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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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兄と妹



子狐丸Side



〜瑠璃がお風呂に行った後〜



「兄ちゃん、瑠璃さん大丈夫ですかね…?食欲もないって」

「うん…」

瑠璃は迷い家の話をしようとすると、怒るように避けた…。つまり話したくない事があったって意味だ。

戻ってきてくれさえすればいい、そう思っていたのに。

実際に再会して、やたら僕に冷たくなってしまった瑠璃を見てると辛くなる。僕だけの瑠璃だったのに…。

例えるなら、ずっと大切にしていた自分の物を他人にめちゃくちゃに壊された、そんな感じ。


「あっさりとあたしの事は受け入れてくれました。何も聞かれなかったですし…素敵な名前まで…」

「うん、それはほんとびっくりしてる。絶対に浮気相手か何かだって誤解されると思ってたからね」

「瑠璃さん、早とちりですからね…。 でも兄ちゃんはそんな瑠璃さんもひっくるめて全部好きなんでしょう?」

「うん…」

「でも、どうして昔の話をしようとしたら止めたのです?」

「瑠璃には弱体化してたのを伝えてないんだ…。責任を感じてほしくなくて」

「そういう大切な事は先に言っておいてください!」

「もういいよ、薄々は気がついてたと思うし…」

瑠璃は鈍いわけじゃないから。ちょっと思い込みが激しいだけ。



「兄ちゃんはいいですね…毎日こんなに美味しいご飯を食べさせてもらってて。あたしなんて食べられる様になってからもアンパンと牛乳ですよ?」

張り込みの刑事じゃないんだから、違うものも食べたらいいのに。相変わらず変なところで形から入るね?

よう子も僕が食べられる様になったタイミングで食事ができたと聞いた。やっぱり瑠璃の力はすごい。



「瑠璃さんは迷い家で”そういう事“をして出てきたんでしょうか…」

「…考えさせないで。仕方ないのはわかってても、ものすごく嫌だから」

「ごめんなさい…。でもいつまでもこの話題を避けたままで平気なのですか?」

「正直聞きたくないよ。でも、聞かなきゃいけないとは思ってる。その覚悟もしてると伝えたのに、瑠璃が避けたでしょ」

「はい…。凄い威圧感で聞けませんでした…」

それほどまでに話したくない事をされてたとして、僕は受け入れられるのかな…。

現世で言う寝盗られってやつだよね、これ。

ましてやそっちのが良かった、なんて言われたら立ち直れる気がしない。

どうしたらいい?瑠璃、教えてよ…。一人じゃわからないよ。


「兄ちゃん、せめて後片付けくらいはしませんか?料理のできないあたしの分まで仕度をしていただいたんですから」

「そうだね」

二人で洗い物をしていたらお風呂から瑠璃が出てきて、此方を睨むようにちらっと見ただけで寝室に行ってしまった…。やっぱり何か隠してる。


「今日は泊まってもいいですか?」

「瑠璃も受け入れてくれてるし、大丈夫だと思う。こっちに布団持ってくるから」

「ありがとうございます! お二人の邪魔はしませんから、どうぞしっぽりと…」

「だまれ」

今はそんな気分になれないよ。だって…瑠璃は…。


むしろ僕で上書きしたら?いつもみたいに幸せそうな顔を向けてくれるの?

でも、もし嫌がられたらって思うと怖い。



よう子にお風呂を勧めたら喜んで入りに行った。

元が刃物なのに変なやつ。錆びるとか思わないんだろうか。

僕も随分と慣れたけどね…。一度瑠璃に臭いって言われて、泡だらけにされて洗われてから、自分でしっかり入るようになったんだっけ。

キレイにすれば美味しいご飯にデザートまでつけてくれて。


瑠璃との思い出が沢山あるこの家は、もう帰る場所として認識してる。

でも、もしここに瑠璃がいなかったら?

あくまでも僕の居場所は瑠璃の傍で、この家じゃない。

やっぱりちゃんと向き合わなきゃ。瑠璃からどんな話を聞かされても笑って流せるくらいにならないと。

でも話してくれるのかな?


「お先です」

「ああ」

よう子がお風呂から出てくるくらいの長い時間、悩んでたみたい。僕もお風呂でスッキリしてこよう。

「兄ちゃんこそ大丈夫です?」

「どうだろうね」

「なんか心配ですし、一緒に入りますか?」

「子供じゃないんだから」

「はーい」

さっとシャワーを浴びて、お風呂に浸かってても落ち着かない。

この後、瑠璃のいる部屋に行かなきゃいけないし、当然何か話さないと…。

いつもなら会話なんて考えなくてもできてたし、自然と雰囲気ができればそっちへ移行してきた。


でも今はなんて声をかけたらいいかすらわからない。

瑠璃のことなら何でもわかってると思ってたのに。たった一度の事でこんなにわからなくなるもの?

それとも単に僕の心がもやもやしてるから?



お風呂から出て寝室に入ると、瑠璃は布団に潜ってて顔も見えないし、寝てるのかもわからない。

よう子の為に布団を一式、押し入れから出してリビングに戻る時に何か聞こえた気がして振り返ったけど、気のせい?

後で聞いたら答えてくれるかな。今は先によう子に布団だけ渡さないと。


リビングに布団を敷くとすぐに寝転がるよう子。

「大人しく寝なよ」

「わかってます! 覗いたりしません」

そういう意味じゃない。よう子はとんでもなく寝相が悪いんだよ…。







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