交錯
受験生の中3が書いた戦い形の話です。
勉強もあって不定期ですが連載していきたいと思います。
初めての投稿なので温かい目で見てください・・・
尚、この物語はフィクションであり、登場する人物、団体などは... <以下:省略>
夏休みは学生 <以下:受験生以外の学生> にとって数少ない休み。学業に追われず、のびのびと過ごすことができる。夏休みの宿題 <以下:足枷> があるものの、それでも普段よりは気楽でいれる。
だが、幸福の前に試練があるのは世の定め。
学生にとって試練とは試験。即ち定期試験。
ここ四校でも赤点以下は当然のごとく(?)夏休みの補習がある。夏休みを満喫して遊ぶためには補習なんてやってられない。
それ故、余裕のない生徒は躍起になって勉強をしていた。
身についているかは別として。
りさは転入から一週間しか経っていないが、完全に打ち解けていた。いろんな女子や男子と仲良くなり、クラスの人気者、有名人となっていたが、いつもの5人 <以下:漣、龍吾、小菜木、陽菜、春香> と一緒にいることが多かった。圧倒的に。
その6人は1時限目 <以下:自習> 、何気ない話で盛り上がってた。小さな子 <以下:児> は机の上、気障な野郎は自席、モテモテな(?)男はその前の席、残りは周りに陣取り直したところで陽奈が口を開いた。
「ねえ春香、勉強教えて。」
真剣な目をした発言に当の春香以外は目を丸くして驚いた。(1名は場に合わせた演技かもしれないが)
陽奈が勉強嫌いなのは全員が知っている。授業中も外を見るか寝るくらいでノートも春香のを写す程度。成績にいたっては体育以外目の開けられないようなもの。典型的な遊び人だった。
そんな陽奈がいきなり勉強に対して前向きになったのだ。驚いて当然だった。尚、実際には授業の途中から頭を抱えて唸ってたという前振りがあし、こんなことを言うのも初めてというわけではない。漣たちが毎回驚いているだけだ。
「いいよ。漣君もまた教えてあげようか?」
「じゃあ、お願いするかな。」
漣の成績もあまりよろしくない。見積もっても中の中程度だ。その見積もった成績も、春香の指導があってのもので、高校に入れたのもギリギリだった。(余談だが、陽奈は運動神経が桁外れだったので学力関係なしの推薦だ)
それ故に、2人は小学校から春香に勉強を見てもらってる。(再び余談だが、春香は教えるのがうまく、他のクラスメイト <以下:女子のみ> からも依頼を受けることがある)
普段ならこのまま場所の設定となるところで乱入者が入ってきた。乱入者は足りない身長差を補った漣の隣の机から会話に入る。
「なぁ。オレも混ぜてもらっていいか?」
この質問には本当の意味で驚いた。例えるならば隣同士で目を合わせる程度にだ。現実にやっているので例えではないが。
「いいけど。平野さんはどうして?」
春香が「一同代表」の前置詞が付く質問を平野 <以下:りさがこの学校に入学するためつけた偽名> りさに投げかけた。りさの成績は皆が良いと思っている。点数の上位者が発表される数学では、いつも名前が上がっているからだ。
「オレは完全な理数系だからな。文系はちょっと...。」
叱られた子供みたくさらに小さくなったりさは、申し訳なさそうに言った。誤解が作った雰囲気が場を支配する。漣たちは自分がいじめたみたいな感覚で言葉を失っている。
そんな中、何故かバツの悪いところにさすがと言うべきか、助け舟がやってきた。
「それなら僕たちもいいかな?僕と結の成績なら教える側に回れると思うし。」
話題転換は空気を変え、明るい方へと持っていった。(三度余談だが、いつも龍吾は結に付きっきりで教えてる)
小菜木も龍吾の隣で賛成の意を示している。
「全員で勉強会か~。けっこう楽しそうだね。」
「楽しむのはいいけど、しっかり勉強しなきゃ駄目だから。」
顔で話を振られた春香は、的確に釘を刺していた。その結果、陽奈も小さくなる。りさほど時間も長く、小さくはなかったが。
それでも確認をそつなくこなす春香は、流石学年首席といったところだ。
「結局。場所は漣の家でいいの?」
つい最近 <以下:りさが来たとき> まで勉強会は漣の家で行われていた。
家は広いし、2人の家の真ん中にある。漣も断る理由は無かった。
語尾が過去形なのは現在がそうでないからだ。
今漣の家にはりさが住んでる。結の家が冗談でなく本当にりさを迎えられなくなったからだ。
そして、そのことは裏界を知るもの以外に秘密となっている。
詰まるところ、陽奈たちを呼ぶことができないのだ。当然、今回は断らなければならない。
「悪い、家はちょっと...」
「なんで?」
こちらもこちらで当然の疑問。
予想はしてたけど理由がうまく見つからない。こういう誤魔化しは漣の苦手分野だ。
斯くなる上は親友へのアイコンタクト、とは今の漣の心境だろう。
「まあ、それ以上は聞かないようにしましょう。漣にも一応プライバシーはあるのですから。」
一応ってなんだ一応って、も今の心境。
だが、それを口に出すほど子供ではない。冷静に時(?)が解決するのを待つ。
「で、でも...気になる。」
さすがの龍吾も隠しきれないか、と結も心配したところに龍吾が爆弾投下。
「聞かないほうがいいですよ。今、漣は小学生によるハーレムをフィギュアで作っているんです。だから、女の子を家に連れ込んで...。」
「おいコラ龍吾。誰が児童ポルノ法だ!」
「いや、そこまで言ってないって。」
高校生も、本音を口に出すほどの子供だった。
家のことを曖昧にし、陽奈の家が会場となった勉強会を前に、済みきった黒髪の美少女が屋上にいた。
悩んでため息を吐くところも見方によっては絵になるが、屋上には春香一人だけ。第三者的な視線はないようだ。
実際には塔屋の裏にいるのが春香だけで、反対側には誰かいるのかもしれないが。
今の時間は昼休み。
今日は三城君の用事があるということで6人そろっての食事は無しになった。陽奈も提出間際の課題があったので、春香一人で食べてる。
だが、それもよかったようだ。4人の関係について考えることができたので。
春香は昨日の続きを考える。
今日も新たなヒントを得ることができた。
漣君には家に入れたくない理由がある。それが新たな情報。確信はないがおそらくりささんが住んでいるからだろう。と、ここまでは予想できたのだがその後が進まない。
何故りささんが漣君の家に住んでいるのか。何故その理由を隠し通しているのか。何故三城君と小菜木さんも知っているのか。何故協力してるのか。
謎は山積みのままだった。
わかるのは4人はまったく話す気がないこと。これは確実だった。
それならこちらが動かなければならない。陽奈のためにも。
強行手段はとらずに。
そう決心したが、思考はここでストップした。
陽奈が後ろから肩をたたいたからだ。
「早く終わったから来ちゃった。」
早く終わったって事は手を抜いたのか、とは野暮な質問。口に出さぬが吉となるようだ。もっとも、口に出そうとしても口に出すことはできなかった。
陽奈が真剣な話をしたからだ。
長年の付き合いが陽奈の気配を感じ取る。異能がなくても春香にははっきり分かる。
次に何を言うのかも。
「ウチ、今日漣に聞くよ。りさちゃんとはどんな関係なのか。ちゃんと目を見て。」
春香は胸の奥で鈍感な幼馴染を罵倒する。
同時に答えの分かってる質問もする。
「...手伝う?」
「いいよ。ウチが、自分一人でやる。」
『フォローぐらいさせてくれてもいいのに』
声にならない思いが喉の奥に引っかかる。
いつも大切なことは一人でやってしまう幼馴染を、控えめな幼馴染は、また止められなかった。
時は変わって午後7時50分。
陽奈の部活終了30分後に設定された集合時間まであと少しだ。漣の家からでもそろそろ出ないと遅刻になるだろう。
「りさ、準備できたか?」
「おぅ。」
すっかり慣れたタメ口で確認し合った2人は戸締りをして歩き出す。
りさは白のショートパンツに黄色いTシャツ。ファッションに詳しくない <以下:いつもりさを見ている> 漣には何がなんだかわからない。(一応、ブランド物なのは聞いている)
対して漣は灰色のジーンズに赤いチェックのパーカー。
りさと並ぶと季節違いかと問いたくなるくらいだ。無論、漣の方が。
そんな2人が家の敷地を出て、道路に出たところで、
六角形呪縛がリサを取り囲み、一気に中心へ収束した。
怪しげな光に縛られる前に、一歩引くことで回避したリサの目は今まで見たことのないものになっていた。
その目は獲物を探すような目で何かを探す。
動いた目線は一瞬で留まり、前方へと向けられた。
「リンナの“六束”をかわすとは、“両道”の名は伊達ではないのだな。」
全身を覆う白いマントに赤髪のオールバック。声の主であろう中年の男は、正面の家の屋根にいた。日本人とは思えない顔立ちは白人系統だろう。顔は笑っているのに目が笑っていない。その目からはリサと同じ殺気が漏れ出している。
傍らにはクンベルであろう女性がいた。夜のせいではっきりとは見えないものの、20代後半ぐらいだと予想ができる。漆黒のロングコートは闘いの開始を告げた本人を隠していた。
「“天罪”の...ミカド!!」
リサのほうは驚きを隠せず、術名と名前で声を張り上げるのが精一杯だった。
「何故ここに...。」
「貴様を消すために決まっているだろう?」
それは決戦の合図だった。
ここは陽奈の家。一足早く呼ばれた春香は陽奈と二人でリビングにいた。
決意を決め、想いを伝えるためにいる陽奈は、平常心を保とうとしている。
だが、それは逆に緊張に輪をかけていた。肩に力が入り、手は震え、表情は面と向かう前から硬くなっている。
春香はすべてを見た上で行動に出る。
向かいのソファから陽奈の前に歩み寄った。距離にして1メートル弱、時間にいたっては数秒の短い空間が長く感じられる。
そのまま陽奈を胸の中に入れた。
陽奈は目を閉じたまま動かない。
そして、想いの伝えられない幼馴染へ、届かない幼馴染へ、可哀想な幼馴染へ言葉をかける。
「大丈夫。」
待たされ続けた少女達は今日もけっして来ない少年を待つ。
現在の裏界には人間を支配しようとする団体がある。
その理想を叶える為には反対勢力を抑えることが必要だった。
今では世界各地で戦闘が行われている。
ここ北海道でも始まっていた。
武力派 <以下:ミカドとリンナ> と反対派 <以下:リサ> の闘いが。
リサは家の塀の陰に隠れ、手を胸の前で合わせて力を込める。力の象徴である光が輝き、開いた手の内から無数の妖精が飛び出した。掌程度の妖精は背中に羽を生やしている。
これがリサの使える2つの能力の1つ、創り出した妖精と視界をリンクさせる“目示”だった。
散らばっていった妖精は、情報のネットワークを作り、リサへと送り出す。送り込まれた情報を強化された演算能力で処理し、状況を掴み取った。
敵の数は2人。“天罪”と“六束”。“天罪”の能力は知っているが、“六束”の方は知らない。
そのため、推測にしかならないが、おそらくは相手の能力を無力化させる能力。先程作り出された六角形の呪縛により封印するものだろう。
対戦時における重要な分析を混乱した頭でやってのけたリサは、発動条件までもを推測していた。
術の発生から完了までは1秒ほど。逃げ道を予想されない限り、かわすのは難しくない。それに、呪縛を作る為には相手を視界にとらえなくてはならないようだ。現にさっきの力は妖精のほうに向けられている。
つまり、死角から攻撃すれば問題はない。
だが、厄介なのは“天罪”のほうだ。“天罪”、天に逆らうものへの罪。これが術名の由来。その能力は身体に直接作用し、今までしてきた罪の分だけダメージを与える。
効果範囲は拳だけだが、何人もの人を殺し、大きな罪を犯している裏界の人間にとっては脅威となっていた。
要約すると、相手の拳に一度も触れずに戦闘不能へ追い込めということだ。
あらゆる武術を習得しているミカドは接近戦を得意としている。一発も喰らわずに攻撃を仕掛けるのは不可能だ。
かといって、遠距離攻撃はリンナに通用しない。
片方だけでも脅威だった2人が手を組んだ状態は、無敵といっても誇大ではなかった。
そんな二人組みは漣に目もくれず、リサの居場所へ歩き出す。
対してリサは、塀から飛び出し距離をとる。
視角に入った瞬間にリンナが数多の呪縛を作り出し、ミカドは接近戦に持ち込もうとしていたが、リサは後ろに跳び、退いた。
一歩間違えれば捉えられるような状況で、平然と紙一重の攻防を繰り広げる。
否、平然と見えるだけだ。本当はギリギリだった。
避け続けることができるのは、妖精から送られている僅かな動きを分析しているから。些細な様子を観察し、常に集中するのは相当な労力を使い、精神面ではすでに圧倒されている。
必死に猛攻から逃れ、追い詰められているリサは妖精の急激な減少を感じた。
リンナが妖精を集中攻撃し、視覚から得られる情報を減らしていたからだ。手がかりの少なくなったリサは、ミカドの速攻を防ぎきれなくなる。
まだ一撃を喰らっていないだけマシだったが、今回は完全に追い詰められた。
精神的にではなく物理的に。
逃げ道のない一本道に2人となったミカドとリサは牽制し合いながらも、距離を縮めていた。その距離十メートル。ミカドは一歩一歩慎重に近づき、手の届く寸前までやってきた。
最後にミカドは問う。
「残したい言葉はあるかい?」
余裕の笑み。そう呼ぶにふさわしい微笑を浮かべ座り込むリサを見下す。
それに対する答えは。
“空喚”と“創樹”の2人が返していた。




