エピローグ
ルクさんはレンゲの花が一面の咲き誇る湖のほとりに家を建てた。
それほど大きくない、ふたりで暮らすには十分な家。
小さな庭の先には大きな湖。
「他には何もいりません。あなたが不自由なく暮らせればそれで」
そう言って笑ってルクさんは、本当に嬉しそうだった。
暖かい穏やかな空気に触れ、そよ風が髪を撫でていく。そこに私がいるだけでいいと、ルクさんはそう言った。
「ルクさん」
「はい」
この世界に移ってから数か月。ルクさんに尋ねた。
「後悔していませんか?」
「していません」
即答だった。それがまた腹立たしい。
「あなたは?」
「え?」
「後悔、していますか?」
珍しく、自信がなさそうな、弱々しい声。
「はい。後悔してますし、ルクさんのことは絶対に許しません」
ここだけは絶対に譲らない。私はルクさんを許すことができない。
けれど、だからと言って、彼が私にしてくれたすべてを否定するつもりもない。
「でも、ひとりで背負わせることはしませんよ」
ルクさんが顔を上げた。その目には驚きが浮かんでいるように見えた。
「私も、共犯です。だから、一緒に背負います」
本心だった。
ルクさんは理解するまでに時間がかかっていた。
そして、愛おしそうに笑った。
「愛しています、レンゲ」
「はい、知ってます」
私は、どうやら世界より愛されているらしい。
END




