査でも事実として現当主が就任以降、天災は一切発生しておらず、実りも二倍以上になっておるようだ。
「義興様、儂も最初は疑っておりましたが、その話は事実なのです。儂が自分の目で確認したところでは野分の時の楠木領と領外との境での事ですが、領外では強風が吹き荒れ、川が氾濫するほどの大雨でしたが、楠木領に入った途端に強風は収まり、雨も小雨となり、何より氾濫していた川が不思議な力で溢れ出ぬように押し留められておりました。それはもう見事に天候の境目が出来ておりましたぞ。」
「んな?!それではまるで…」
そこから先は義興様も言葉が続かない。そう…「それではまるで神のようでは無いか…。」義興様の言わんとしておられる事はよう分かる。しかし事実である故、余計に恐ろしいのだ。それ故に…。
「儂は長慶様のお考えに賛成です。悔しいとする思いは儂にもありますが、楠木とは敵対すべきではありません。ここは面目よりも家の存続と実利を考えるべきです。我らの本拠は四国です。四国へ活路を見出すべきであると考えます。」
儂が賛同の意見を述べると他の者らも、次々と長慶様への賛同を現した。これ以降の三好家は楠木との融和路線に舵を切り、四国制圧へと舵を切って行く事となる。




