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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
上洛編

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第51話 伊勢神宮へⅠ

◎伊勢国・大湊 楠木正顕

 1559年 9月中旬


 北畠との戦に向かう時分に市と約束した通り、楠湊~大湊~伊勢神宮と言う大雑把な予定ではあるが、旅行を行う事とした。メンバーは俺、市、母上、八重、茜、正輝、卜伝となり、父上とお爺様は予定通り留守番だ。護衛の人数も限界まで絞り、少数精鋭と言う事で、卜伝の弟子たちが務めている。


 この旅行の目的は家族サービスが大きな割合を占めるが、各地の視察や伊勢神宮の正殿(正宮)訪問が目的だ。


 そう…正殿訪問、伊勢神宮の祭主さいしゅ藤波朝忠ふじなみともただ殿のご厚意により実現したのだ。祭主曰く、神子様であれば是非も無し…とのことだ。やったね?!


 と言う訳で、各地で稲刈りが大忙しのこの時期に、伊勢神宮への参拝と家族サービスを両取りしてしまおうと言うわけだ。


 現在は楠湊を出立して3時間程が経過しており、一行は既に大湊に到着している。この大湊は北畠に上納金を納める事で会合衆えごうしゅうによる自治が認められていたのだが、北畠が楠木に降った事で、この約定自体は消滅している。


 現在は楠木家と新たに約定を結び直し、楠湊と同様に会合衆自体は認めているが、年五千貫を税として納める事と楠木の法、主に分国法となるが【楠木太平法度之次第くすのきたいへいはっとのしだい】に従うことを義務付けている。当然ではあるが誤魔化しが効かぬように、会合衆全員に例の書類への記名血判をさせている。


 その会合衆が俺の到着に合わせて集合していた。


「ご無事のご到着、祝着至極に御座います。私は会合衆の代表で、角屋七郎次郎かどやしちろうじろうと申します。湊屋さんとも仲良うさせてもろうとります。」


「おぉ、角屋か。湊屋からは話を聞いておる。煮ても焼いても食えぬお人などと申しておったぞ?」


「いやはや、参りましたな…それはお互い様と言った所ですな。」


 そう言って角屋は苦笑いを浮かべていた。


 会合衆が集まっていた理由としては、俺への挨拶と本日逗留予定の宿への案内、そして豊受大神宮とようけだいじんぐう(伊勢神宮の外宮げくう)までの輿の手配を行ったらしい。


 因みになぜ豊受大神宮なのかだが、神宮への参拝する上での手順として、伊勢神宮外宮である豊受大神宮へ参拝の後、内宮である皇大神宮こうだいじんぐうへ参拝すると言った流れを取るのだと言う。


 それはさて置き、大湊で最も大きい宿に案内された一行は、それぞれ割り当てられた部屋に通され、くつろいでいるところだ。因みに部屋割りは俺と市と母上が個室、八重と茜、正輝と卜伝が二人一部屋、卜伝の弟子は四人一部屋で数部屋に割り当てられている。また、警備上の問題で宿は一晩、貸し切りとなっている。


 とは言え、市は部屋に通されて早々、俺のところに来て俺の世話を彼是あれこれと焼いている。


「旦那様、流石は神宮への玄関口と言われる湊町ですね。多くの人と荷物で賑わっておりましたわ。」


 茜の淹れてくれた茶を啜りながら市の話を聞いている。市との婚姻以来、こうしてゆっくりと過ごした事が少なかった事もあって、旅の最中さなかの市の機嫌はすこぶる良い。


「そうだな、近年は楠湊の方が規模としては大きくなったが、伊勢神宮へ参るには大湊の方が便利が良いからな。それにこの大湊と外宮門前町である山田、内宮門前町の宇治、更には神宮へ至る街道沿いにある古市を合わせれば、経済規模としてはこちらの方が大きいだろう。」


「けいざい…規模?とはよく解りませんが、発展している事はよく分かります。」


 この時代は学問としての経済と言った考えは無く、商人たちも自らの経験や肌感覚によって商売をしている。俺自身も17歳で異世界に渡り、そのまま戦国の世に転生した為、学問として経済を学んだ事など無いが、この世界の人間よりも多くの先進的な情報に触れて来た事もあって、その分イメージし易く、多少は有利に働くだろう。


「まぁ、この大湊も含め、周辺の町などは楠湊や楠の城下町の発展に引っ張られる形で発展して来ておる。その最たる町が尾張の津島や熱田だな。義兄上も俺と同様、領内の関所を廃しておるので他と比べて受ける恩恵が大きいようだな。」


 この辺りは流石と言える。楽市楽座としては滅ぼした六角家や東海の今川、関東の北条なども行っている(いた)らしいが、同時に産業振興や道などの整備を合わせて行う事で相乗効果を期待できるし、実際に何倍もの効果が出ている。


 因みに伊勢国内で言えば主要街道の整備(コンクリートによる道路整備や道幅拡張など)は六割方完了している。


「それに、領民の使える金子を増やすために、年貢などの税負担を減らす事も重要な政策となろう。市も覚えておくと良い、俺たち武家は領内に住む領民あっての武家なのだ。領民を幸せにする事で我ら武家も幸せになれる。」


「はい、分かりました。」


 そうして旅行中とは思えないような会話を市としていると、宿の主人が現れ、先程会った角屋と宇治の六郷ろくごうと山田の三方寄合さんぽうよりあいの代表が目通りを願っている事を伝えて来た。


 宿屋の主人に許可を出すとしばらくの後に三名の男たちが入って来た。宇治、山田の両代表とも型通りの挨拶を済ませた後、いきなり「これまで通り自治を認めろ」「楠木家の介入は認めない」等と不入の権を盾に忖度を要求してきた為、正輝と卜伝に命じて裸に剝いて宿の外に放り出し、宇治と山田の町を軍で囲むように指示をした。


「角屋…あれはなんだ?!失礼にも程があるのではないか?他の武家であれば手打ちにされてもおかしくは無いぞ?」


「まさかあの様な行動に出るとは思いもせず、申し訳ありません。今後、大湊の商人に宇治・山田での商売は禁止させます。」


「角屋、両町の寄合衆に伝えよ。寄合は解散の上、自治権を剝奪する。大人しく命に従うのであれば軍の派遣は取り止めとする。その上で角屋、其方らの会合衆で宇治・山田の商人を取り纏めよ。そして確実に楠木の法を遵守させるのだ。」


「はい!畏まりました。」


 角屋は頭を下げると部屋を出て行った。


「まったく、せっかくの旅行が台無しだな…茜、茶を頼む。」


 その日の来客はそれ以上は無く、明日の移動に備えてその日は早くに床に入り、十分に夫婦の時間を楽しんだ上で就寝をした。






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